第100話 盗人の心 その13 | 【小説】Cafe Shelly next

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喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

「どうでもいい、といいますと?」

 

「オレはそれ以来、おふくろを信用できなくなった。だから一人で生きてきた。そうか、そうなんだよな。でもオレは、オレは…」

 

 なぜだか涙があふれてきた。オレが本当に欲しいのは、自分を信用してくれる人。自分のことを信じてくれる人。そして、オレ自信が信用して、信じてあげることができる人。そういう人が欲しい。

 

「右松さん、大丈夫ですよ。あなたが今欲しいと思っているものは、必ず手に入りますから」

 

 マスターが優しく微笑みながらそう言ってくれる。他の奴らにそう言われると「そんなことあるわけねぇ」と反発してしまうところだが、なぜだかこのマスターに言われると言葉がスーッと心に入ってくる。

 

「あ、ありがとう。ふぅ、こんな話をしたのは生まれて初めてだ。なんだかスッキリしたな」

 

「右松さんの心の奥に潜んでいた、モヤモヤの塊が少しは小さくなったでしょうか?」

 

「えぇ、おかげさまで。しかし不思議なコーヒーですね、これ。飲んだ瞬間は美味いって思ったけど。その後に昔のことが急に頭に浮かんできて」

 

「はい。このシェリー・ブレンドには魔法がかかっているんです」

 

「魔法?」

 

「はい、魔法です」

 

 魔法ってなんだ?