綺咲は妃美子の言葉に背筋を伸ばして姿勢を改めた。
「私、今まで綺咲ってすごく嫌な人だって思ってた。すぐに私に、いや、みんなに対してマウントをとってくるし。私のほうが上なんだって感じで、すぐに自分のうんちくを話してくるし。それに、私がしゃべっているのを遮って、自分の話ばかりするし」
「あ、でもそれは…」
綺咲が言いかけたところでマスターが目でそれを制した。綺咲はまた背筋を伸ばして再度姿勢を改める。
「でもね、それって周りにいる私達のせいだってことに気づいたの」
「えっ!?」
「私達が綺咲のことを認めていない、話をきちんと聞いてあげていない。そして今綺咲がシェリー・ブレンドを飲んで自分が心から欲しいものが『親しみを感じて欲しい』っていうことだってわかって、その気持ちを理解していなかった私の責任だっていうことがわかったの。だから…」
「だから?」
妃美子もここで背筋を伸ばして姿勢を改める。
「だから、まずは私が綺咲の理解者になってあげたい。なってあげるなんて、上から目線だよね。ごめん」
綺咲は妃美子の目をしっかり見ている。その目は徐々に潤んできている。そして黙って妃美子の手を両手で包み込む。
「こっちこそごめん」
〜おしらせ〜
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