第120話 マスター その25 | 【小説】Cafe Shelly next

【小説】Cafe Shelly next

喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

 これで私の進む道は決まった。問題はこのお店を靖雄さんに譲ることをどこでどのようにお客様にお伝えするのか。今まで私を慕ってこの店に来てくれていた常連さんもいる。こういった方々を納得させるためにどうすればよいのか。そこが悩みどころだ。

 

 翌日、靖雄さんにお店の中のことを教えるために朝早くから来てもらった。まずは私がやっていることを見て覚えてもらおうと思ったのだ。なにごともお手本を示し、イメージしてもらうことから始めないといけない。

 

 お店ではモーニングをやっているので、その準備が大変である。モーニングといっても凝ったものは作れない。サンドイッチとサラダ程度である。

 

「なるほど、こんな感じなんですね。私も今までずっと独り身でしたから、その程度の調理ならできそうです。でも、他にも開店準備が必要だから、一人でできるかなぁ」

 

 その不安は当然のことだろう。そして準備もできたところで開店。すると、すぐに一人目の常連客のゆうちゃんがやってきた。

 

「おはようございまーす。あれっ、この方は?」

 

 すぐに靖雄さんに気づく。さて、どう紹介したらいいものか。

 

「おはようございます。今、マスターのもとで修行中の柏本靖雄っていいます」