Ash
努力をすることに
違和感しかないと言っていた。
演技をしているだけで
気持ち悪いと言っていた。
私たちのために
もう何も力を尽くしたくない彼は
別れを選びたいと言っていた。
それでも
そんなに簡単に終われずに
日々が続いている。
もう何もかもが崩れて消えた。
元々崩れていたけれど
ついに灰になって跡形もなく消えた。
灰になった思い出や
灰になった未来が
ハラハラ
キラキラ
私の空虚な毎日に
降り積もる
灰になってしまったら
破片を拾い集めて、組み合わせて
繋ぎ合わせる事も出来ない。
修復することも出来ない
ただの粉塵になった、過去と未来。
僅かにあったはずの希望。
もう止められない。
ハラハラ
キラキラ
雪みたいに
降り積もる
手に取れば
たちまち崩れて
掌には黒ずんだ汚れだけが残った。
大きな噴火のあとみたいに
不思議なほど静かに
灰が降り積もっていく。
私の人生の全てを
灰色に染めていく。
色があったはずの日々も
全て灰色に変わってく。
過去も現在も未来も
全て灰色に染まっていく。
少しずつ、でも確実に。
私は冷静に、静かに、
その光景を眺めている。
辺り一面が灰に覆われて
もうどこへ行けばいいのかも分からない。
ただこの場所で
立ち尽くすしかない。
私にはもう止められない。
私にはもう修復出来ない。
私にはもう
やれる事は何もない。
そしてもう
何もしたくもない。
fairy tale.
仲良く過ごした日
これは作り物なんだと感じる。
言い争っている日
これが本当なんだと感じる。
あなたといる日々
どの瞬間も悲しい。
いつの時も
虚しい。
ひとりでいる時間
やっと安心する。
本物の感情、本物の自分。
ふたりの記念日
「これからもよろしくね」と
あなたは言った。
あなたの新しい電話
新しいメールアドレス
アドレスの中に私の名前を入れていた。
嬉しいと思ったすぐ後に気付く。
これは、本当じゃない。
作られた2人。
だからすぐに
虚しくなる。
あなたが私に向ける優しい言葉も行動も全ては
本物じゃない。
だってあなたは
私を嫌いで、憎んでいるから。
私はよく解ってる。
架空の、理想の
物語を演じているだけ。
こんなだったらいいな。
でも知ってる。
私たちは
こんなじゃないから。
物語は夢。
架空のおとぎ話。
幸せな瞬間、それは
現実ではないから。
We've grown far, far apart.
いつから
こうなってしまったのかなんて
今となってはもう分からない。
もしかしたら
私たち出逢った日から
終わりに向けて歩き出していたのかもしれない。
行く先に道はないと知らずに
永遠に2人歩んで行くと誓った。
いつからか
まっすぐに続いていたはずの道は
砂利道になり
岩だらけになり
山となり川となり
生い茂る木々に囲まれ
道を見失い
互いを責め合いながら
それでも2人進んで
ぬくもりも感じない手を取り合い
それでも必死で歩いて
互いに疲れ果て
やっと視界が開けた先に見えたのは
道の終わり。
ただ崖っ淵に立ち尽くしたまま
後戻りさえ出来ず
私たち2人
もう先なんかないことを
未来なんかないことを
痛いくらい感じている。
愛は、はじめからなかった。
私は忘れられない人を忘れるために、
あなたを選んだ。
愛されれば、愛せると思った。
あなたは手に入らないゆえに
私を追いかけ、幻想の私を愛した。
本当の私を、はじめから見てはいなかった。
2人とも
愛があると錯覚していただけ。
現実という日常の中で
追いかけていたものが幻想だと気付き
こんなはずじゃなかったと
あなたは私を責めた。
私は自分を責めた。
幸せを感じていたかのような
そんな日々が
まるで長い夢を見ていたかのように醒めて
今ここには
義務、責任、契約
そんなものたちが私たちを繋ぐ。
私たちを結ぶ。
愛、信頼、尊敬
欲しかったものは
どこにも見当たらない。
最近ね
笑顔を見た
笑い合って
手を繋いで歩いて
無邪気にキスした。
でも解ってる。
それは愛でも何でもなくて
そこには愛なんかカケラもなくて
だから言い争っているときよりも余計に
悲しくて、虚しかった。
憎まれてることを知ってる。
私たち、もうとっくに全て壊れて
2人には何も残ってないことも
終わりを終わりと認めず
無理やり続けているだけなのも
最後のページを閉じたら
この物語は終わるのに
2人とも、その一歩が踏み出せない。
もう続く物語もないのに
本を閉じないままでいるだけ。
もう終わっているのに。
先なんかないのに。
なのに無理やり
笑って
手を繋いで
抱き合って。
「お前になんか、憎しみしかない」
何度も繰り返し言われた言葉。
今じゃもう、涙すら流れず
冷静に受け止められる言葉。
言わなくても、知ってる。
解ってる。
だけど、聞きたくない。
でも、それが真実。
2人の真実。
手を繋いで、笑い合って、キスをして
そんな2人が、偽物。
お互い精一杯の無理と努力をして
笑顔でいるのを、理解していた。
だから
罵倒されているときより
睨みつけられているときより
笑顔でいる時の方が
余計につらい。
本当の2人じゃないから。
虚偽の幸せは
真実の不幸よりも
より悲しく、より虚しくて
いっそう孤独で
あぁ、私たちはもう終わっているんだな。
そんな風に感じた。
虚無感の中に浮かびながら
私は《ふたり》を思い出していた。
ジェットコースターのような関係
激しい波の中に、小さな船で揺れるような
そんな2人の毎日
目まぐるしく変わる空模様のように
一瞬先も予測できない。
今はまるで
台風の目の中にいるように
静かに
荒れ狂う時を見据えながら
ふたりの10年間が
走馬灯のように巡り続けている。
Loveless.
彼に抱かれ
涙が止まらなかった
止まらない涙を
気付かれないように息を殺した
愛されていない人に
抱かれるのは私の得意技
幾度も腕の中で涙を流した
誰にも気付かれないままで
一緒にいるのに、私は愛されない
抱かれても、そこに愛がある訳じゃない
昔から知っている。
愛のない関係が、どれほど虚しいか
どれほど、自分を壊してしまうか。
こんな気持ちは久しぶりだった。
まさか永遠を誓い合った相手に
こんな気持ちを感じるとは思わなかった。
私を憎む人に抱かれること。
それがどれほど
虚しくて、苦しいことか
心が絞られるようだった。
涙が止められなかった。
愛されていないことが悲しいんじゃない。
憎まれていることが苦しいんじゃない。
こんな自分が、
ここでこうしている自分が、
惨めで、哀れで、
だから涙が溢れた。
心と体はひとつ。
愛されていないなら
虚しさしか残らない。
キスされても
抱き寄せられても
体が近づくだけ
心が離れたような気がした。
体が近づくだけ
よけいに終わりを感じていた。
触れられても
まるで刃物で撫でられているように
心が痛くて
傷跡が増えていく気がした。
心の距離は
体で埋まらない。
私は一体なに?
突き飛ばしたその腕で、抱き寄せて
罵倒したその唇で、キスをして
睨みつけたその目で、見つめて
私は気が狂いそう
何もかもわからないけれど、
ひとつだけ確かなことは
愛はないということ。
どこにもないということ。
Don’t get off my mind.
息が詰まる
彼といる空間
窒息しそう
いつからこんな風になってしまったのかな
二人でいることが幸せだったのに
今じゃ目も合わせない
会話もない
触れることもない
互いに必要最低限のことをこなし、
ただ生活しているだけ。
たまに口を開いてみれば
すぐに口論が始まる。
こんな日々が
いつまでも続いていくのかな
そんな毎日が
私のたった1度きりの人生なのかな
こんなに人を憎んだことも
憎まれたこともなかった。
愛を育むはずの私たちは
真逆の道を歩いて
歩き続けて
もう修復も出来そうにない。
ただ、苦しみが続くだけ。
頭から離れないの。
最近いつも、
いつでも、
もう、疲れて
頑張らなきゃいけないのに
頑張ることも出来ずに
どちらに走っても行き止まりで
もう諦めてしまいたくなる。
もうやめてしまいたくなる。
永遠に出られそうもない迷路の中で
疲れ果てて
もう歩けない。
きっと、この先に
私が生きる意味はなく
きっと、これから
どんどん失われていく
全てが壊れる前に
全てを壊してしまいたい
終わらせてしまいたい。
頭から離れない。
ずっとずっと、離れない。




