ヒマに任せて
無断転用禁止
📳♪♪♪♪♪~
着信音が鳴った。
高校時代の生き残りの同級生からじゃった。
電話の向こうで長々と、あちらが痛むだとかこちらがしんどいとかグチをこぼされてのう。
こんなに老いぼれてしまったわし達じゃ。どこか痛うても不思議ではないわえ。
そう思いながら、それでも一通り聞き終わったころを見計らって、
「それで用件は?」と尋ねたら、
「退屈じゃから掛けただけじゃ」と宣ったわい。
「そうかい、そうかい。そりゃあよう掛けてくれたのう」
と、一応相槌を打ったあと、思いついて尋ねてみたのじゃ。
「ところでこの辺りに睡蓮の咲く場所を知らぬかえ?」
すると「お寺の境内にある睡蓮なら知っているぞえ」と言うではないかえ。
わしゃあ勢い込んで「それではそこへ連れて行っておくれ」と言ったのじゃ。
すると…
「こんな暑い時に行くのはイヤじゃ」と抜かしおったわい。
冬に咲く睡蓮があったらお目にかかりたいものじゃ。
仕方がない。一人で行って見るか。
☆
曇り空で気温も多少は和らいだある日。
ナビを頼りに出かけてみたわい。
ワシの住処から2、30分の所らしいが、ここは初めて行く道じゃ。
自分が住む町でも、行ったことがない場所はいくらでもあるのじゃのう。
やっと着いてみると…
お寺へ通じる脇道はご覧の有様じゃ![]()
もっともここは無住寺、つまり僧侶が常駐しておらぬ寺らしいからこれは想定内じゃ。
鎖のそばの駐車場に車を停めて、ここからは徒歩で行かねばならぬ。
しかも相当の上り坂じゃ。
まあわしもこのところ運動不足になっているからのう。この機会に火事場の馬鹿力で頑張って歩いてみるか。
道すがら咲いている花に、痛む腰を癒されながら
ヨタヨタ…
トボトボ…
やっと遠くにお寺の屋根らしいものが見えて来たわい。
どうにかたどり着いたぞえ。
この山門はかつてこの近辺にあった城が廃藩置県で取り壊されたときに、そこから移築したものだという。
山門のすぐ横にお目当ての池はあった。
しかし7、8メートル四方の小さな池で、人工的に作ったものじゃから、どうしても自然の池のような雰囲気はないわい。
当然ながら池の周りは山門やら鐘撞堂やらの人工物だらけじゃから風景と絡めて撮ることが出来ぬのじゃ。
花だけ撮る分にはこれでも良いのじゃが、何とかちょいとでもオリジナリティな画像にしようと思うと、同じような花の画像ばかりでは物足りぬわのう。
と言ってものう。ほかにいい方法がないのじゃよ。
ただひたすらに睡蓮を撮るだけじゃ。
花と葉っぱだけの代り映えのせぬ画像ばかりが続くわい。
じゃがここの花は小ぶりの色白で可愛いらしい花じゃ。
この池で一輪だけ咲いていた桃色の睡蓮。
ちょいとアップで。
今日は無風じゃから水面のリフレクションがきれいじゃ。
黒い影は庫裡の屋根。
池の周りにはトンボの姿も。
一瞬、曇り空からうっすらとお天道さまのお姿が。
だがそれもつかの間、あっという間にまたお隠れになってしまったわい。
あとはまた睡蓮だけのオンパレード。
すいれん
またスイレン
いくら撮っても代わり映えのせぬ睡蓮ばかりで、もうあきあきしたぞえ。
しかたがないわえ。
この辺りでそろそろ引き揚げるとするかのう。
お狸さま、長々とお邪魔しましたわい。和尚さまにくれぐれもよろしゅうのう。
と、ふたたび駐車場目指してヨタヨタ、トボトボ。
帰りは下り坂じゃから行きよりは楽じゃったわい。
何の収穫もない睡蓮撮影じゃったが、運動と暇つぶしにはなったようじゃ。
教えてくれた同級生には帰ったら感謝の電話をしてやろうわい。
またグチを聞かされるやも知れぬが、嫌がらずに聞いてやらねばのう。同病相哀れむじゃ🙄
おしまい
無断転用禁止

























