「えっ、なんだ、これ?」
目をつぶりシェリー・ブレンドの味を確かめる高山の前に浮かんだのは、止まっている時計。いや、時計が止まっているのではない。時間そのものが止まっている。
そのとき、ふとこの言葉が浮かんできた。
「過去を悔やむな、未来を憂えるな、今を大事に生きろ」
その瞬間、時は再び動き出す。
「高山さん、どんな味がしたんですか?」
この言葉でハッと我に返る。そうだった、今はカフェ・シェリーにいるんだった。
「過去を悔やむな、未来を憂えるな、今を大事に生きろ。これ、確かこの前ここで聞いた言葉でしたよね」
高山は今思い出した言葉を口にしてみた。
「はい、私がそれをお伝えしましたよね」
「実はこの言葉が浮かんだんです。私の悪い癖で、つい未来のことを憂いてしまう。先のことに対して不安が襲ってきちゃうんです。そして過去にやったことを悔やんでしまう。妻からは慎重すぎるなんて言われますが」
「確かに、高山さんってすごく慎重ですよね。オレなんてちゃらんぽらんだから、思いついたら考えずにすぐに行動しちゃうもんなぁ。だから妻からもっと高山さんを見習って考えてから動きなさいってよく叱られますよ」
飯塚は笑いながらそう言った。
〜おしらせ〜
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