第2話 龍馬到着その日に事件‼️ | tales of tails しっぽたちのお話

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自分の猫を脱走させ、地獄の捜索体験をしたことをきっかけに、野良猫救済ボランティアを始めることに。  私の活動体験を読み、一人でも多くの人が、殺処分ゼロ、不幸な猫ゼロと言う目標に共感してくれることを目指してこのコラムを執筆しています 

このブログ開設の経緯は こちらへラブラブ

2011年のこと。

第1話で紹介したように、やっと長年の懸案であった猫の里親になることになり、 大型のケージ、トイレ、おもちゃ、猫ベッド、フード、などなど準備万端に整えて、あとは猫が来るのを待つばかりだった。

平日は仕事で留守がちな我が家。  猫が来ていきなり長時間のお留守番とならないように、金曜日の夕方に自宅に届けてもらい、土日はゆっくり猫と過ごすつもりでいた。

龍馬と譲渡主Sさん到着。ニコニコ

マンション玄関まで迎えに降りる。 

Sさんは車を駐車しに行き、私はキャリーに入っている龍馬を受け取り、一足先に自宅へ。
キャリーの外から龍馬を覗いてみる。 ドキドキ。


臆病だと言われた通り、龍馬は固まって微動だにしない。

 

私は、猫と触れ合うのは数十年ぶりなのにに、子供の頃から野良猫には思い入れが強く、私は絶対に猫の気持ちは誰よりも理解できるという根拠なき自信を持っていて、どんな猫も私には気を許すはずだと信じて疑わなかった。 

 

キャリーで固まっている龍馬も私にはすぐ懐くはず、と何とも無知でおめでたいことを考え、こともあろうにキャリーの蓋を開け、顔をつっこんで中を覗いてしまった。ゲッソリ

 

す    る     と、

 

しばらく恐怖を我慢していた龍馬が大パニックを起こし、キャリーから猛烈なスピードで飛び出してしまったのだガーン

 

びっくりした私がのけぞっている間に、龍馬はリビングからキッチン、隣の和室まで走り回り、壁を縦に駆け上がり、カーテンに爪をたてて上り下り、隠れる所を探して、目にもとまらぬマッハ級の速さでぐるぐる走り回った。 

まるでパチンコの玉ガーン

 

え? これ猫? 

 

こんな猫 見たことがなかったガーン

 

龍馬が壁を駆け上がった瞬間に、空から霧が降ってきたゲッソリ

 

何これ?  ちょっと臭い?

 

げ、もしかして、おしっこ?ガーン

恐怖のあまり失禁してしまったようだ。

 

私が大パニックしているとSさんが車を駐車して我が家に到着。


私が事の次第を説明すると、ベテラン猫ボランティアのSさん、愚かなことをした私を怒りもせず、 

私たちを部屋から出し、タオル一枚で龍馬を捕まえてケージに入れた。

 

私は、もう唖然ぐすん

 

何と自分は猫の事を知らないのかを思い知らされたショックと

猫を迎えてから思い知る愚かさへの恥ずかしさと、

そして、何でSさんはあの天井まで駆け巡る龍馬を捕まえることができたのかの尊敬と、

これからこの子と一緒に暮らしていけるのかの自信のなさと、

いろいろな感情が重なり合って、ただただ茫然として青ざめた顔をしていた私に、

 

Sさんは、怒りもせず、慌てもせず、譲渡取りやめるなどと言いだしもせず、


「慣れるまでケージから出さないでね、出したら隠れて出て来なくなり、そのまま家庭内野良になるかもしれないから。 ケージの中で毎日名前呼んで触ってあげたら、そのうち慣れるから。」
と言って、

不安な顔をしている私を尻目にSさんは帰って行った。


え、いや、そんな、まだ帰らないでえー。 

 

というのが龍馬と二人きりになった私の最初の感想だった。


なんとショッキングな初日。

しかし龍馬の方はもっとショックだったはず。
恨めしそうな顔をしてケージの奥にうずくまっていた。
すぐにでも抱っこして一緒に寝られることを夢見ていた私は、初日早々すっかり自信を無くしていた。

 

いま、思いだしたが、当時の私は、田舎の病気の親の介護に頻繁に帰省しなくてはならなかったのだが、猫を連れていけるものだと思っていた。 

「実家に連れていけないですね。」と 譲渡主のSさんに確認した時、

さすがにSさんは私の無知ぶりに驚いただろうと思う。 

完全室内飼いとは言われていたが、それが、実家に連れていけないとは思っていなかった。 (完全室内飼いとは、病院以外どこにも連れて行ってはいけないということです! 詳しくは後日)

 

私が猫を飼っていた昭和の時代は、祖母宅の猫を自宅に連れて帰ることもあった。  それ以来、猫を飼っていないのだから、私には昭和の感覚から進化する機会がなかったのだろう。

さすがに昭和の飼い方である味噌汁ご飯を食べさせることはしなかったが。 

 

今、こんな人が申し込んで来たらお説教ものだ。 自慢じゃないけど、譲渡する側の今の私の譲渡条件はすこぶる厳しい。 譲渡契約書もぎょっとされるかなと思うほど長い。

その条件をすべて満たした人のみに譲渡するので、私の里親さんはみんな優秀だ。

当時の私みたいなお馬鹿なことをする人は誰もいない。

もし、私が私の譲渡主だったら、こんな里親は即刻クビだわ。ショボーン

 

私は自分のこんな経験も踏まえ、自分が譲渡する際には、猫飼育歴ありと言われても、それがいつのことなのか詳しく聞くようにしている。

私のように子供の頃、昭和の飼い方しか知らない人には、今の飼い方との違いを事細かく説明する。

 

何故、こんなに昔と今とで違うのか、というと、一つの理由としては、昔はその辺に落ちている猫を一般の人が「拾ってくる」ということが普通に行われていた。 つまり、家猫になった野良猫というのは、誰にでも手で捕まえられる人馴れした猫だけだった。 だから、人馴れしていない猫を飼うと言う発想もなく、見ることも触ることもなかったのだろう。 龍馬みたいに、パニックして壁を駆け上がる猫がいるなど、知る由もなかった。

それに対して今の保護猫は、昔のように手で捕まえた猫ばかりではない。 ボランティア活動をする人は、外にいる野良猫の避妊去勢手術をするのがメインの活動であることが多い。 放置したらどんどん増えるからだ。 外猫は人間に怖い思いをさせられているので警戒して簡単には捕まらない。 捕獲器という罠を使って捕まえるのだ。 罠で捕まえ(TRAP)、避妊去勢手術をし(NEUTER), 元の場所に戻す(RETURN)活動をTNRと言うが、その現場で見かけた子猫や、人馴れしそうな猫を捕獲器で捕まえ、人馴れさせてから譲渡しているのだ。

だから、すぐに手で捕まる猫とはわけが違う。

こんな猫が脱走したら捕まえるのは大変だ。

だから脱走させないよう、柵を付けるなどの対策を講じることも、今ではほとんどの譲渡主が譲渡条件にも入れている。

 

そういうことは、今、里親になりたいと申し込んでくれる人の中にも知らない人は多いので、しっかりと説明するようにしている。

 

こうやって無知で愚かだった私でも、外の猫を保護し、譲渡をする側になり、偉そうに里親さんに猫との暮らしについてあれこれアドバイスしている照れ。 

飼い主も猫と共に成長するのだ。 私が良い例だ(笑)。

 

保護猫を初めて迎えるにあたり、不安になる人もいるかもしれないが、

私でもこうやって立派に成長したのだから、里親になり、譲渡主のアドバイスを受ければ、大丈夫、ちゃんと楽しい猫ライフは送れるはずだ。

是非、里親になり、行くところのない可哀想な猫を救ってほしい。

 

次号ではその後龍馬がどうなったのか御披露しよう。

 

【龍馬】