訳詞図書館/エピソード編⑩⑪⑫ | カフェ・コンセール・エルムのブログ

カフェ・コンセール・エルムのブログ

名古屋市千種区吹上にあるシャンソニエ『cafe concert ELM』のスタッフブログです。
ライブ情報だけでなく、シャンソン情報、イベント情報、はたまたスタッフの小話など色々更新していきます♪

エルム・スタッフのアヤネです★

 

 

訳詞図書館/エピソード編は、作品の法定訳詞者である加藤修滋さんが作品への思いや登録となった経緯などをあれこれお伝えするブログです(*^-^*)

自宅療養している加藤さんの手元には資料もないし、インターネットで簡単に検索することも出来ないのに、毎回すごい量の手書き原稿がビックリマーク

それだけ、深く深く頭と心に残っているという事ですね◎

 

 

 

それでは、今日は⑩~⑫までの6曲をご紹介キラキラ

 

◆「幸せへの言葉~嫁ぐお前に~」

どうして日本では父と娘の歌があまりヒットしないのでしょう?

Enrico Maciasによるこの作品は、Enricoの父へのオマージュ「Papy」と共に彼の代表作。この楽曲は結婚を前にした父娘が交わした会話そのものが歌になったものです。

僕が日本語詞を書き、菅原洋一さんと松本幸枝さんのデュエットでCD収録が決まった際、2番の「…いつでも訪ねて来るから」となっていた部分を、菅原さんが「…訪ねて行きます」と直されました。他にも、菅原さんは私のオリジナル曲「ラストリサイタル」のイントネーションを「それは名古屋弁だよ」と指摘して下さいました。菅原さんはこうして共に作品に対し向き合って下さる心強い存在です。

 

 

◆「ジュヴォヤージュ~旅立ちの時~」

こちらも日本では少ない「父と娘」の歌で、エルムにとって最も大切な作品のひとつ。カフェ・コンセール・エルム20周年に対し、Charles Aznavourから「Vingt ans c'est l'age ou tout s'eveille.L'age de l'ouverture sur l'avenir. Je vous felicite pout cet anniversaire et vous souhaite des annees de bonheur et de chansons pour longtemps encore」と祝辞を頂き、それをパンフレットの表紙に掲載したところまた感激の手紙が!そして、彼が娘Katiaと収録した「ジュヴォヤージュ」を“新たな旅立ちを祝ってあなた方の手にこの作品を委ねます”との言葉。そして私は、サブタイトルに~旅立ちの時~を付け加え、法定訳詞登録となりました。

 

 

◆「モネの庭」

この楽曲は私が当時流行していた16ビートで作った曲に、Gerard MorelとJacqueline Dannoが詞をつけ、Herve Sellinがバラード調のアレンジをして出来上がった日仏合作シャンソンです。「まどろみの庭……バラ……睡蓮の花……菩提樹……グラジオラス」と視覚に訴えるだけでなく嗅覚も動員する意表を突いた詞に、Morel氏とJacquelineの非凡さを感じます。Herveのたった2小節に込められたイントロの素晴らしさも見事。視力が衰えた画家Claude Monetの状況を「薄靄のヴェール」と表現し、「ジヴェルニーのこの庭、モネの魂と共に」と美しく結ばれ、モネ財団の公式イメージソングとしてCD化されました。ジャケットに日本のとある美術館が著作権違法だとクレームをつけましたが、本家本元がお墨付きを与えて、フランスの制作会社「タニット」が勝ちとなったエピソードが残っています。

 

 

◆「声なき歌」

2007年・2009年と2年にわたってシャンソン大使を務めたVeronique Pestelは、常に裸足でピアノ弾き語りスタイル。NHK・TV出演の折、アナウンサーに理由を問われ「大地のエネルギーを足の裏で感じつつ演奏しています」と哲学的回答。

Gilbert Laffailleの作詞・作曲作品で、日本では唯一の彼の作品として知られています。「ブルース、ゴスペル、ファド、レゲエ…」と特長的な各国の歌い方を述べ、「ゆがんだブリキ缶のドラムを叩く」の言い方は、例えば貧しいアルゼンチンの子供たちがサッカーボールのかわりに丸めた新聞紙で練習するのと同様の現象。歌そのものに哀しさは前面に出ていませんが、子供を背負いつつ働かねばならない女性と過酷な肉体労働を要求される男性は、水すら満足に飲めない炎天下のシーンが目に浮びます。それを救うのは日本でいえば美輪明宏の「ヨイトマケ」を想起する「歌の力」だと言えるでしょう。

 

 

◆「恋は一日のように」

Yves Montaneの作詞。ひと夏の恋、当然歌の中に出て来る二人は幸せな結婚に至らなかった訳だが、その人間模様を見事に曲として表現しているのがCharles Aznavourの手腕。

「朝と共に訪れた恋は、夜と共に消えてしまった」と言うのは、正直に受け取るのでなく、今当時を振り返り「夜になると今もつい思い出してしまう」と言うニュアンスで歌ってほしい。

実はCharlesに会った時、この曲の表現について質問をしたことがあったのですが、同行の通訳から「質問をはぐらかされたので、彼自身の経験談かも知れませんね」と言われました。

 

 

◆「ジュ シャントゥ」

私たちが日本に紹介したMichel Jourdanの作品「愛の響き~人生はアズナヴールの歌と共に~」に次いで知られたのがこの曲。歌ったのは人気テレビ番組「La Chance aux chansons」で人気を博したMarie Lazaro。

Michelが最後に愛した女性(と彼は言っている)が、それ以前に経験した実話を歌にしたんだそうです。という事はとっても大人の歌。「愛が生まれた…閉ざされて凍りついていく」誰にでもそんな過去はあったでしょうね。

「人生というサーカス小屋」という言葉で思い出すのは「ピエロ」(余談ですが合唱曲「月光とピエロ」の中にも「泣き笑いして我がピエロ」との表現あり)。作り笑顔で寂しい気持ちを内に押し込めて、そしていつか再び結ばれるその日が来る事を夢見るわけです。Marieと何があってもずっと一緒にいたいというMichelの思いも込められていたのでは。二人を見ていてそう思いました。