お師匠様に習った通り
翌日もわたしは護身術習得の
稽古を続けていた。
子供の頃から稽古をしている
二人は流石に形も綺麗。
道着を着て額に汗を滲ませながら
組み合っている二人の男達に
ちょっとだけ見蕩れてしまった。
「次は総二郎に相手してもらいなさい」
お師匠島は疲れたと言って
休憩に行ってしまった。
席を外したお師匠様の代わりに
西門さんに相手してもらう。
わたしは兄弟子に当たる西門さんに
果敢に挑んでいく。
彼はわたしの相手なんてきっと
チョロイんだろうな。
実際、何度技を仕掛けても上手く
躱されてしまう。
類に通じる裏技が全く効かない。
彼の場合は上目遣いで下から
見上げてやれば赤面して簡単にオチる。
そっと整った彼の輪郭を盗み見ながら
そんなことを思う。
F4って全員が無駄に美形だけど
わたし、耐性できちゃったから
あんまり見つめられても
動揺しないんだよなぁ
キスにしたって司や類とは付き合ってから
数え切れないくらいしてきたし
今さら彼ら相手に動揺もクソもない。
西門さんの場合は頼んでないのに
無駄にフェロモン撒き散らしてるし
美作さんに至っては女性の扱いに
長けてるからとにかく優しいし。
何かと面倒な類や司より美作さんの方が
相手に選ぶにはいいに決まってる。
そんなことを考えてたら急に
視界が反転した。
真上に天井が見える。
しまった!稽古中だった!
ちらっと類を見る。
ついでに組手の相手も見る。
二人とも呆気に取られてこっちを見ていた。
「つくしちゃーん?なに考えてた?」
至近距離で顔を覗き込まれて焦る。
「さっきからチラチラと視線感じてたけど
まさか俺に見蕩れてたとか?」
「そ、そんな訳ないじゃん
バカじゃないのアンタ!」
「ダメだよ、つくし総二郎なんかを
見つめてちゃ、妊娠しちゃう」
それを1番しそうなのはおめーだよ!
ふざけたことを言う類を背後から
蹴り飛ばしいつものように
頬っぺを抓る。
「酷いっなんでっ?」
「牧野?だから類をそんな虐待しちゃ
司化しちまうって」
もうなってるわよ!手遅れ!
「どこが虐待よ?類がバカだからでしょ?
躾よ躾!まあどっかの誰かよりは
ちょっとマシだけどね」
自分には同じに見えると言うと
類が態とらしく涙ぐむ。
「わたしが虐めてるみたいな
仕草するな、失礼な人っ!」
再度類の頬っぺたを抓る。
ぞんなに強くしてないのに
ちょっとだけ赤くなる。
少しやりすぎたか⋯。
身体を起こされて着いた埃を
払ってもらう。
「牧野、あっちで休んどけ」
私は西門さんの言う通り素直に
身体を休めることにした。
この人、要らんこと平気で言うくせに
ちゃんと人のこと見てくれてるんだよね
類は心配してわたしの傍にいたがったけど
拒むと力なく項垂れて西門さんに
引き摺ってかれた。
その後の類はすっかり生気を無くして
やられっぱなしである。
堪り兼ねて彼の傍ににいき
身体を起こしてあげると
耳元でカッコ悪と囁く。
「おい、さらに落ち込ませること言うなって」
西門さんに注意されたけど
構わず耳元で囁いた。
「頑張る類はカッコイイよ?」
そういうとあっさり回復した。
単純すぎてオモロい。
賑やかに稽古を終えてわたし達は
類の家の会社に出勤する。
午前中搔いた汗を流して出勤する。
徒歩だと類がサボるといいだしそうで
それを阻止するため運転手さんに
迎えに来てもらってる。
護衛にもなるし自分たちでできる
自衛策にもなっている。
思いがけず2人きりの時間をもてて
類は機嫌がいい。
相変わらずベタベタしては来るけど
このくらいならいいとは思ってる。
鬱陶しいとか言ったら泣きそうで
キツいことは言えない。
今日も迎えの車に乗るなり
引っ付いてきた。
だめだといってもきく訳ないから
着くまでは一応我慢する。
「⋯⋯行きますよ?専務」
役職で呼ぶと類はたちまち不貞腐れる
「まだ着いてないよ?」
「もう駐車場でしょ?これ以上
引っ付くならまた抓るよ?」
「いつも無断で抓るじゃん!」
顔をガードしながら類が騒ぐ。
もう面倒臭い!
仕方ない。
「類?こっち見て?類が会社で
いい子にできたら抓らないから」
「⋯⋯子供扱いすんなよ」
「いい子に出来ないの?」
「するよ!会社ては何もしたら
いけないんだろ?」
一応聞いてはいるようだ。
わたしは運転席と後部座席の間の
ブラインドを降ろし隠れながら
目の前の膨れっ面の子供に
キスをしてやる。
頬を染めて固まる類にわたしは
笑いながら降車の準備をする。
「行ってきます、後でね?」
類は相変わらず不意打ちには
弱いようだった。
真っ赤になって硬直しながら
わたしを見送る。
「不意打ちすんな、ずるいでしょ
こんなの⋯」
唇を抑えて乙女みたいな仕草をする。
そこが可愛いから止められない。