ロレンスの事故死がライダーの頭を守ってくれる。(Feb. 11, 2024) | 微睡のブログ〜八ヶ岳南麓から〜

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八ヶ岳南麓、北杜市長坂町小荒間に在住。ときどき仕事をしながら、読書、音楽鑑賞、カメラ撮影、オートバイツーリングなどの趣味を楽しんでいます。

2月11日(日)

 8時起床。快晴。気温氷点下0.5度。体重72.4キロ。

 午前中ようやくHenry JamesのThe Madonna of the Future読了。イタリアのフローレンスを舞台に天才と嘱望されながら期待されたような作品を遺せなかった失意のアメリカ人芸術家の人生を物語っている。expatriate(国外移住者、国籍離脱者)という言葉があり、作家や画家などアメリカを捨ててヨーロッパで暮らした者は多かったようだが、主人公もその一人だ。もちろん、ヘンリー・ジェイムズもその代表的な一人だ。

 午後はEdgar Allan PoeのThe Purloined Letterを読み始めたが、買い物と文化村に用事がありK子と出かけた。文化村の用事というのは、ぼくが文庫として使わせてもらっていた部屋が改修されることになり、3台のMacやスティール製の書棚を他へ移す必要があった。工事は2月だと聞いていたのでのんびりできなかった。

 文庫の部屋に入ると、40歳ぐらいの男性が壁紙を削り落としていた。さてはもう工事が始まったかと思ったが、聞けばその人は職人ではなくてカメラマンだという。ぼくのことも館長のSさんから聞いて知っているようで、なぜ知っているかといえば、昨年いきなり部屋に壁を作って二分する(二分するといっても、広さは一対一ではなくて五対一なのだが)と告げられたのだが、そのカメラマンのTさんのスタジオを作るためで当然書棚や本の移動のこともありぼくのことも話題になったのだろう。それにしても写真スタジオを作るためだとどうして話してくれなかったのかと少しモヤモヤする。

 Tさんは右腕を骨折しているとかで石膏で固めていたが、親切な人でMacの運び出しを手伝ってくれたばかりか、スティールの書棚の分解までしてくれた。改修工事は職人さんの都合もありいつから始まるか未定だが、それまで出来るだけ作業を進めておくためにきていたようだ。LINEを交換して工事の日程が決まったら教えてもらうことにした。

 

 

 よってけしで野菜を買って帰り、ポーの「盗まれた手紙」の続きを開く。しかし今日はもう疲れて途中で読書は中断する。

 

 

 夕食後『アラビアのロレンス』を半分だけ観る。考えてみれば完全に観たことがない。今まで何度かチャンスはあったものの、長すぎるのがネックになって中途半端にしか観てこなかった。今度こそ完全に観ようと思っているが、自宅で4時間近くの映画を観るのは非現実的だ。録画しておいて半分ずつ見ることにした。

 映画はロレンスがオートバイで事故死するところから始まる。何かで読んだが、オートバイのヘルメットが作られるきっかけになったのは、ロレンスの友人の医師が検死して頭の損傷が死因だったのでヘルメットを研究したのだとか。うろ覚えなのでどこまで正しいか覚束ないのだが……。

 もうだいぶ以前のことになるが、知り合いになったアメリカ人ライダーがロレンスの書いた文章をメールで送ってくれたことがあった。明け方、兵舎を抜け出してオートバイで走り出した時のことを書いた素敵な文章で、共感を覚えたのはぼくもまた遠方にツーリングに行くときは早起きをして同じような気持で朝靄の中を走ったからだ。あの文章はどこへ行ってしまったのか。Macの中に保存したはずなのだが読もうと思っても見つからない。夢のように消えてしまった。

 ロレンスを演じたピーター・オトゥールは身長188センチだったというが、一方実際のロレンスは小柄だったという。長身のオトゥールがロレンスを演じたこと、これは映画の一つのリアリズムというべきだろう。現在の中東情勢を見ると、ロレンスが偉人であるかどうか評価はむずかしい。しかし余人をもっては代えがたい超人的な活躍をした人間を描くには長身で金髪碧眼のオトゥールでなけれなならなかったのである。ロレンスが小柄だということで同じ背丈の役者に演じさせるのは別のリアリズムである。