第102話 主役は誰だ? その19 | 【小説】Cafe Shelly next

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喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

「名前?マキだけど」

 

「だから、フルネームは?」

 

 しびれを切らしてそう言うと、マキはバッグから名詞を取り出して俺様に差し出した。

 

「鷹野真咲…えぇっ、た、たかのまさき!?」

 

 今度は俺様のほうが驚いてしまった。鷹野真咲といえば、舞台演出の世界で知らない人はいない。まさに裏方のプロと言われる人物だ。けれど、表舞台には一切顔を出さないので、その人が男性なのか女性なのか、年齢なんかも一切不明。知っている人しか知らない謎の人物だった。

 

 その鷹野真咲が、目の前にいる冴えないちんちくりんの女性、マキだったとは。

 

「ど、どうしてマキって呼ばれているんですか?」

 

 自分でもわからないが、なぜだか急に敬語になってしまった。

 

「だって、”まさき”って言いにくいじゃない。だから仲間内では”まき”って呼んでもらってるの」

 

「その、鷹野さんがどうしてあんな小さな劇団に?」

 

「だって、あそこが私の劇団なんだもん。まぁ、大きな舞台を手伝ってから、私の名前だけが勝手に独り歩きしちゃってるみたいだけど。あの劇団をやってたら、裏方全部やらなきゃいけなくて。それで今みたいになっちゃっただけなんだけどね」

 

 マキ、いや鷹野さんは謙虚にそう言う。