道の駅で目を覚ますと、外は陰鬱な空模様。
しかし、風はそよともしない。嵐の前の静けさというヤツかいなあ。
朝飯代わりにパンをかじっていると、そこへ散歩の途中じゃろうか、犬を連れた地元の人らしいおじさんが通りかかったわい。
西沢渓谷の中に駐車場があるのか尋ねたら、大きな駐車場があると言う。
そのおじさんは帰りがけに、ワシにこう言い残したわい。
「今日は天気が悪いし、遭難者も時々あるから気をつけて」
「ありがとう」
わしゃぁお礼を言って見送ったが、ハナから西沢渓谷のような渓谷を歩く気なぞ毛頭ないし、例え歩きたくても82歳の年寄りが何十キロも歩けるわけがないんじゃよ。
ただ、カメラ雑誌やガイド誌で時々見かける西沢渓谷はどんなところか、入り口まで行って雰囲気だけでも味わいたいと思っているだけじゃ。
幹線道路から、標識のある狭い道へ入ってゆく。
誰もいない。
店らしきものもあるにはあるが、シャッターは降りたままじゃ。
広い駐車場があった。車は一台も停まっていない。
台風が来るかもしれないというのに、いくら物好きでも渓谷をトレッキングする人はいないんじゃろう。それこそ遭難してしまうぞえ。
独りぼっちの駐車場
駐車場付近から見下ろす
遊歩道の入り口だけでも見てみたいと思ったが、駐車場からは入り口まで登りの道がかなりあるようじゃ。ヤメじゃ。
雨が降ってきた。いよいよ台風の襲来かいな。退散じゃ。
こんな天候じゃあ撮影意欲も削がれてしまうわい。
どこを走ったのか覚えておらんが、雨の中を暇つぶしにゆっくりと走り巡り、チェックインの時間を待ちかねて、予約した石和のホテルへ駈け込んだ。
台風は日本海側を通過しているというのに、こんな内陸でもその夜は風雨の音で眠れなかったくらいじゃった。
ホテルに居てよかったわい。子供も心配して電話をくれたしのう。
つづく


