Lover's Concerto -10ページ目
類は静さんに着いてるのか
1ヶ月経っても帰ってこなかった。
その待ってる間に私のお腹は
臨月を迎える。
迫り出したお腹のせいで
思うように動けない。
明日はとうとう出勤予定日
という日になっても
類は帰国しなかった。
私のこと、忘れちゃったんだろうか?
それとも彼を二度と帰国させる
つもりないんだろうか?
代わりに帰国したのは……
おば様だった
フランスに離婚届を送付する。
これでも反応がなければ私は
彼にとってそれだけの存在だった
……ということだ。
エアメールを送った後、私は
ひとりぼっちで産気づく。
今までに感じたことのない強烈な
痛みに襲われる。
私に着いててくれたのは
美作さんのお母様。
たまたま様子を窺いに花沢家に
訪問していたときだった。
強い痛みに蹲る私をみて
おば様が車を出してくれた。
救急車を呼ぶよりも直接病院へ
連れていった方が早いと思ったらしい
「つくしちゃん!頑張るのよ!
もうすぐ赤ちゃんに会えるからね!」
おば様の励ましに額に汗を
浮かべながら必死に頷く。
類は私の出産予定日を
忘れちゃったのだろうか?
俺の事信じてって……
私と子供を俺が守るって
言ってくれたよね?
出産に立ち合うって言ってくれたよね?
あれからまだ数ヶ月だよ?
なんで帰ってこないの?
私のことはどうでもいいの?
痛みに耐えながら分娩を待つ。
とうとう、類の帰国は出産には
間に合わなかった。
1月の最後の日。
司と同じ誕生日に元気な女の子を
通常分娩で出産した。
私によく似た女の子だった。
でも顔のパーツはところどころ類。
色素の薄い髪の毛とか
色白なところも。
産まれるまで秘密だよと言ってた
名前を我が子に名付ける。
『かすみ』
ふにゃふにゃと弱々しく泣く
かすみにおっぱいを飲ませる。
小さな口で吸い付いて懸命に
口を動かすかすみが可愛くて
愛おしくてそっと抱き寄せた。
類が帰国したのはそれから
さらに1ヶ月後。
手に私が送り付けた離婚届を
類が握りしめて現れた。
私はその時授乳中だった。
思いきり胸を見られて慌てる。
ササッと隠して赤ちゃんを見せない。
「何しに帰ってきたの?」
冷たい声が出る。
「離婚届、送ったでしょ?出産に立ち会う
約束したのに……嘘ばかり…もう
生まれちゃったよ!そんなにあっちが
いいなら早く戻りなよ!今の私に
類は要らない!どっか行って!」
動かない類を見て私は赤ちゃんを
抱きかかえ部屋から出ていく。
里帰り用に纏めてあった荷物を
サッと持つと玄関に急いだ。
「つくし、待って!」
「名前呼ばないで!もう…別れるんだから」
肩を掴まれて振り払う。
「待って、お願いだから! 」
類の必死な顔に足を止める。
「ちゃんとケリつけてきたよ
もう、誰にも割り込ませない」
真剣な眼差しに頑なだった心が
少しづつ溶解する。
「……ホント?」
「全員で藤堂商事を助けることにした
俺は親の説得に張り付いてた」
やっとおじい様が無償で藤堂商事を
援助をすることに決めたようだ。
おじい様のご学友が静さんのおじい様で
類も懸命に説得したみたいだった。
窮地を知ったおじい様がやっと
重い腰を上げたようだった。
「じいちゃん、つくしのこと大好きだからね
あんな可愛い子を泣かせるくらいなら
ワシが動くって言い出して……」
それにと類がつけ加える。
次、つくしちゃんを泣かせるような
ことしたら離婚だってばあちゃんに
言い出してあっという間に決着ついた。
「……笑い事じゃないでしょ!
類のバカ!……心配したんだから!」
胸元を拳で少し強く叩く。
「……いて、悪かったってごめん」
不貞腐れる私を類は緩く抱き締める。
「……ゆるさない、寂しかったんだから
類語いなくてひとりで赤ちゃん産んで」
「見せて?」
腕の中にいたかすみを類に見せる。
腕の中のかすみはこんなに親が傍で
大騒ぎしてるのにすやすやと眠ってる。
「やなとこ似てるよね」
「やなとこってなに?それに寝る子は
育つって言うじゃん?」
「だってこの子こんなちっちゃいのに
起こさないとずっと寝てるんだよ?」
脳ミソ溶けないか心配よと言うと
類はクックッと笑い出した。
間違いなく俺の子だと類が微笑う。
「ねえ、抱っこさせて」
類がかすみをそっと抱っこする。
「こんなんでもちゃんと重いんだな」
「うん、でも抱っこ魔で腕が
寝かしつけは吊りそうなの」
「つくし」
「ん?」
「かすみを産んでくれてありがとう」
そう言いながら降ってきたキスは
優しく唇を掠めて行った。
48話
類を信じるって決めたから。
幼なじみを助けたいという
気持ちはわかるから。
4人で一緒に静さんに会いに
行くって言うから。
絶対に帰ってくるって言うから
私は類達をフランスへ送り出した。
類の左手の薬指には私に
贈ってくれたのと同じ
指輪をしっかり着けて。
みんながしっかりガードするって
言ったから私はその言葉と
類の気持ちを信じることにした。
私やお腹にいる娘を絶対に
裏切らないと信じて私は
F4をフランスへと送り出した。
本当は戻ってこなかったら
どうしようって途轍もなく
不安だけど私に出来ることは
一つだけしかない。
私の好きになった人は
絶対に私を裏切らないって。
必ずみんなと戻ってくるって。
結婚式まで挙げた私を
置き去りにしないって。
そんな人じゃないって。
今も信じてる。
でも神様は……。
私の味方をしてくれなかった。
いつもは類が見ているテレビを
私はひとりで見ていた。
彼の好きなお笑い番組。
あまり興味無いしただ点けて
ボーッと画面を眺めていた。
人気のタレントが司会をしている
クイズ番組。
すると突如入った緊急速報。
若い日本人の男女が数人
パリ郊外で暴走車に跳ねられ
重軽傷。を負ったというもの。
しっかり名前も顔写真も
報道された。
持っていたテレビのリモコンを
床に取り落としてしまう。
類!みんな…ッ!
彼らと一緒にいた女性というのは
静さんで間違いないだろう。
どういうこと?
詳細が分からないから
パニックになってしまう。
今回に限っては全員フランスだ。
誰とも連絡が取れない。
誰と誰が巻き込まれたのか
重症を負ったのは誰なのが。
全員無事なのか。
全然情報がない。
それに類の家族はみんな
不在で日本のお屋敷にいるのは
妊娠中の私だけだった。
押しかけるには危険すぎて
躊躇わずにはいられない。
すぐにみんなの無事を電話でも
いいから確認したいのに。
身動きが取れない。
その時、私の携帯が鳴った。
相手はおば様だった。
彼女はおじ様とフランスに
帰っていたのだ。
きっとあっちでみんなと
会ってるハズだ。
「はい、つくしです」
『つくしちゃん?ひとりで大丈夫?』
『はい、何とか…あの…テレビで
ニュース見ました…そちらで
一体何があったのですか?』
『あの娘、やってくれたわ
みんなで話し合いの後、人列に
突っ込んできた車から身を呈して
類を庇って…代わりに重症を負ったの』
息を呑んだ。
『責任問題になって…婚約がどうとかの
問題に発展したわ』
「そんな……類は私と結婚したのに…!
それを白紙にしろってことですか?」
『もちろん類がもう既婚者ということは
話したわ、一緒にいた司くんたちも
それは無理って証言した、子供も
もうすぐ生まれるって』
そこまでして類が欲しいの?
彼の手を先に離したのは
静さんの方なのに人のものに
なったら惜しくなったの?
ずるいよ、そんなの!
類はモノじゃないんだから!
彼女に背を向けたらその途端に
手段を選ばずに取り返そうと
するなんて卑怯者のすることだよ!
拳をぎゅっと握りしめて憤りの
気持ちを堪える。
『そうはさせないわ!つくしちゃん
扶の娘にならない?』
「え?」
『彼と養子縁組するの……そうすれば
私たちは貴女を手放さなくて済むわ
類とは兄妹になってしまうけど……』
おば様の提案は有難いけど類は
それで納得するだろうか?
「……考えさせてください」
_48/49
類とのハネムーン代わりの
別荘への旅行を経てパパとママの
所に寄って帰京した。
類がフランス勤務のことがあるから
ちゃんと両親にも挨拶に行こうと
提案してくれたのだった。
両親も祖父も大きなお腹を抱えて
現れた私に驚いていた。
結構な距離の移動にママが慌てる。
「まあ、つくし…類さん」
「それにしても大きなお腹ね」
ママは私のお腹を柔らかく撫でる。
「うん、もうすぐ予定日だし」
すると類が真面目な顔つきになる。
「報告が遅れて申し訳ありません
実はもうすぐ自分は渡仏するのです
不在の間、つくしさんをこちらに
預けることは可能でしょうか?」
「……類」
「ええ、構わないわよ
出産は初めてのことですし
この子も不安でしょう」
「家の親もしばらくはあちらに
行って不在なので傍に居られない
と言ってるので……」
類は私の為にママに頭を下げた。
「私は類の傍にいたいけど
お仕事じゃ仕方ないもの」
諦めたようにそう口にする。
「つくしが納得してるのなら
ウチは構わないわよ?でも
落ち着いたら迎えに来るのよね?」
「ええ、もちろんです」
ママはそれだけ類に確認すると
パパとおじいちゃんを見た。
「夫婦は一緒にいるもんだとは思うけど
類くんの事情もあるだろうから
落ち着くまでは構わないよ?」
おじいちゃんはそういう。
でも次の瞬間には厳しい顔つきになる。
「ただし、1年だけだよ?君だって
妻と子供と離れていたくないだろう?
必ず迎えに来ると約束しておくれ」
「はい、必ず」
類はおじいちゃんに返事をすると
固く握手を交わす。
それから帰ってきた進が加わって
家族みんなで食事をしてお暇した。
「泊まらなくて良かったの?」
「近いうちにまた会えるでしょ?」
「……そうだね」
私は重くなった身体をよっこらしょと
懸命に動かす。
「それよりも今は出来るだけ
長く類と一緒にいたいの……」
ブラブラしてる手に私は
懸命に掴まった。
「甘えんぼだな」
そう言いながら私の身体を抱き留める。
それから額にチュッとキスをする。
「へへっ」
類の腕に掴まり頬擦りをする。
「お前ら、外でイチャつくなよ」
呆れた声が背後から聞こえてくる。
「うるさいな、別にいいだろ?」
類はさらに抱き寄せる。
「キャッ」
何しに来たんだよ?と類は
たちまち不機嫌になる。
「まあまあ」
「まあまあじゃないよ!
邪魔しに来たくせに」
:
類は不機嫌そうに3人を睨みつける。
「いや……例のアレ報告に来た」
すると類の表情がキリッと引き締まる。
「つくしは奥で休んでて」
「うん」
急に不安が大きくなる。
それが顔に出たのかもしれない。
類は美作さんたちをリビングに通すと
私の腕を引いて寝室に連れていく。
「……大丈夫。一応、あの人は俺達の
幼なじみでもあるから何かあるなら
みんなで力になって助けたいだけ」
「……うん」
コクリと頷く。
「ちゃんと報告するから今は
気にしないで身体休めて?」
「……分かった」
類は私を抱き寄せて背中を叩くと
チュッと頬に触れるだけの
軽いキスを落とした。

