そのお客様は、最初からけんか越しではあった。
東京で6000円までのビジネスホテル、10分以内に探して、急いでるんや!
・・・恐れ入りますが、東京のどの辺りでお探しでいらっしゃっいますか?
場所?そんなん言わんと調べられんのか!もういいわ!
・・・申し訳ございません!すぐにお調べしたいので駅名をお願いします。
うるさいな~!品川。すぐに調べて電話しろ!
電話は切れた。
新幹線が止まるまで、品川駅周辺はビジネスホテルが少なかった。
春の研修シーズンで予想通りホテルの空きはなく、
山手線沿線の前後の駅を調べたが6000円以下など到底なかった。
取り敢えず10分経ったので、恐る恐る連絡をして妥協案を探る事にした。
ホテルがない!東京やったら山ほどあるやろ!
料金が高いて、わしも何回も東京行ってるから、あんたより知ってるんや!
場所か値段かどっちが優先て、それ言うたらすぐ見つけられるんか!
それでもプロか!ごちゃごちゃ言わんと、はよ探せ!
おまえの言い方がむかつんじゃ!
一言言うたびに勘に障るらしく、激怒された。
「なんで、今日はこんなに怒らせてしまうんやろ(涙)落ち着け落ち着け…」
折れそうになる気持ちを抑えながら、エリアを広げて調べ続けた。
調べている途中に、連絡が遅い!とお叱りの電話が入り
その電話を受けた同僚のオペレーターが「もの凄く怒ってはるで。
何をあんなに怒らせたん!」と心配するほどであった。
渋谷だったと思うが、6600円のホテルがやっと見つかり、
お叱りを覚悟で電話をした。
第一声は、“6000円までと言うたやないか!!”だった。
23区の西側のホテルを50件以上かけた事を説明し
これも早く予約しないとなくなりますと訴えたところ
「予約してないんか!どこまで気がきかん女や!」と更に怒鳴られた。
そして「ご予約はご本人様からお願い致します」と平にお願いする私に
「は~~」を大きなため息をつかれたきり、とうとう反応がなくなった。
電話で、相手のあいづちがなくなり、無言になられるのは最悪の事態である。
もうあかん・・・・・どうしよ・・・・・・・・・・・・・
長い沈黙の後、電話の向こうから「ねえちゃん、ごめんな・・・・」と
小さな声が聞こえた。
一瞬、何を言われたのか理解できなかったが、続いて聞こえた言葉で
やっと不機嫌だった訳を理解した。
ここにかける前に、仕事でちょっと嫌なことがあってな。あんたに当たってしもた。
これから東京に、何とか収めにいかなあかんねん。
・・・そうだったんですか。お仕事うまく行くようにお祈りしています。
ありがとうな。
お客様の声が、少し元気になったように思えた。