この日も説明会参加のため、まだ日が出ていない時間に眠い目を擦りながら起きた朝。
人間も動物なのだから、太陽が沈むと同時に寝て、太陽が昇ると同時に起きるのが道理なのではないだろうか、などと考えながら、スマホをいじる。
この日の朝は憂鬱であった。
というのも、大学の後期の成績が発表されるのがこの日だったのである。
2単位以上の落単で4年次の授業持越しが決定される状況下で、単位を貰えるか危うい科目が10単位分くらいあったので、もはや絶望的と考えていた。
発表の時間と同時に、恐る恐る結果を確認。
なんとフル単。
高校時代に「我が校88年の歴史で5本の指に入るほど悲惨な学力」と教師陣に言われた男が、大学という舞台で才能を開花させてしまった。
フル単が意味することは、4年次はゼミ以外に特に大学で講義を受けに行かなくても良いということである。
この喜びをいち早く煮卵に告げる。
そこには、理系で死ぬほど忙しい思いをした池田と、留年した川口・渡辺が待っていた。
「来年度講義に出なくて良いという意味が分からない」
「何のために学費を払っているのか」と非常に強い口調で罵倒された。
彼らの言うことは確かに正しいが、まずは褒めてほしかった。
正直、この時点で寝てしまえば今日という日は最高の一日で終わるのだが、そういうわけにもいかなかった。
この日は、超ホワイト企業ということで有名な、某IT企業であるG社の説明会が開催されるのだ。
ウキウキで就活用の私服に着替えて説明会へ。
「スーツで来なくても大丈夫です」という言葉は、この時期スーツを使い込む就活生には凄くありがたい。
たまにこの言葉を深読みしすぎてスーツで来る人もいる。
しかしこれはまだ良い方で、この日の説明会にはフード付きのパジャマのような恰好で来る人がいて驚いたのが凄く印象に残っている。
説明会は、人事の「金曜日は私も15時までには帰ると決めているので、早めに終わらせますね」という言葉通り、ハイペースで進んだ。
最後に社内見学があったのだが、そもそも社員が半分以上いなかった。
社内にいた社員も、コーヒーを飲みながらスマホをいじってソファでくつろいでいたりしてた。
人事曰く、「うちはフレックスタイム制なので、金曜日はみんな朝一で出勤して、正午には帰ります。実質毎週2.5連休です。」とのこと。
また、「残業している人は負け犬」「うちでは仕事を早く終わらせて早く帰ることが求められている」と言い放った。
ホワイトを自称する企業は数多くあれど、この会社は本物だと思った。
良い意味でショックを受けつつ帰宅。
ここの選考はガチで行こうと思った。
なおこの日、煮卵・池田は研究室の送別会を終え、いよいよ学生としての終焉を迎えたのこと。
ついに煮卵から社会人が出るのか…という何とも形容しがたい気持ちを抱いた。
その後、後日開催されるリアル脱出ゲームの予定を決めてから就寝したのである。
-----2024年3月9日の私より-----
このG社の説明会には本当に衝撃を受けました。
本当に社員が死にそうな顔して働く姿が想像できないようなオフィスでしたね。
そもそも当時の自分がITに全く詳しくなかったので、業界研究の意味も込めて参加したのですが、ここは今振り返れば入社しても良かった会社だなぁと感じています。