「アリにもクジラにも同じ重力がこの星では降り注ぐってのは
平等って名前で呼ばれる理不尽だけど
そういう星は星で
脱出したいなら力を尽くせばいいし、違うならどうか自分を楽しんで。」
変形し続けるクジラみたいな雲は、
自分の殻を掃除してばかりで一歩も進めない遠くのカタツムリに言った。
「そっちはそっちで大変ですか。」カタツムリは、
自由に縛られた雲を心配した。そして今夜は雨のにおい。
◆
小学校5年の時の担任の先生が
「親たちがどう子供に指示していいか分からない時に、
はやくしなさいと、とりあえず何度も言うことがありますが、
実際そこに深い意味はありませんから、
困った時、あなたたちはどうか落ち着いてください。」って言ってた。
あの先生大好きだった。
なにかを決める時、なんとなくじゃ駄目だって言ってた。
急にそれを思い出した。
偉人の名言は、会ったことないから、よく分かんない事がおおい。
アインシュタインは俺の電話番号知らないし。
ふるい友達とか、ここにくるコメントとか、
生々しく文脈の知れるものが良い。
期間限定のMOWのアイスを頬張って夜中の僕は、
野良猫は背中を向けて近づくと逃げないという噂を試して
あっけなくしくじって狭い道で笑った。
窓がひゅうひゅう鳴っている。
目をギラつかせて借りてきた前向き発言を連呼する人達を
僕はきっと安々と信頼出来ない。
一回ぐらい、みんな消えてくれとか死にてえとかを経由して、
んで「ああそうじゃねえわ」って自分で後ろむいたり前向いたりして
自分で式と答え出そうとしてグルグルしてる人に愛着がわく。
ああ眠れねえ、と言いながらコーヒー牛乳を飲む真夜中。
きっとそんな風に年月を重ねてきたしこれからもそうだろうな。
なにもなくて、
なにもなくてもなんかいい日はある。
もうだめかもわからんくてもまたいい日はあるよ。