懐かしいベルギーの空港に降り立った
警官が銃を持って警備している様子さえも懐かしく感じられる
(EUとNATOの本部があり、テロへの警戒は並大抵ではない)
昔の会社の仕事場に赴いた
ベルギー人の元同僚たちは、皆が笑顔で歓迎してくれた
半年ぶりの再会を心から喜んでくれた
そしてかつての日本人の上司の部屋に入った
待っていたのは氷の微笑みだった
「よく裏切ったね」
そう、何を言い訳しようとも裏切りには違いない
ヨーロッパでの経験を生かして日本で力になってくれると期待されていたのに
(しかし、ヨーロッパ課を外されて自棄になったのも原因であり、事実だった)
自分がいなければこの部署は大変なことになる
そう信じていた
‥よくある思い違いだ
新たに駐在した後輩が自分なりに努力して新しい世界を築いている
まるでかつての自分の姿を鏡にうつしているようだった
その夜は元同僚達と痛飲した
(いったい何をしてるんだ
また彼らとこうして一緒に働けるチャンスを捨てちまったんだぜ
何を考えてるんだよ
何を求めているんだよ
大切な何かを失って、いや捨てちまったのかい)
翌日、傷ついた何かをひきずりながらロンドン・ヒースロー空港に着いた
途中まで電車に乗り、そこから車で初めてウエールズに乗り込んだ
かつての炭鉱で栄えた街が廃れ、夕闇に廃墟が続く道を進む
行く先は取引先大手の日本企業だった
そこに末端の部品を納める小さな下請け業者の代表として
(かつてBT=英国版NTT、に電話を収めるコーディネータとして活躍した自分はどこに行ったんだ
いや、こんなことわかっていて転職したはずだろう)
しかし何かが違う
海外に拠点を置いたとしても取引先はドロドロした日本企業が相手だ
(支社長といっても‥
これが求めていたことなのかい)
ただ、技術的な打ち合わせをしている時だけは、かつての生き生きした自分がいた
もう一度、もう一度だけチャンスをさがそう
まだ自分を待っていてくれる世界があるかもしれない
帰国の機内で心に決めた自分がいた
後悔と葛藤にさいなまれつつ
(第三話へ続く)
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英語レッスンの記事はこちらに引越しました。