道房はマスターのこれまでの生き方に心酔している。自分も同じように何かをつかんでみたい。そう願っているのだ。
「でも、オレは何をつかめばいいんだろう?マスターにとってのコーヒーのようなものを持っているわけでもないし。今までとにかく新規営業でお客さんをつかまえることだけに必死になってきた。でも、そのやり方は安西、お前との勝負で否定されたわけだし」
「先輩、俺は否定をしたわけではないです。業界によっては先輩のやり方の方が正しいってこともあるんじゃないですか?」
「オレのやり方が正しい業界?」
「はい。例えば住宅営業なんていうのはそうじゃないかと。一人のお客さんが何件も家を建てるわけじゃないんだし。次々と新規のお客様を獲得していく必要がありますよね」
「なるほど、そう考えるとそうかもしれないな」
「だからといって、契約をしたらそのお客様をほったらかしにするのはまずいかと思うんです。家が建つまで、いや、家が建ってもなにかしらの関わりを持つことで、信頼できる会社だと認識してくれるんじゃないでしょうか」
「そこなんだよなぁ、オレが苦手とするところは」
道房は腕組みをして考え始めた。
「あ、私すごくいいこと思いついた」
〜おしらせ〜
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