赤目のウサギはつぶやいた。
特定不可の人の手が、あまりに大きな人の手が
高嶺の花を鉢に植えて、安値の花にしてしまって、
変わってしまったなんて言われるそれを
土が変わって水が変わったせいにするでもなく
ただ小さく枯れていくそれをその横で僕は
変えられた事と変えられなかった事がいくつもあるけれど
その横で僕は一緒に年をとろう。
枯れ木に花が咲かなくても。
嵐のような春がきても。
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2015年はヒツジを沢山描いたヒツジ年だった。
アート系サイトの連載や、バンドのMVや、カフェの羊を描いたり、
相変わらず僕はスギモトダイキでした。
2016年はもうすこしコンスタントに形にしたいなあ。
頭の中にいくつもある。
帰省していろんな人に会った。
真夜中に高校の入口で友達と話し込んで、
寒々とした景色の錆びた正門前を、あの頃話せなかった話やもう聞き飽きた話で埋めた。
ボロい自転車で三十分かけて通い続けてた道のりを
酔った足で歩いていったので振り返るには充分だった。
警察署はスーパーになっていて、原っぱがホームセンターになっていた。
当たり前のように集まっていた人たちが当たり前に集まらなくなり
あれは幻だったんだろかと思うほどだけど
血になってるんだろな、多分。
記憶から呼び起こせないことでさえ、体をめぐっているんだろう。
あの頃の僕のヒーローは相変わらず僕のヒーローで
グミの食感が乳首に似てるという話をして相変わらずアホな友達は帰っていった。
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MV制作で、自分ではない人の考えたお話を絵にするという作業は意外にも楽しめた。
Memeという前から好きだったバンドからのオファーで
少し肩に力が入ってしまったけれど、
物語をふくらませる作業は最高にいい経験だった。
一人だけでは出来なかった事が、少しずつ形になって増えていく。