前回のつづき
奥飛騨から懐かしのせせらぎ街道へ
通称「せせらぎ街道」と呼ばれている岐阜県の高山市と郡上八幡を結ぶ幹線道路は、秋になると紅葉目当ての行楽客で大いに賑わう。
ワシも一時期、毎年のように出掛けていたものじゃが、ここ数年はとんとご無沙汰しているのじゃ。
というのも、行楽シーズンになると辺り一帯が大渋滞になって、撮影どころではなくなってしまったからなのじゃよ。
じゃが久しぶりに通ってみるとやはり懐かしいのう。
まだ紅葉には早いようじゃから辺りは閑散としているわい。
その名の通り、あちらこちらでせせらぎの音が聞こえてくる。
少しずつ色づいて来たところもあるのう。
色づいた葉の反射で水面が輝く。
何か面白いポイントはないものかとエモノを捜してヨタヨタ歩いていたら…
「出たあ!」
こんなやつに出くわしたらワシのような年寄りはイチコロじゃ。退散するに限るわい。
早々に道の駅の片隅へ逃げ込んだぞえ。
ついでじゃ。今夜はここで一夜を明かすことにしようかのう。
翌朝ー。
いよいよ帰途に就くとするか。熊との格闘はごめんじゃからのう。
ところがカメラマニアの性と言おうか、ストレートに帰ったのでは面白くない。
何かいいネタはないものかとわざわざ遠回りをしながらウロウロ捜し回ったわい。
すると道の端に大きな空き地があり、その横にススキが秋風に揺られていたんじゃ。
形のいいススキが逆光に輝いていたのが面白くてのう。
ここでしばらくは熊ならぬカメラと格闘してみたのじゃよ。
さて、お天道様も大分西に傾いてきたわい。今度こそわが住処へまっしぐらじゃ。
と、帰り支度を始めたら、今度はお月様のお出ましじゃ。
いや、もっと前からお出ましになっていたのじゃが、空が明るいうちは見えなかっただけじゃわい。
この機会を見捨てておかれようか。
また仕舞いかけたカメラを取り出してしばらくパチリパチリ。
気がついたら辺りは既に暗闇じゃ。
こりゃここでもう一泊するしかないわい。年寄りの夜間運転はご法度じゃからな。明日になってゆっくり帰ればいいのじゃ。
幸い残り物の食糧もあるからのう。家で呑もうと思って道の駅で買い求めていたにごり酒で、旅の終わりの祝杯を挙げたというわけじゃ。
完
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