「えっ、ど、どうしてですか?」
「お前に、本物の鬼になってもらうためだ」
「鬼?」
「そう、鬼だ。信一、社長から聞いたぞ。お前、学生時代にデザインコンテストで賞を獲ったことがあるんだってな」
「ま、まぁ。昔の話ですよ」
「なのに、どうして今までそのことを自慢してこなかったんだ?設計に対してえらく自信を持っていたくせに」
「それは…そういう期待された目で見られたくなかったから…」
「つまり、肩書で見られたくない。肩書で見られてそこを期待されると、実力が追いつかないのではないか。そう思ったんだろう?」
「…はい」
「信一、お前が学生時代に獲った賞を調べさせてもらったぞ。ああいった奇抜なアイデアを求めているお客さんもいるんだ。ですよね、結城さん」
「そうなんだよ。友永さんからそのことを聞いて、だから今回の仕事は君に任せてみたいと思ったんだよ」
「信一、その賞はお前にとって鬼に金棒。けれど、金棒を振り回すだけのたくましい鬼でなければ、その金棒を役に立たせることはできない。今のお前は、金棒に振り回されているひ弱な鬼でしかない」
「だから本物の鬼になれ、ということなんですか」
「そのとおり。だから信一、やってみろよ」
〜おしらせ〜
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