リビングに通され暖かい
ハーブティを煎れてもらった。
一口飲むとふわりと香りが広がる。
「美味しい」
「そう良かったわ?少しは
気持ち落ち着いたかしら」
「はい……突然押しかけて
申し訳ありませんでした」
私はおは様に頭を下げる。
「どうしてウチに?」
「あの…今回の情報を教えてくれたのが
あきらさんで……彼に聞けば
詳細を教えてもらえるかと思って」
俯いたままここに来た理由を答える。
「類さんが突然帰って来なくなったんです
電話も通じないしホットコールは
全然繋がらないしあの日だって……
衣装合わせの予定急に延期されて」
言いながら涙ぐむ。
「私と結婚式するの嫌になったのかな?
子供出来たの本当は迷惑だったのかな」
「……そう思ってるところに
あの報道を見たのね?」
逆に訊き返されてコクリと頷く。
「どうしてフランスにいるの?
私との約束は?なんで私の
ところに帰ってこないの?」
涙がボロボロ零れて頬を濡らす。
「きっと静枝さんのせいでしょうね」
おば様の言葉にハッとする。
まだ花沢の実権を握ってるのは
お祖母様だという。
どんなに抗っても実効力は社長より
強大だろうと言われた。
あの人は私に類とのことは
認めないとはっきり告げた。
「つくしちゃん、類くんに会いたい?」
「会いたいです」
はっきりと告げる。
まっすぐおば様の目を見て頷いた。
「あきらくん」
おば様はドアの外に向かって
声をかける。
呼ばれて現れたのは美作さんと
行方不明だった類だった。
「なんで……」
「ごめん」
「ばか!心配したんだから!」
「こいつ、大学の中で誰かに拉致られて
俺が追いかけていったんだ」
拉致られた?
「無理やりパリへ連れて行かれて
そこで強制的に静と見合いを
させられそうになった」
「あきらくん阻止できたのね」
「うん、まぁ……」
「あの写真は……その時のシーンを
切り取ったものってこと?」
「そうなるね」
「自分から会いに行った訳じゃ
ないってこと?」
「うん、ごめん……俺が迂闊だった
あの婆さん舐めてかかってたから」
「もう類の親父さん動いてるよな?」
「たぶん動いてくれてると思う
あきら、おばさん……つくしも
迷惑かけてすまなかった」
類がみんなに頭を下げた。
憔悴しきったその横顔には
疲れが滲んでいた。
「類くん、つくしちゃんと……
この家に住みなさい
東屋、あるでしょう?そこを
新居に改築させるわ」
おば様の申し出に私達は目を見張る。
「たぶん次はつくしちゃんを直接
狙いに来るわ……大学も彼女と同じ
リモートにして家から出ないこと」
ここなら常に人の目がある。
フワフワした印象だったけど
おば様のそれは『女主人』の目だった。
有無を言わせない雰囲気に全員息を呑む。
「荷物は商人に持ってこさせよう
マンションには帰らない方がいい」
類はそういうと私の目を見る。
私も類の目を見て頷いた。
司と西門さんが慌てて美作家に
駆けつけた。
「何気あったら困るから優紀ちゃん
家にも見張りつけてある」
西門さんにそう言われて息を吐く。
「大丈夫か?類」
「まぁ、なんとか」
「……ウチのバ…母親が動いた
つくしの後見人になるそうだ」
「司の母ちゃんが動けばさすがに
手を出せないだろうな」
「ごめん司、迷惑かけて」
「結婚式、日程調整とか言ってる
場合じゃないぞ?さっさと挙げちまえ
その間に生まれたらどうすんだ」
「さらに早めるってこと?」
「ドレスは当日決めるとかで
いいんじゃね?」
とにかく全部前倒しにしちまえ
みんなで私たちのために
話し合ってくれてる。
それが嬉しくてただ涙組む。
みんなを直視出来なくてそっと
視線を逸らして涙を拭う。
話し合いが終わる頃には
美作家に間借りして類も大学は
リモートに変更。
結婚式は前倒しで予定より早く
挙げるということが決まった。
解散して類が私のところに来た。
早く休めと言われて私だけ早抜けして
部屋に引っ込んだんだけど
眠れる訳もなくて起きて待っていた。
遅れて客間にやってきた類は
酷く疲れた顔をしていた。
「つくし、起きてたの?」
「寝れる訳、ないじゃん!
ずっと帰り待ってたんだよ?
良かった、また会えて
類が居なくなったらどうしようって
静さんのとこ行っちゃったら
どうしようって思って……」
ボロボロ涙が頬を伝う。
「ごめん」
みっともないくらいに号泣する私を
類は力いっぱい抱きしめた。
その日疲れてるはずなのに
類はいつもより丁寧に
私を愛してくれた。