思い出写真 その16・御射鹿池の冬 | 89歳の車中泊撮影記~風景写真に魅せられて~

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風景写真に魅せられた後期高齢者が、時には車中泊を織り交ぜながら撮影を楽しむ様子です。
                       
                       








                        

思い出写真 その16・御射鹿池の冬

 

 御射鹿池の最終版は冬じゃ。 

 

 実はわしゃあこの池の冬が好きでのう。

 

  毎年10月の声を聴くと早くもスタッドレスに交換して雪の便りを待っていたものじゃ。

 

 この池は道路際にあるからのう。ワシのような高齢者でもアクセスが楽なのじゃよ。

 氷結が始まるころから、季節が進んで全面結氷し、その上に雪が降ってそれが溶けだす頃まで、この池は様々な冬模様を見せてくれる。

 

 

ある朝。氷上に霜の花が咲いていた。

 

 やがて林の間からの朝の光りが差し込み、霜の花を照らした。

 

 間もなく全面氷結してしまうというのに、ほかのねぐらを早く見つけないと、このカモたちは路頭に迷ってしまうぞえ。

 

 

 

 

 

 

 突然、林の奥で何かが動いた。

 何と鹿じゃ!

 これが池畔にでも現れてくれたら、あの東山魁夷の名作「緑響く」の再現じゃぞえ!

 

 あの名画に描かれているのは白馬じゃが、この際、贅沢は言わないぞえ。わしゃあ鹿でも十分満足なのじゃ! 

 

 鹿殿よ。頼むから池の端まで来て、あの白馬のように歩いておくれ! 

 

 

  しかしワシの期待もむなしく、鹿殿は不審人物を見るような視線をワシに送って、仲間とともに林の奥へ消えて行ってしまったわい。

 

 返す返すも残念無念!えーん

 

 

わずかに残った水面に映ったお天道様。

 

 

  木々に積もっていた雪が突風で舞い散った。

 

 

 

 季節は進み、遂に全面氷結じゃ。カモたちはどうしたかのう。

 氷上には雪が降り積もり、岸の木々が影を落とす。

 

 

  あの小さな浮島も雪に埋もれていた。

 

    秋の浮島

 

 初夏の浮島

 同じ被写体でも季節で随分変わるわい。 異なった季節を比べて見ることが出来るのも写真の醍醐味の一つじゃのう。

 

 日没間近の浮島。

 

雪玉が転がり落ちてラインを描いていた。

 

 

 

夜中に鹿でも歩いたのかのう。

 

 雪に埋もれたレンゲツツジの木。お前の出番は6月じゃ。もうちょいと辛抱しておくれ。

 

 

 季節も進み…

 雪の便りも聴かれなくなったころ、久しぶりに出掛けてみると、氷はすっかり溶けて水鏡が見られるようになっていた。

 

 もうしばらくすると芽吹きが始まり、やがては新緑にレンゲツツジ、そして紅葉、氷、雪・・・・・・。

 

 こんなことを繰り返しながらまた一年が過ぎていくのじゃのう。

 

 

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