変わらずに変わり続けるロボットの話 | スギモト ダイキノ ブログ

スギモト ダイキノ ブログ

自分の
居る場所が
自分の
居場所になれ。



科学者達に
期待と希望を込めて作られたロボットは、
誰にも負けない強さのために
いつまでも変わらないでいられる最高の設定を仕組まれました。
ずっと変わらないように祈りを込められました。
完成した夜は祝福のパーティが開かれ
沢山の人が微笑みかけました。
時は流れ、年月が過ぎ、
そこに関わった多くの人間達はとっくに亡くなり
しかしロボットは生きていました。
煙を吐きながら生きていました。
いつまでも変わらない設定と共に。
新しい時代の常識や形式とは相容れないそのロボットは
新しいコンピュータや機械と線で繋がる事さえ困難でした。
新しい電波や言語を拾い上げる事も出来ませんでした。
さらに時は流れ、体はひび割れ腐っていきます。
当時の最高の設定は、現代の最低の設定になりつつあります。

本当はロボットは、
自ら設定を書き換える方法を知っていました。
けれども書き換えられずにいるのは、
あの時自分の誕生を祝ってくれた科学者達と
育ててくれた博士の顔が今でも鮮明に目に浮かぶからでした。



このまま死ぬだろうかと、
もう動きも鈍くなった手足を見つめてロボットは思いました。
旧式で無駄に大きな体は熱を帯び、煙は濃くなっていきます。
「せめて邪魔にならないように」とゴミ捨て場に向かう道のりで
ふと頭をよぎったのは
このゴミの山に自分と似たような奴がいるかもしれない、という事でした。
自分を書き換えられずに、何かの理由で、埋もれた奴がいるんじゃないかと。
くすんだ目からライトで照らし、あわてて辺りを見渡しました。

その時なにか聞こえた気がしました。
ロボットにしか聞き取れない、珍しい歪な声が。
「ねえ、だれかいるのかい?」数十年ぶりにロボットは大きな声を出しました。
息も絶え絶えにゴミの山で、誰かが手をあげています。
久しぶりに加速する体に、ネジは幾つもギシギシうなります。
向こうで手をあげている誰かに、
どうか生き抜いてくれと願った瞬間、

なにかひとつだけクイズが解けたような気がしました。



「ガガガ、ピーッ…ガガガッ。」










こんばんは。スギモトダイキです、お久しぶりです。
こいつらがこの後どうなったかはよく分からないですが、
変えたい事や変わりたい事が沢山ある中で、
変わらない缶コーヒーにほっとしたりしながら
ゴミの山のような感情になる日もありゃ
ふとした時にああ自分を生きててよかったと思います。
お元気ですか。


僕は元気です。