「ただいま戻りました」
慌てて家の中に駆け込む。
かすみが起きて泣いてないかだけが
すごく心配だった。
だけどやっぱりあの子はスヤスヤと
ベビーベッドで眠っていた。
ホッとして脚と肩の力が抜ける。
「もう!何なのよこの子は!
こんなちっちゃいうちから
三年寝太郎の血なんか
受け継がなくてもいいのに!」
「若奥様、お嬢様は一度
起きられましたよ?
ミルクではなくておしめの
方でしたけど」
佳世さんも苦笑している。
「可哀想だけど起こして飲ませよう
そしたらしばらく寝ないから」
私は寝ているかすみを
可哀想だけど揺すって起こす。
気持ちよさそうに寝ているところを
起こしたからしばらくグズって
ふにゃふにゃ泣いてた。
それでもおっぱいを口に含ませると
お腹は空いてたのかすごい勢いで
母乳に吸いつく。
「あはは、お腹は空いてたんだね」
欲求に忠実なとこを見て
クスッと笑いが込上げる。
「ホント、こういうとこは間違いなく
類の子だなって思うなぁ」
眉にかかった前髪を指先で
そっと避けてあげる。
私そっくりの黒髪のストレート。
見た目は私だけどよく見ると
類に細かいところが似てる。
飲みたいだけ飲ませて
ゲップをさせると満足したのか
パッチリ目を開けて私を見つめた。
「類~♪」
奥に引っ込んだ類を呼ぶ。
「何?」
「かすみ起きたよ?抱っこする?」
「うん」
類が自分の部屋から出てきて
娘を抱っこする。
お腹がいっぱいになって
機嫌がいいのか類に抱っこ
されても泣かなかった。
「かすみ、パパに抱っこして
もらってよかったね?」
顔を覗き込んで話しかけると
違和感に気づいたのか少しだけ
顔を歪めて愚図りだす。
「大丈夫よ?怖くないから
パパは世界一優しいんだから」
優しく言い聞かせるけどこんな
小さな子に分かるわけない。
我が子に泣かれて凹む新米パパは
懸命に娘をあやしている。。
その光景が面白くてこっそり
動画を録る。
バレたら怒られそうだけど。
無事に泣きやみ類の腕の中で
ゆったりと微睡むかすみ。
さんざん寝たあとだから
なかなか寝ない。
「お風呂に入れてみる?」
沐浴の時間になって私は彼に
やってみるかと訊いてみる。
「うん、やる」
おっかなびっくり受け取って
佳世さんに見守られながら
類はかすみをお風呂に入れてくれた。
私はその間軽く夕食を摂る。
バスタオルに包まれたかすみが
お風呂から出てくる。
お風呂が気持ちよかったのか
欠伸連発してる。
「あ、着替え」
「俺がやるからつくしはそこで見てて」
さっきよりはしっかりした手付きで
かすみを抱っこしながら着替えさせてる。
もちろん佳世さんに見守られながら。
着替えさせてもらった頃には
すっかりパパの抱っこにも慣れて
機嫌よくしてる。
かすみのオムツ替えるのも
ほぼ初めてなんじゃないだろうか?
そんな父子の様子を見て私は決めた。
この二人を離しちゃいけないって。
夜、お義母さんがお邸に帰ってくる。
私がお願いしたからだ。
類がかすみの子守りをしてるのを見て
お義母さまは目が点になってる。
「え?類くんやっと泣かれずに
抱っこできるようになったの?」
「違いますよ、かすみが成長したんです
とりあえずこの物体は害じゃないって
認識したんじゃないですか?」
そう私が返すとプッと吹き出す。
一頻り笑ったあと私は表情を引き締める。
「それでお義母さん私、かすみの予防接種が
終わったら一緒にフランスに行きます」
「え?」
「もし今ここで二人離したら
ダメだと思うんです、そりゃ住み慣れてる
日本で子育てした方が断然いいと思うけど
親がいるのに離れて暮らすのはやっぱり
違うと思うんです」
「……決めたのね、本当に良いの?」
「もう、かすみが生まれた時の
あんな想いは嫌です
私も類の家族なんだから
1人だけ省かれるのは嫌です」
「つくしちゃん!」
お義母さんは私に抱きついた。
お風呂に入ったあとかすみを寝かせ
ベッドルームで類と向かい合い
夕方決心したことを類へ伝える。
「本当に良いの?」
類に自分もフランスに着いてくと言うと
心配そうな顔をした。
「家族は一緒に居るべきでしょ?
私だって譲歩くらいするわよ?」
「……ごめん」
「良いの、私は類のお嫁さんでしょ?
離れて暮らすのはもう懲り懲り」
ニコッと笑ってみせる。
「ん、ありがと」
類は私を抱きしめながら軽く
唇にキスをする。
「ね?つくし…今夜はしたい」
類の視線が艶っぽく変貌する。
「ん、良いよ」
軽い挨拶のキスはいつもしてるけど
官能を誘うようなキスは久しぶりだった、