翌日、お屋敷に誰も居なくなってから
私達は家を抜け出すことにした。
司が迎えにフランスまで来てくれたから。
気まずかったけど義両親と類を会社に
送り出していつも通りに見送った。
今夜、もう一度ちゃんと話し合おう。
類はそう言い残して出勤していった。
私はそれに応じるつもりはないけど
仕事を休ませるわけにはいかないから
頷くだけに留めておいた。
3人が行ったあと私はお屋敷を
去る準備を始める。
人払いをして類に返す物の
準備を整えテーブルの上に並べる。
昨夜類に叩きつけた離婚届には
自分の分の記名、捺印をして
リビングのテーブルに置く。
薬指から結婚指輪を外し
エンゲージリングも隣に並べて置く。
携帯電話も傍に置く。
日本のお屋敷の鍵も傍に添える。
お義母さんに頂いた洋服や
アクセサリーも添えておく。
私にはもう必要のないものだから。
全ての準備を終えてお屋敷を出る。
お手伝いさん達には見つからないように
お屋敷から抜け出した。
子供達は相変わらず眠っている。
1人を背負いもう1人は抱っこ紐で
身体に括りつける。
こんな光景を見る度に類を
思い出すんだろうなと思うと
切ない気持ちになる。
でも別れるって決めたのは私。
振り返らずにお屋敷を出て
司が待ってる場所へと向かう。
さよなら、類。
大好きだったよ。
でも、私は類から逃げることが
できなかった。
「つくし、悪ぃな」
帰ってきた司がバツの悪そうな顔して
私の部屋に顔を出す。
「何?悪いってどうしたの?
何か嫌なことでもあった?」
「……そうじゃなくて、さ…類に
お前の居場所見つかった」
私は思わずゴクリと息を呑む。
「なんでバレたの?」
「お前のこと本気で探してたからだろ?
考え直せよ、アイツ、本気でお前のこと
愛してるんだから分かってやれよ」
客間に類を通したと言われ
居留守は使えないと悟った私は。
面会に応じることにした。
いくら何でも友人の家て
乱暴はしないだろうと思って。
そのくらいの理性はあると思った。
「私に何の用…かしら?」
「つくし!良かった…見つかって」
顔を合わせるなり無言で私の
身体を抱き竦める。
最後に会った時より窶れた気がする。
「戻って来て!俺はアンタじゃないと
全然ダメなんだ!」
「でも、あの雑誌の記事は…浮気したのは
本当なんでしょ?認めたじゃない」
「違うんだ!静には俺じゃない
本命がいるんだ」
「え?」
「俺はダミーの恋人になって彼女に
協力しただけだ!」
類と縁談が持ち上がってご両親に
その彼との仲を反対されて……
でも諦め切れない彼女は周りを欺くのに
頼み込まれで協力したと白状した。
何よ、それ……
「その為にあの子の出産無視したの?
理由は分かったけど納得できない!」
現にあの子は生まれてから
未だに父親と触れ合ったこともない。
「ごめん、悪かった」
「知らないもん!類のバカ!」
罵詈雑言吐いて罵っても涙声は
やっぱり隠せなかった。
「ねえ、こっち見てよ」
私は顔を見られたくなくて咄嗟に
「ねえ、こっち見てよ」
私は顔を見られたくなくて咄嗟に
類に背を向けた。
「類のこと本当に嫌いになるとこだった」
「…………悪かったから……
ねえ、こっち見て?」
「ヤダ!」
手を突っぱねて逃げだす。
けれど、すぐに捕まってしまう。
「俺は嫌だよ、離婚したくない!」
「……もう、顔も見たくない!」
捕えられた腕の中で懸命に
身を捩って抵抗する。
手を突っぱねて逃げだす。
けれど、すぐに捕まってしまう。
「俺は嫌だよ、離婚したくない!」
「……もう、顔も見たくない!」
捕えられた腕の中で懸命に
身を捩って抵抗する。
でも類の泣きそうな…懸命な顔を見て
少しだけ思い止まる。
至近距離に迫る類の顔。
両手を添えて撫でる。
見つめ合う形になった瞬間
両頬に添えた手で思いっきり
振り被って類の顔を叩いた。
パァンッ!
ものすごい破裂音が部屋の
中に響いた。
類はその場で痛みに蹲った
司が堪り兼ねて部屋に入ってきたくらい。
「これで許してあげる」
「おま…っ、いくら女の力でも
やり過ぎだろっ?
腫れてるじゃねえか!」
「私の痛みはこんなもんじゃなかったわよ?」
「うん、司、俺が悪かったんだから……
叩かれて当たり前なんだよ」
「……暴力嫁だな……ったく!」
「うっさいわよ、司、子供らここに
連れてきてよ」
「はいはい、人遣い荒いよな、お前は」
ブツブツ文句言いながら司は子供のいる
部屋に引っ込んでちょうど起きたらしい
二人を連れて客間に戻ってきた。
かすみはすっかり司に懐き甘えてる。
律は司の腕の中ですやすや眠っていた。
「こんなアンタに瓜二つの子抱えて
忘れられる訳ないでしょ?」
抱いてみる?
そう言うと類は恐る恐る律に
手を伸ばした。
律はおとなしく抱かれ類の腕の中で
また眠ってしまう。
「ごめん、つくし…俺この子に
取り返しのつかないことするとこだった」
「……わかってるなら、いい」
律の頬にキスをし頬擦りをする。
愛おしそうに子供を愛でる
父親の顔になった。
「かすみ?どこ行くんだ?」
司の腕の中から逃げ出したかすみが
よちよちと歩いて類の足元に行く。
「ぱ~!」
「良かった、憶えてたわね……」
類は律を私の腕に戻しかすみを
愛おしそうに抱き上げた。
その光景を見てホッと胸を撫で下ろす。
「……二度は無いんだから!」
「赦してくれるの?」
「私のことはいい、子供達は
もう二度と泣かせないで」
類は腕の中に家族全員を引き寄せ
腕の中に抱きしめる。
「分かってる……ありがとう、つくし」
かすみが受け入れたんだから
私は類を赦すことにした。