憧れは窓辺の釣(May 31, 2022) | 微睡のブログ〜八ヶ岳南麓から〜

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八ヶ岳南麓、北杜市長坂町小荒間に在住。ときどき仕事をしながら、読書、音楽鑑賞、カメラ撮影、オートバイツーリングなどの趣味を楽しんでいます。

 朝8時、曇天、気温は14度。この時期だから、涼しいという言葉を使いたいところだが、寒い朝である。庭土は黒く湿っている。薔薇の花や葉には水滴が丸くついている。気づかなかったが明け方頃雨だったのだろうか。

 

 今日も甲府で仕事があるが、午後1時過ぎの電車でよいので読書の時間は充分ある。寒いので電気炬燵をつけて『井伏鱒二自選全集第七巻』の「釣師・釣場」の続きを読む。12時20分前に読了。

 ぼくも釣は嫌いではないが、本格的な釣をしたことはない。生まれ育った場所に佐藤垢石の釣エッセイにも出てくる鮎釣りで有名な川があったから、釣り人たちを見て憧れに似た気持ちはあったが、ちょっとした真似事で終わってしまった。しかし近所の釣り好きのおじさんたちに、釣を通して身につけたと思われる博識や観察眼がそなわっていることに子供心にも驚き尊敬の念をもっていた。「釣師・釣場」に出てくる各地の釣師や漁師もそのようなちがいのわかる人たちだった。

 ずっと以前アンドレ・ジッドを読んでいたら、窓辺で釣り糸をたらしている男の話が出てきて、激しく憧れたことがある。部屋で安楽椅子に深く腰かけ、本を読みながら、音楽を聴きながら、ビールを飲みながら、釣れなくともよいから、釣竿を伸ばし、釣糸をたらし、ときどき浮きを見る。そうして事もなく時間が過ぎ、やがて日が暮れる。忘れていた、居眠りをしていてもよい。

 

 

 午後は90分ほどの仕事をするために甲府へ。陽射しは強かったが、風はさわやかで好い日和だった。甲府へ行き楽しみは電車で読書ができること。中学校から越境入学で電車通学をしていたから電車は動く読書室で、もっとも集中して読書ができるのである。

 今日は昨日からの続きでヴォルテール「カンディード」を読む。往復の電車で読了のつもりだったが、10ページ残ってしまった。帰宅して残りを読む。さすがにヴォルテールの哲学的コントの最高傑作だ。ヴォルテールはルソーのように内面を吐露することがないと訳者が解説していたが、内面を吐露することはなくとも、ヴォルテールの人生の浮き沈みやそれによる思想の深化などが、カンディードの変転極まりない冒険的(強いられ流されて冒険的になっているといえばなっているのだが)人生に直截的に表出しているのではないか。

 甲府行きがもう一つ楽しい、というか好いのは、好い運動になっていることだ。駅の階段の上り下り、駅から職場まで10分の徒歩など、かなり重めのバッグを背負っているから適当な負荷もかかっており、ダイエットにも役立っている。

 

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