急に甘い父親に変貌してしまった結城を見て、思わず笑い出す一同。
「このコーヒー、そんな味がするんですか?」
笑いにつられて、信一がそんな質問をしてきた。
「店員さん、説明してあげてよ」
「はい、今飲んでいただいたシェリー・ブレンドには魔法がかかっています」
「魔法?」
「シェリー・ブレンドは飲んだ人が今欲しいと思った味がします。先程飲まれたお客様は、早く娘さんと遊びたいという願望が味に出たようですね」
「へぇ、こいつはおもしれぇや」
結城はデレデレモードから抜け出せないでいるのがわかる。
「信一、お前も飲んでみろよ。そうすりゃ、今思っていることの答えが見えてくるはずだぞ」
「今思っていること…」
信一は神妙な顔つきに変わった。そして意を決してカップに手をのばす。友永はその様子を、ある期待を持ちながら見守っている。
信一は、ゆっくりとコーヒーに口をつける。そしてカップを置いて目を閉じる。しばらくはなにも変化がない。
が、突然目を見開いて何かを悟ったようだ。
「友永さん、お願いがあります」
急に友永の方を向いてそう言い出す。
「お願い?なんだ?」
「オレ、怖いんです。いざこんな大きな仕事を受けて本当に一人でできるのかって」
〜おしらせ〜
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