前回のつづき
森の出来事
無断転用禁止
11月下旬。
「熊出没注意」と「車両進入禁止」の看板が立つ森で車中泊した翌未明じゃ。
午前5時半。
いよいよ禁断の森へ突入するぞえ。
進入禁止と言っても徒歩なら行けるからのう。
わしゃあいつもは管理人に懇願して許可をもらい、車で入って行くのじゃが、こんな早朝では管理人も来ていまい。
そこで今回は勇気を振り絞って徒歩で行くことにしたのじゃ。
腰には熊鈴、口にはホイッスル、肩には緊急用のブザーをぶら下げてのう。
用心のために準備はしていくのじゃが、今まで何十年もこの森へ通っていてもクマが出たなどと言う話は聞いたことがないのじゃよ。
しかし近ごろはメディアがやたら喧しく言い立てるからのう。
用心するに越したことはないわい。
木々の間から垣間見えるマジックアワーの空。
上空には有明のお月さまじゃ。
暁暗の森へそろりそろりと入って行ったわい。
チリンチリーン、チリンチリーン(熊鈴)、ピーッピーッ、ピーッピーッ(ホイッスル)。
薄暗い森の中。
林の奥がちょいとずつ明るくなってきたわい。
ほんのわずかな空間から朝焼けが覗く。
お天道様はまだじゃ。
と、のんびり構えていたら…
ん?
苔が染まって来たぞえ。
こちらも・・・
次の瞬間・・・
OH!
お出ましじゃ!
真っ赤な朝光が見る間に辺りを染めて行く。
わしゃこの瞬間のために好きでもない車中泊をしているのじゃ🤩
日の出直後でなければ見られぬ真紅の光。
まだ紅葉していないモミジも、この一瞬は真っ赤に染まる。
木の幹や・・・
根っこでさえも…。
そして汚れた枯れ落ち葉にも元の紅色が蘇る。
所々で垣間見えるお天道様。
とぼとぼ歩きながらお天道様のお恵みを見つけてはパチリ。
そしてまたとぼとぼ。
また見つけてはパチリ。
そしてとぼとぼ。
そろそろ歩き疲れたわい。
そう言えばこの先にちょいと開けた場所があったのう。
そこで一休みして行こうわい。
と、疲れた老体に鞭打ちながらヨタヨタと歩き始めたその時!
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何と!
通せんぼじゃ!
「ハチの巣あり 進入禁止」の文字が!
何たることじゃ。
しかも「車両」と限定していないぞえ。
ということは徒歩でも進入禁止ということじゃ。
当たり前じゃよのう。
ハチに襲われたら徒歩の方がなお危険じゃわい。
こんな事態が待ち受けていたとは!
さてどうしたらいいのじゃ。
・・・と、いくら頭をひねっても引き返すしか術はないわのう。
仕方なくそのまま踵を返して、またヨタヨタ、トボトボ。
なんと可哀想なカメじいよのう。
つづく
無断転用禁止


























