どうしてみんなわかってくれないんだ。
どうしてみんな動いてくれないんだ。
だが、自分が目指すべき所がはっきりし、そして何をすればいいのかが見えてきた時から気持ちが変わってきた。
どうすればみんなわかってくれるんだ。
どうすればみんな動いてくれるんだ。
言葉にすればほんのわずかな違い。だが、この違いはとてつもなく大きい。
どうすれば。今ではこの言葉が私の中で出されると、次に何かが動き始めるチャンスとなった。そして一緒になって街が動き始めた。私はそんな中、今できることをガムシャラに動いてみた。
「秋山さんのおかげです」
気がつけばそんな声をよく耳にするようになった。私としては嬉しい評価だな。
「そろそろお時間です」
「あ、ありがとう。じゃぁ行くか」
私はそう言って席を立ち上がった。その席からはフロアが一望できる。
今日はこれから全体ミーティング。とうとうこの日がやってきたか。
「それでは秋山事務局長からご挨拶をしていただきます」
私はみんなの拍手に迎えられ、そして事務局長として初めてのあいさつを始めた。
思い起こせば七年前。コーチの羽賀さんと出合い、カフェ・シェリーで自分の望む未来を明確にしてから私は、そして私の周りは大きく変化した。私の所属している商工会が一丸となって地域おこしに力を入れ。会員企業が一つになってそれに取り組んだ。
そのおかげでご当地グルメが完成し、B級グルメグランプリにも出場した。結果は惜しいところまでいったのだが、それが逆に地元住民の力となり、次こそはグランプリを取るんだと意気込みを見せた。
またゆるキャラもできた。今ではその着ぐるみが地元のイベントで引っ張りだこである。
さらにこのご当地グルメを生産する機械も、全国に飛ぶように売れている。これも地元産業として成功した事例だ。これらは誰か一人が成し得たことではない。みんなで考え、取り組んだ結果生まれたものである。
これらを指揮したということで、私の活動が評価された。
そのおかげか、どんどん重要なポストに就かせてもらい、気がつけば事務局長という役職にまで昇進することができた。
しかし、私は現場第一主義。事務局長だからといって、椅子に座って部下に指示を出すだけにはなりたくない。その旨を就任挨拶として行った。職員は私の考えを大きな拍手で受け入れてくれた。
「じゃぁ、早速次のプロジェクトに取りかかるか」
私は意気揚々と仕事に取り組み始める。これからがまたスタートだ。
私はこの街が好きだ。そして、この街で生活をしている人が好きだ。なにより、そういう自分が好きだ。この七年間、それをあらためて自覚させてくれた。その思いが今の自分を作ったんだな。
「秋山さん、今日はこれからどちらに?」
事務局長ともなると、今までのようにふらりと出かけるわけにはいかない。そこがこのポストの弊害ではあるが。だからといってこれは欠かすことはできない。今では私の生活の糧となっているのだから。私は部下にその旨を伝える。
「今からカフェ・シェリーに行ってくるよ」
「わかりました。お気をつけて」
さぁて、今日はシェリー・ブレンドに何を見せてもらおうか。
<第50話 完>