まずは自分が猫を飼い始めた経緯から書いています。
第一話からどうぞ。
龍馬を里親に迎えたら、何故か凛子がおまけで付いてきた(第4話)が、猫を飼うと言う念願は果たされた。
私の猫ライフのスタートは想定外にトホホ(第2話)であったものの、その後は猫に癒される平和な日々だった。
2匹とも臆病で知らない人が苦手なので他人には託せず、家族全員での旅行は諦め、誰かが家に残る日々。 猫のご飯までには誰かが急いで帰宅するという不便はあっても、猫達は、「うざい」としか言わなくなった子供達に代わり、おかえりと言って(?)私の帰りを待っていてくれるのだ。
当然とっくに私の携帯の待ち受けは息子から猫に変わっていた。 脱走にはくれぐれも気を付けるようにと、龍馬を譲渡してくれた譲渡主のSさんから注意されていた。
脱走するケースとしては、
飼い主の不注意で玄関や窓を開け放し外へ出てしまう、
宅配や業者が来た時に足元をすり抜けて出てしまう、
網戸を閉めていても網戸を破って出て行ってしまう、
頭の良い子は窓の鍵まで開けて出て行ってしまう、
ドライブや散歩、旅行、実家への帰省に連れて行かれ、環境の変化から警戒し逃げ出してしまう、
洗濯物を取りにベランダに出た隙に一緒に出て3階からでも下に降りてしまう、
また、男の子がいる家は特に、親が留守にその子の友達が複数遊びに来て、玄関でお行儀悪くポーンと脱ぎ散らかした靴がドアに挟まってしまい、その隙間から出て行ってしまう、
など色んなパターンがあると聞いた。
私はふんふんと注意事項を聞いていたが、うちの2匹は他人が来るとドアを開けた瞬間に隠れてしまうので、玄関ドアから出ていくことはないし、窓のカギを開けたり網戸を破ってまでして出ていくこともないと思っていたが、それでも用心に用心を重ねていたつもりだった。
例えば、帰ってくる時はピンポン鳴らしてからドアを開ける、窓を開けて網戸だけにするのは短時間にし、外に出る時は、たとえ1分でも窓を閉め施錠するようにする、お風呂に落ちて溺れないよう蓋もドアも必ず閉め風呂場に猫を入れない、またクローゼットやトイレに閉じ込めてしまわないよう、出かける前には必ず2匹の姿を確認するようにもしていた。
私と娘は神経質な程に猫の安全には気を使うが、怪しいのは息子だ。
脱走させるな、閉じ込めるな、窓や玄関を開けっ放しにするな、風呂場の蓋を閉めろ、生ごみを食べさせるな、誤飲しない様に小さいものは置くな、と毎日毎日うるさく息子に注意してきた。
ひやひや未遂事件は時々あったものの無事に1年半過ぎた。
【外を見る龍馬】 (窓は閉まってます)
5月末の爽やかなある日、風を通すため家中の窓を網戸にして、私は自分の部屋に籠って仕事をしていた。
普通は自宅にいても、窓を開けたら、時々猫を見回るのだが、猫達は昼寝していたので安心して仕事に熱中してしまった。
そんなに長い時間でもなかった。せいぜい2時間程度。
その日は夕方から夜遅くまで仕事の予定だったので、出かける前に猫に夕飯をやろうと台所へ。 普通は私が台所へ行くと猫は皆すっ飛んでくるのに、やってきたのは凛子だけだった。
あれ? 龍馬が来ない。
いやな予感がし、家中の窓を確認しに行くと、娘の部屋のベランダへ出るサッシ窓と網戸まで開いている!
うそ、サッシ窓は開けたが網戸まで開けた覚えは全くない。
窓を開けた時に一緒に網戸までくっついて開いてしまったか?
顔から血の気が引く。
もう一度台所でフードの袋をバリバリしてみる。やはり龍馬は来ない。
凛子は薄情にも龍馬のことは意に介さず自分のごはんまだ?という顔で見ている。
龍馬、まさかベランダから出た?
うちはマンションの2階。臆病者の龍馬が外にでるとは到底思えなかった。
これまでご飯になっても寄って来ない時は、クローゼットに入って出られなくなっていることが多かった。一度首輪に手が入り、たすき掛けになって身動きとれない態勢になっていたり、入ったは良いが出られなかったり。。。
ざっと見たところ居ない
そのまま仕事に行く時間となってしまい、ゆっくり探せないまま、後ろ髪ひかれる思いで出かける。
仕事が手につかなかった事は言うまでもない
どうかひょっこり出てきますようにと願いながら夜遅くに帰宅するも、やっぱり龍馬はいなかった。
確実にベランダから外へ出たのだ。
臆病な龍馬に限って脱走はないだろうと思ったのは間違いだった。やっぱり猫だ。怖くても好奇心はある。
脱走させてしまったんだ、私の不注意で。
散々息子に怒鳴り散らして注意してきたのに、犯人は私だ。
降りることはできても、下からジャンプして2階のベランダに戻ってくることは不可能。うちのベランダの下はメンテ用の狭い通路で人間は外から入れない。
外に出たこともない猫がマンション敷地内をぐるりと回って階段を上がり、見たことがない廊下を通って自宅を嗅ぎ分け玄関から戻ってくるなどあり得ない。
どうしよう。
泣きそうになりながら、ベランダから真っ暗な外に向かって「りょうちゃん、りょうちゃん」と呼びかけても返事はなく、どうしたら良いのか途方に暮れるばかりだった。
続く。