思い出写真 その12・乗鞍岳
2002年秋ー。
漆黒の闇の中を、車のライトが数珠つなぎになって登ってくる。
ここは乗鞍岳の畳平バスターミナル(標高約2700メートル)にほど近いエコーラインの道沿いじゃ。
この年は畳平までマイカーで登れる最後の秋じゃった(2003年5月からはバスまたはタクシーのみ通行可)。
マイカー規制がかかってしまうと、重い撮影機材を抱えるカメラマンには何かと不便になってしまうからのう。
じゃからカメラマニアのほとんどが、この年は最後の撮影行きという思いで登ってきたのじゃろうよ。すごい数の車が道路沿いに立錐の余地もないほど並んでいたわい。
ワシとしてもその年は何が何でも出かけなければと、大げさに言えば必死の思いで行ったものじゃ。
今回の「思い出写真」はそんなころの乗鞍岳の画像でお茶を濁すことにするわえ。
夜明け前。
それぞれが思い思いのポイントに三脚を立てて夜明けを待ち受けていた。
きれいな朝焼けが見られた時もあるが、いつもこんな朝ばかりではないぞえ。
むしろ期待外れの時の方が多いわい。
ダケカンバが朝焼けに染まった。
似て非なる画像が続くが、撮影した時間帯や年がそれぞれ違うからのう。色合いや空模様はまちまちじゃ。
わしゃあこのポイントが気に入っていたとみえて、何べん登って来ても同じ場所からの画像になっているわい。
朝の撮影が終わると、下山の途中で周りのダケカンバやナナカマドの紅葉などを撮影して歩いたものじゃ。
しかしこんな写真は定番中の定番じゃからのう。あまり面白くもないのう。
ところで乗鞍岳の麓には乗鞍高原という絶好の撮影ポイントがある。
折角ここまで来たのじゃから、ついでにこの高原を撮影して帰りたいところなのじゃが、大抵は素通りしてわが住処へ直行してしまったものじゃ。
何しろあの頃は仕事が終わるや否や夜通しかけて乗鞍岳まで登って行ったからのう。撮影が終わった頃には疲れ果て、高原の方まで撮影する元気はなかったんじゃろうのう。
現役の身では車中泊もなかなか出来なかったしのう。
車中泊しながらゆっくり撮影するようになったのはもうちょいと後になってからじゃ。
ともあれ、あれ以来、乗鞍岳の撮影は断念してしまった。
マイカー規制で不便になったことが一番大きな理由じゃが、そのほかには、あまりにも有名な撮影地じゃから、オリジナルな写真を撮るのは至難の業だと思ったことも理由の一つじゃったわい。
乗鞍高原方面から望む乗鞍岳。
今のわしゃあ、お盆休み最中の人混みを避けて、わが住処で冷房漬けの毎日じゃ。
暇つぶしにもっぱら昔の写真をほじり出して、「思い出写真」に専念してるわい。
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