退院してから困ったことのひとつに、皮膚がぽろぽろと剥けるということがあった。最初の内は・・汚い話しだが入院中は十分に入浴ができないため(予約制で30分限り)、垢がたまっているとまでは言わないが洗い切れていない老廃物が残っているためかと思っていた。一週間もすればなくなるだろうとタカを括っていたが、状況は良くなるどころか日増しに悪くなっていった。下着を脱ぐと剥けた皮膚がぱらぱらとフケのように付いている。着替えや歩くだけでも落ちるので、床も頻繁に掃除しなければならない有り様だった。一日に何度も掃除機をかけ、お風呂も家族の最後にしてもらって掃除してから出ることにした。日焼けの時のような剥け方ではなく、フケのように細かくぱらぱらと散るのが余計に汚く感じて嫌だった。
思えば入院中からそんな感じではあったが、入院中は皮膚の状態よりも病気の状態に注目しているから、特に気にはならなかった。さてプレドニンの副作用のひとつか、はたまた急激に痩せたことによるものかと考えたが、もちろん解らない。自分でできることとしては入浴後に全身に入念にクリームを擦り込むことくらいだが、それも気休めのようなものだった。クリームを擦り込んでしばらくはシットリしているが、その内に乾いてくる。乾くと粉を吹いたように肌が白っぽくなり、軽く手の平でこすっただけでも粉が舞う。またクリームを塗り込む・・の繰り返しだった。
ようやく皮膚が剥けるのが収まったのは、退院してから2ヶ月ほど経ってからだ。プレドニンの投与量も減り、体重も戻り始めている時期だったから、結局どちらが原因かは解らず仕舞いだった。皮膚が剥けるのが収まるとやっと人心地・・・いや、大げさだと思われるかも知れないが、いくら家族が気にしない素振りでいてくれようとも全身至るところの皮膚がぱらぱらと剥けて散らばるのだから、掃除や洗濯のみならず料理やトイレに至るまで本人は気になって仕方ないのだ。皮膚が剥けなくなってやっと、気楽に生活ができるようになった。
皮膚と言えばもう一つ困ったことが・・足の裏の皮膚のことだ。この病気では足の先や裏の神経が麻痺する症状があるのだが、それとは別に退院してから気が付いたことが「足の裏の皮膚が薄くなったのでは・・」ということだ。これも最初のころは入院生活でずっとベッド暮らしだったから、足裏の皮膚が薄くなったのではと考えていた。皮膚が薄いから非常に過敏になって歩きにくいのだが、しばらくすれば戻るだろうと思った。ところが一向に戻らない。退院して3ヶ月以上になる今でも足裏の皮膚は薄く柔らかいままで、固いものを踏むと飛び上がるほど痛い。
あそこが痛いここが痛いと愚痴を言えば切りがないのだが、そういう細かいことが気になるようになってきたのも、全体的な症状が緩和されてきたためだと思う。思えば最初の頃の風呂掃除は、大げさに言えば特訓場のようだった。いったんしゃがみ込んでしまうと立ち上がれないから、できるだけ膝を曲げずに掃除できるところは掃除して、しゃがんだらしゃがんだで可能な限り広い範囲を一度に掃除しようとする。座って立つ動作をいかに少なくするかが勝負で、風呂場から出るといつも心臓の鼓動を気にしながらぐったりしていたものだ。それが今は大した苦もなく風呂掃除ができるのだから、良くなったものだなあと思う。