Lover's Concerto -28ページ目

Lover's Concerto

花より男子の二次創作ブログです。
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「「類……」」


私と道明寺は同時に彼の名を呟いて

その声が綺麗に重なる。


「……アンタの姿が見えないから

探してたんだ」


類はそういうと私から視線を

反らして道明寺を見据える。


見たことのない怒りを露にした目。 

 

「……俺は本当の気持ちを伝えただけだ」


「そんなの牧野を困らせるだけでしょ?

それにこんなときになっていうなんて

酷くない?」


今日の類はなぜか言葉の数が多い。

 本気で怒ってるみたい。


「類、やめて……私はあなたが好きって

いったじゃない、信じてくれないの?」 


一気にその場の空気が緊迫したものになる。

 

「だったらどうしてこんな風に

2人きりになるの?」


悲しみを湛えた目でじっと私を見る。

向かい合う私と類。


「……話があるからって誘い出したのは俺だ、類、牧野に当たんな」


背後から道明寺が加勢してくれる。

だけど類はそれも気に食わないらしい。


「おまえと付き合ってるから

ごめんってはっきり断わられたよ……。

無理強いするつもりはねえ

嫉妬するなんてお前らしくねえな、類。 

牧野ははっきりお前が好きだって

いってるじゃねえかよ……」


あの道明寺が大人に見える。


そしていつもは冷静沈着な

類が子供に見えて……。


なんだかおかしな光景。

 前と逆なんだもの…… 


「ごめん、道明寺、私たち
先に帰るね?」


溜め息交じりに私がそういうと

道明寺は笑う。


「困らせて悪かったな」


「……ううん、そんなことないよ
嬉しかった」


コレは正直な気持ち。


私は類が愛しいと思うから

道明寺を友達以上に見ることは

たぶん今後ない。


「それじゃ……出発の日に空港でね?

今日はお招きありがとう」


「おう、気をつけろよ」


心から笑えたとおもう。


だって、アイツは私を忘れたけれど

また好きになってくれたんだもん……。


思い出したわけじゃないけれど

本当に嬉しかった。


仏頂面のままの類の手を引いて

私たちはテラスを後にする。


お店を出ると類の腕の力が強くなって

逆に引っ張られる。


車に私のことを乱暴に押し込むと

急発進する。


私は突然の類の行動にぎょっとする。

いったい、どこに連れてく気なの?


いつもなら車なんかに乗った瞬間に

即座に睡魔に襲われる私だけど

今夜は頭が冴えててとても

そんな気分にはなれない。


類が何を考えてるのかわかんなくて怖い。


無言がそれに拍車をかけている。


怒らせてしまったのは私。


一瞬たりとも道明寺からの告白に

動揺してしまったのは事実だから。


それなのに類は絶対に私の手を

離そうとしない。


「……類、怒ってる?」


さっきから私を見ようとしない

類に話しかける。


「当たり前でしょ」


「バッサリ切り捨てられて私は黙り込む」 


「つくしは隙がありすぎなの。」


類が私を名前で呼ぶときは本当に

怒っていることに最近気付いた。


「……ねえ?どこ、いくの?」


ずっと気になってたことを訊ねる

でも類は答えない。


「誰にも邪魔されず2人になれるとこ」


にこっと笑ってるんだけど
目が笑ってない。

怖すぎる

私はこれ以上聞くのを諦めた。

かなりの時間がたって車が止まった。


「ここ、どこ?」


「ウチの別荘、入って。」


抑揚のない声。


「ねえ類、明日学校あるし……

もう遅いから戻ろうよ」


無駄な抵抗だと分かってていってみる。


別荘に入ってからもやっぱり一言も

発しようとしなくって息苦しい

空気が流れてる。


沈黙をどうにかしなきゃと

ソファーから立つ。


だけど……。


いくら回してもドアは開かなくって……

他のドアも同じだった。


窓を見ても……
ブラインドは
堅く閉ざされてて

小さく唸る換気扇の羽音が

不気味にきこえるくらい部屋は

静まり返っていた。


私は無言で類をしばらく見つめた後

ゆっくりと口を開いた。


類が何を考えているのか分からない。


「……類、どうして?

どうして鍵をかけるの?」


「あんたが逃げ出さないように。」


私はそのヒトコトで絶句する。


怖い……今まで見たことがない

類が嫉妬を露にした姿……。


刺すような視線からわずかに

目を逸らし私は口を開いた。


「ねえ!帰ろうってば!」


強く叫ぶように言うと類の視線が

また私と合わさった。


「……やだ」


たった一言の拒絶の言葉。 


「……類、いい加減にしないと怒るよ?」


「……つくしが悪いんだからね……」 


拗ねたような瞳をした類が私を見て

そういった。


「道明寺のこと?迂闊に2人きりに

なったのは悪いと思ってる」


「つくしが司に戻ってどっかに

いっちゃうんじゃないのかって……!! 

俺はむちゃくちゃ妬いてるんだ!」


私に向かって搾り出すように叫んだ後

類は私を抱き上げて
ベッドの上
に乱暴に降ろした。 


抵抗する間もなく押し倒されて

荒々しく唇を塞がれた。


怖い……こんな乱暴なキスされたの

初めてだ……。

いつもは触れるだけの小さなキスなのに。


「いやっ!類、ヤダよっ、やめて……!」


こんな華奢な身体のどこに

こんな力があるのっていうくらい。

押さえつけられて動けない。


「……つくしは俺のものだ……誰にも

触れさせない……」


類をこんな風にさせたのは私だ。

この人は今感じたことのない

感情に戸惑ってるんだ。 


……分かってる。


私は類のものよ?だから類の気が

済むなら何されてもいい……。


自分でも驚くほどの冷静な
声に驚いてる。 


不思議な程に抵抗しようと思わなくなった。


「なんでっ?!俺はアンタを

無理やり抱こうとしたんだよ?」


「私はここにいる、どこにも行かない

類が好きだから」 


ここにきて初めて視線が

正面から合わさった。 


私は押さえつけられていた手首を

払って身体を起こすと

泣きそうな顔で私を見てる

類に口付けた。 


「類、好きよ、私を信じて?」


女の方からこんなことするなんて

はしたないと思われるかもしれない。


私は体勢を入れ替えると驚く

類を押し倒していた。






道明寺は誕生日パーティーの後 

ニューヨークへと旅立つことに。


そのための送別会を開くらしい。


 バイトがあったけれどほぼ無理やり

 休まされて会場に引っ張ってこられた。


類も結構道明寺と同じくらいに 

強引なところがあってときどき 、

混乱させられる。


 だけど、あまり怒る気にはならなくて

 結局付き合っている自分がいる。

 類の手には大きな袋が提げられていて

はいっと屈託のない笑顔つきで渡される。

 

「着替えておいでよ」


 戸惑う私にそういって笑いかけてきた。 

 目の前にあるこれから入ろうとしてる

 レストランはどう考えても普段着で

 連れてこられた私がそのまま

入ってよさそうなお店ではなさそうで。 


たぶん、類はそれをわかってて

この紙袋を用意してくれたんだと思う。 


 でも……受取れない。


「……遠慮しなくっていいから 

それつくしのサイズに合わせたんだから 

アンタにしか着られないよ?」 


 私の考えを読んだのか類はそういって

 私の腕を掴んで店に入っていく。


 入り口で店員さんと何かを話したあと 

奥に案内された。 


「着替えておいで、メイクは 

アンタの後輩に頼んだから』 


 後輩って……桜子のことだよね?


 本当に、用意周到なんだから……

呆れつつも彼が私のために気を 

回してくれたのが嬉しい。


 紙袋の中身をおずおずと身につけた 

頃合いを見計らって桜子が入ってくる。

「先輩、着替え終わりましたか?」


「うん」


「それじゃその鏡台の前に

座ってください。」 


桜子はそういって私を鏡の前に 

座らせると慣れた手つきで

私の顔を弄りだした。

「先輩花沢さんと付き合ってるんですか?」 


手を動かしながら桜子は質問してくる。 


「……うん。」


嘘をいっても仕方がないから

正直に返事する。 


「先輩、貴女って本当に学習能力

 ないですね……忘れていませんか? 

花沢さんも道明寺さんと同じ

 世界の人間だってこと・・・」 


 桜子の口から溜め息と一緒に 

漏れてきた言葉に我に返る。


あっ……、忘れてた、ううん……

分かってたけど 考えないようにしてた。


「でも先輩が幸せそうに笑ってるなら

 私は応援しますから。ずっと…… 

笑ってくれなかったじゃないですか? 

私はそっちの方が寂しいです」


鏡に映る桜子が寂しそうに笑う。

心配させてたんだ……。


チクリと胸の奥が痛む。


「ありがとう……桜子」


声に出したとたん鏡の中の

桜子は頬を染めた。 


「やだ……照れるじゃないですか!」 


可愛い、と私は初めて桜子に

その感情を抱いた。


私は知ってる。桜子の初恋の人が

道明寺だってこと。


どんな思いで私たちを見てきたのかを 

思うとやっぱり胸の奥が痛む。 


滋さんも・・・婚約破棄までして

私たちを応援してくれた。


「花沢さんってよっぽど先輩のことが

お好きなんですね、その服だって

私と滋さんに先輩に似合うの選んで

欲しいって頭下げに来たんですよ?」 


初めて聞いた。 


私にしか着られないっていうから

どういう意味だと思ってたけど

そういうことなんだ……


彼のさりげない優しさに頭が熱くなる。


 「はい、できましたよ!」


 「ありがとう……」


鏡の中の私は別人みたいで桜子の

腕のよさがうかがえる。


「さ、行きましょ、皆さんお待ちですよ?」 


微笑む桜子に促され私は部屋を 

出てみんなが集まってるという 

VIPルームへと移動した。


「おせーよ、おまえら!」


焦れたように叫ぶ西門さん。 

桜子に寄り添われて部屋に入ってきた

私を見て絶句してた。


「つくしー可愛いっ!」


滋さんが間髪入れずに抱きついてくる。


あまりの勢いに思わず身体がよろけた。


慣れないヒールを履いていて

 それでなくてもバランスが悪かったのに。

類が間髪入れずに抱きとめてくれて 

どうにか免れた


 「あ……ありがと。」


急に抱きしめられて目覚めた

日のことを思い出す。

意識しないようにしてるのに

全身が熱くなってきた。


「……おい、てめえら、なに2人の

世界作ってんだよ。」


西門さんがこめかみをピクピク

させながら低い声でそういってくる。


気付けば私は類の膝の上に座る

格好になっていた。


ゴメンと退こうとしたのに類は

腕を掴んで離さない。

強く引かれてバランスを崩して

また彼の胸の中に突っ伏す。


「ちょっと!類っ!」 


私の抗議の声は類の口にした

言葉で封印される。


「いいじゃん、牧野は俺のものなんだから」


至近距離、しかも耳元でこんなこと

囁かれて平常心で居られるわけがない。 


自分でも分かるほどに私は顔を

火照らせていた。


 顔から湯気が出るって……

こういうこというんだよねって

思ってしまったくらい。


恥ずかしくって俯いてしまった。 


「ハイハイ、頼まれても手は

出さないから安心しな、それよりも

見せつけんな、今日の主役は司だろ?」


揉め事はうんざりだというように

西門さんは言う。


類が腕の力を緩めた瞬間に私は

そこから抜け出した。


彼の独占欲?は日を追うごとに

増幅してて最近じゃ登下校は

もちろんバイトにまで送迎してくれる。


2人きりのときはいいけれど

みんなの前でこういうことするとは

思わなくてちょっと吃驚した。


密着状態からは抜け出したけれど

しっかり手は繋がれている。


離れるのは諦めた。


「そういえば道明寺は?」


主役の姿が見えないことに気がついて

私は訊ねた。


「少し遅れるってよ。」


「そう……」


「あっちで飲もうぜ。」


いなくてがっかりしたような寂しいような

複雑な気持ちになる。


しばらくして道明寺がやってきた。


みんなすでにほろ酔い状態。


私はまだアルコールには手を出してない。


類が珍しく酔っている。


この人酒が入ると人格変わるんですけど?

そんなことは今に始まったことじゃ

ないのを思い出す。


「………まともなのはお前1人かよ・・・」


深い溜め息とともに呆れた

表情で声をかけて来る道明寺。


「……そうみたいだね。」


さんざん絡まれて私は一滴も

飲んでないのに疲労困憊だった。


「ちょっと出ないか?」


道明寺は飲み物を作るとグラスを持って

テラスに出ようと促した。


「うん……いいよ、ちょっと待って」


自分のグラスにお茶を注いで

同じようにグラスを持って

道明寺の後についていく。


道明寺の後姿なんて見慣れてたはずなのに

懐かしい気がする。


こんな風に穏やかに会話を交わせたのは

久しぶりな気がする。


記憶のない道明寺はいつも私の

存在を疎んじてたし私は私で

冷たい目で見られるのが嫌で

同じ空間に居ることを避けてたから。


私がヒールの高い靴を履いてることに

気付いたのか歩調がゆっくりになる。


自分に合わせてくれてるんだと

わかってちょっと感動した。


テラスに出て2人外に向いて

隣り合って腰掛ける。


「……留学、おめでとう頑張ってきてね」


「おう、サンキュ」


カチンとグラスが鳴る。


「ゴメンね……まともなのが私だけで」


「いや構わねえよ。それにしても

主役が来る前にできあがってっか?普通?」


「あの人たちに普通を求めてもね」


溜め息と共に漏れる苦笑交じりの言葉。


不思議だ……ちゃんと別れるまでは

声をかけることもできなかったのに。


今は普通に話せてる。


少しだけ昔に戻った気分。


ちゃんと笑えてるかな……私。


「前はアンタが一番普通じゃなかったよ?

それを思うと成長したなって思う」


「どういう意味じゃ、そりゃ」


道明寺の顔に浮かんだ笑顔は

以前と変わらない。


漆黒の瞳に私だけを映してたあの頃と

懐かしいのに私達の間には見えない

距離がある。


その距離を感じて少しだけ寂しくなった。


「何年くらいあっちにいるの?」


感じてしまった寂しさと距離を

思い出さないように私は尋ねた。


「わかんねえ、5年いるかもしれないし

それ以上かもしれない。」


そういって空を見上げる道明寺。


その横顔をチラリと盗み見る。


決意の表れた横顔。


それがとても固いことを感じるけれど

寂しさも同時に感じ取れた。


そうだよね、生まれてはじめて

みんなと遠くに離れるんだものね……。


「……頑張ってよ、バカな跡取りが

跡継いだらアンタん家おしまいよ」


「お前……そりゃ応援してんのか

バカにしてるのか?」


ちょっとだけ道明寺の眉がぴくっと動く。


その顔も久しぶりに見る。


「両方よ」


自然と笑いがこみ上げる。

道明寺も怒った顔をした後に笑っていた。


そして・・・こんなじゃれ合うような

会話もしばらく出来ないことに

さっきよりももっと強い寂しさを

感じてしまった。


「……牧野、俺さ、さんざん酷いこと

いってきたけど今はお前のこと

ウザいとかおもってねえよ。

お前に避けられるようになって

どこか寂しくなった。」


淡々と自分の気持ちを語る

道明寺の言葉が遠くから

聞こえるみたい。


「お前にさよなら言われて気づいたんだ

自分の気持ちに……」


えっ?と振り返って道明寺の

顔を見つめる。

何度も見た道明寺の真剣な顔。


「お前が……好きだ。」


どくんと胸が大きく鳴る。

何……なんていったの?

道明寺が……私を好き?


「俺が忘れてるのはお前なんだろう?」


そうだけど……その通りなんだけど。


「夢の中に出てくる女とお前がダブるんだ、必死に俺の事呼んでる」


何で、こんなに揺れるの?

私は類と一緒に居るって決めたじゃない。


「ごめん……私は類と付き合ってる

だから、ごめんなさい。」


動揺を振り切るように私は答えた。

私は切なげな道明寺の顔を見て

胸が苦しくなってこれ以上

見てらんなくて頭を下げた。


「……牧野の言うとおりだよ

それに今さらそんなこというなんて

ずるくない、司?」


背後から声が聞こえてきて

私は息を呑む。

さっきまでベロンベロンに

酔っていたはずの類が

酔いは完全に覚めましたと

いう顔をして私達の後ろに立っていた。