開店から、いまやっと五か月目。
えー、俺は脱サラでこの仕事をはじめたわけじゃない。
もともとがプロであり、ただしそれは長いブランクの果て。
あのころできたはずのことができなくなって、ブランクと
はこういうものかと思い知った。
その昔・・いいや、むかしむかし・・どえらい昔。(笑)
この仕事を教えてくれたチーフは、まちがいなく一流だ
った。その教えの中に、『小細工でごまかすな』という
ものがあり、俺はいまでもそこを基準にしている。
配合という意味でのレシピであれば『混ぜ物でごまか
すな』 盛り付けだったら『飾りでごまかすな』
それよりもっと大切なのは『包丁の冴え』なんだね。
そこですよ、ブランクを感じたのは。 つまりはコレ。
あのころ、チョイチョイとできたものが、腹はガタガタ、背
中はヨレヨレ。いったいどうした俺? 愕然としましたね。
フルーツカットはリンゴがすべて。和包丁でいうところの
カツラ剥きよろしく、これができればすべてのフルーツが
プロレベルでカットできる。
腹を丸くくりぬいて背中はスベスベ。
ペティナイフだけだよ。特殊な道具は使わんよ。
ちかごろやっと手が若さを取り戻し、ちっとはマシになっ
てきた。しかしまだまだ。スピードが遅いんです。
愕然とする時期は、まだしばらく続くだろう。
昨日より今日、今日より、きっと明日。ウサギが美形に
なっていくのが愉しみなんです。