APS-C専用の大口径標準ズームの
EF-S17-55mm F2.8 IS (17-55)
と
135版フルサイズ用の大口径標準ズームの
EF24-70mm F2.8LII(24-70LII)。
標準域ズームのフラッグシップモデルとして、
君臨している両モデルです。
(過去のブログ記事)
同じカメラでの屋内撮影の比較(比較(1))
室内の光の回った中で7Dと5D3での比較(比較(3))
私が17-55を購入したのは2008年6月。カメラは
EOS40Dを買ったばかり。
2010年のEOS7D購入後も常用レンズとして
重宝し,Err01の故障も乗り越えて,さらには
昨年末のサブカメラの入れ替えのEOS 7D MarkII購入
もあって、手元に残しています。
この17-55は、
フードが別売、つくりがちゃちい、レンズ内に
ゴミが入り込みやすいなどなどの悪評価もある
一方で,
APS-C型EOSの標準域ズームとしてはこれしかない
レベルの高い描写力(特に解像力)を評価されて
います。
私のブログでは、ポートレート撮影が中心のため,
解像力よりも色味や柔らかさを重視した記事を書き
ました。
それから数年。
発売からも9年も経ち,あまり雑誌などでも取り
上げられなくなっている17-55と最新型の24-70LIIの
比較作例写真をあげてみます。
昨日のm-GRAが逆光・フレアーがキーワードでの
展開だったので,17-55が特に弱いとされた逆光下
での描写の違いについて、24-70LIIと比べてみようと
思い立ったのが,きっかけです。
前置き長いですが,いきます。
撮影は17-55が7D2、24-70LIIが5D3との組み合わせ。
いずれもフードを装着,保護フィルターをつけたまま。
現像ソフトはDPP 4.3。現像パラメーターは、
WB:太陽光
ピクチャスタイル:標準
デジタルレンズオプティマイザ:入
その他の補正関連は切にしています。
(モデル役の紗也ちゃんには申し訳ないですが,一切の
補正をしていない上に,ポートレートとして適切な
現像パラメーターを用いてもいないこと,伏して
謝らせていただきます。
まっとうな紗也ちゃんの写真は別記事にあるので,
そちらを参照してください。)
(1)まずは風景比較。
(1-1)17-55@換算28mm域, f/5.0
(1-2)24-70LII @28mm, f/5.6
太陽が画面中央の外側上にすぐのところに
位置しており,17-55の方はこれを受けて,
小さいながらゴーストが発生しているのが
2つはっきりと分かります。(中央建物上部)
全体にもフレアーの影響で,コントラストが
少し落ちていますが、許容範囲でしょうか。
24-70LIIの方はさすが最新型ですね。風景画は
よく分かりませんが、コントラストの低下も
少なく,安定した描写です。
f/5.6への絞り込みの結果、水面の反射の光芒が
きれいです。ゴーストは見つかりません。
つづいて、ポートレート撮影から。
まずは強逆光。
(2-1) 17-55@換算88mm域、f/2.8
(2-2) 24-70LII @70mm域,f/2.8
ちょっと私の露出ミスで,完全な比較写真にはなって
ないのですが、17-55の方がフレアーによりコントラスト
が低下し,肌色のグラデーションが24-70LIIの方が高い
ことがわかります。
もう一枚。半逆光。
(3-1) 17-55 @ 換算88mm,f/2.8
(3-2) 24-70 @70mm, f/2.8
真逆光の(2-1)(2-2)に比べると半逆光なので,
どちらもフレアーの影響は小さいと感じました。
フリンジは24-70LIIの方が少ないです。
肌の色合いのコントラストについては24-70LIIの
方がはっきりと高く感じられます。
このあたりが、17-55があっさり・寒色系の色合いと
言われるところなのでしょうか。
しかし、実のところ,撮影していてもっと大きな
違いがありました。
逆光下では、17-55のAFが全く合わないのです。
強逆光下で、たまに意識したことがありましたが、
24-70LIIとは全然違うレベルです。
5D3に24-70LIIをつけていると、スイスイとAFが
合焦するのに対し,7D2に17-55の方は,まったく
合焦せず、撮影をあきらめたシーンがたくさんあり
ました。(比較写真が少ないのもこのため)
7D2は最新のAFシステムを備えていますし,合焦の
ため中央のAFポイントを使用するように変えても
17-55の方は困難なことが多かったです。
そして最後に,ゴースト比較。
(4-1)17-55 @換算72mm、f/2.8
(4-2)24-70LII @70mm、f/2.8
太陽をわざと画面に入れたこの構図の場合,はっきりと
17-55ではゴーストが生じています。(左の首から肩)
以前、室内スタジオ撮影で24-70LIIでは、ゴーストの発生
が少なくて,作画意図の通りの写真にするのに困ったこと
がありました。これが実は17-55と24-70LII比較を行う
きっかけとなった撮影シーンです。
作画意図としてゴーストを取り込みたいときに,出せるか,
というのもレンズの特性として知っておく必要があり,
24-70LIIについては、出にくいということがスタジオ撮影
でありました。
では、ゴーストやフレアが出やすいと言われる17-55では
どうか。出やすいのか,コントロールしやすいのか,
このあたりを調べたくて,今回のm-GRA写真教室では
わざわざ同じ焦点距離のズームレンズ(とカメラを)
2台持ち出した訳です。
(ほかの受講生からすると,この人なにやってんだろ?
というところですね)
この日の太陽は力強く,また角度的にも画面に射し込ん
でくる時間であったので,24-70LIIでも出すことができ、
杞憂に終わりましたが、少なくとも(4-2)ぐらいでは
ゴーストは生じない訳です。
24-70LIIでのゴーストの出具合は前の記事に上げました
ので,参考のため,17-55での出具合も上げておきます。
(4-3)太陽入れず
(4-4)太陽ちょっと
紗也ちゃんの身体にかかるゴーストはないですが、
24-70LIIの(4-2)のようなフレアーとも違う形の光の
入り込み方が光源周りに生じています。
(4-5) = (4-1)太陽少し
ゴーストがはっきり生じて,光源周辺と左の首の
外側に見えます。
(4-6)太陽をわりに入れる
画面内はフレアーでいっぱいになり,ゴーストも
大きくなりました。
ちなみに24-70LIIでゴーストを発生させた作例はこれ。
(4-7)
このゴーストの出方は微妙な感じがしませんか?
左のあごから首筋にかけて崩れた輪ができてます。
この場面では,17-55の方がやはりゴーストが出やすく,
しかしその形や出方を含めてコントロールしやすい
印象を持ちました。
ということで、レンズ比較はいちおうここまで。
本当は,手元に残しているこの優秀な17-55の良い
ところをほめて、皆さんにも見直しましょうよ,
というつもりで手がけた実験でした。
結論的に言うと今回の強逆光の局面ではやはり新型の
24-70LIIには負けている,と言わざるをえません。
ほかの部分では,
手振れ補正が効き(24-70LIIはない)
645gと軽く(805g)
換算28-88mmのズーム域(24-70は換算38-112mm)も
ポートレート撮影には最適、
などという長所はあります。
しかし、逆光下でのフレアーの発生やゴーストの発生,
なかんずく,AFが効かなくなる欠点(廉価版のキット
ズームでもこれは同じですが、大口径な分目立つよう
です),などは確かにあります。
最後のゴーストの形とコントロールのしやすさ,という
点では17-55が勝っているように感じましたが,かなり
限られた局面ですね。
ちょっと残念でした。
修理・調整したあとあまり使っていないこの17-55の
使い道を考えなければいけないかもしれません。
マップカメラでの売却価格は¥43,000みたいです。
購入価格の1/3ですが、手放した方がいいんですかね。
けっこう,お気に入りのレンズだっただけに今回の
比較結果は残念でした。
(本ブログの写真はすべてモデル本人および事務所
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