安西は急いで手元に残っていた仕事を切り上げ、十時に間に合うようにカフェ・シェリーへと足を運んだ。
カラン・コロン・カラン
木の扉を開くと、心地よいカウベルの音。
「いらっしゃいませ」
同時に聞こえてくる女性の声。そして少し遅れて男性の「いらっしゃいませ」の声。
「こんにちは」
安西があいさつをするやいなや、のりこがすぐに安西に気づいた。
「先日羽賀さんに相談をされていた方ですね。どうぞ、窓際のお席へお座りください」
時間的にちょうど合間になっているのか、客は安西一人だけだった。促されたとおりに窓際の半円型のテーブル席に座る。ここは前回来たときと同じ席だ、と安西は思った。
「羽賀さんから伝言です。少し遅れるので、先にシェリー・ブレンドを飲んで待っていてください、とのことです」
「シェリー・ブレンド?」
「はい。お客様は前回はキリマンジャロをお飲みでしたよね。ぜひ当店のオリジナルブレンドを飲んでみてください。シェリー・ブレンドには魔法がかかっているんですよ」
「魔法?」
「はい。飲んでみてからのお楽しみです」
「じゃぁ、それをお願いします」
「かしこまりました。マスター、シェリー・ブレンド、ワン」
「かしこまりました」
〜おしらせ〜
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