8時半に起きて、東京へ行くK子を長坂駅まで送る。霧が濃い。気温が高めだからだろう。
11時11分の電車で甲府へ。いつもの火曜日に乗る電車の2本早い電車である。車内では谷崎潤一郎の『鍵』を読む。文豪のポルノ小説だ。
早い電車に乗ったのは都市銀行2行に用事があったからだ。地元に支店があれば世話がないのだが、地方銀行や信用銀行しかない。用事の一つは、キャッシュカードが割れたので再発行の手続きで、もう一つは、別の銀行でもう口座番号も忘れてしまった古い口座の解約である。再発行手続きは混んでいたが比較的短時間で簡単にすんだ。古い口座の解約は、銀行で教えられてさらにもう1口座あり、どちらも口座番号が不明だったので時間がかかると思ったが、こちらも意外と簡単にすんだ。忘れていた口座に大金が預けられていればよかったが、合わせて1万円あまりしか入ってなかった。でも、1万円でも嬉しい。
街を歩いていると美味しそうな店がある。時間があればラーメンでも食べたかったが、午後の仕事の時間が迫っていた。駅のキオスクでオニギリを買う。
小雨がときどき降るが、傘はバックパックに入れたままだ。薄暗く街の風景は侘しく寒々と見えるが、歩いていると汗をかいた。
職場へ行くとパートタイム仲間のアメリカ人Mさんがいて柚子を一個くれた。先週は吊るし柿をもらった。横須賀に住む奥さんの母親が送ってきたのだという。かつてのぼくの同僚であったアメリカ人のAさんに会ったというので、元気でしたかと聞くと首をふる。最近奥さんを亡くしたというので落ち込んでいるのかと思ったら、むしろ体の方で、ぼくと同じく膝を傷めているし、その他あちこち悪いらしい。ぼくのことを話すと、えっ、まだ働いてるの! とひどく驚いていたというので、ぼく自身も驚いてますといっておいた。
昨日に続いて仕事は簡単に終える。建物から出ると、まだ4時過ぎだというのにすっかり暗くなっている。
帰路の車中では谷崎の『鍵』の続きを読む。中年夫婦の閨房生活が、夫と妻の日記で赤裸々に綴られているが、「意識の流れ」の趣がある。猥褻でありながら猥褻感はさほどない。
長坂駅に降りると、雨は激しく冷たくなっていた。
11時過ぎK子を小淵沢駅まで迎えに行く。