登場人物
カイン……主人公。口数の少ない優男。元王宮兵士
ヤンガス……元盗賊。カインをアニキと呼ぶ
ゼシカ……元アルバート家令嬢。猪突猛進
トロデ王……亡国の国王。呪いで魔物の姿にされている
ミーティア姫……トロデ王の娘。呪いで馬の姿にさせられている
トーポ……ネズミ
ククール……マイエラ寺院聖堂騎士団
マルチェロ……聖堂騎士団長
ドルマゲス……悪の魔法使い。トロデ王たちの呪いの主
ポルトリンクから海上を歩いて南下した道化師の情報を追って、
オセアーノンを討伐して海路を開き、
航海の末、南の大陸に辿り着いたカインたち。
しかし、それ以上のドルマゲスの情報は、
今のところ持ち合わせてはいない。
ここから先は、地道な足での捜査が必要となった。
一行は、
野を歩き、山を越え、草を分け、
大目玉に睨まれ、
暴れ牛鳥に撥ねられ、
ワンダーフールに噛みつかれながら、
ドルマゲスの情報を探す。
そうこうしているうちに、
魔法使いのタマゴと自称するゼシカのレベルも、
だんだんと上がってきた。
が、
タマゴが孵るのに時間がかかるのか、
孵るつもりが一切ないのか、
ゼシカは呪文を覚えるよりも、
お色気ばかりを磨いている。
魔物に見とれられるのに気を良くし、
投げキッスまで送ってしまう始末だ。
「だから女は苦手なんでガス」
と言うヤンガスに、
わずかながらでも同調しようとしたカインだったが、
そのヤンガスは、
どういう対抗意識からか、
魔物にステテコダンスを踊って見せている。
真面目に戦う気があるのかどうか。
男も苦手になりそうなカインだった。
カインたちが船着き場からしばらく南へ進むと、
川の中州にある寺院へと差し掛かった。
マイエラ寺院である。
ここマイエラは、
由緒正しき寺院であるはずなのだが、
最近は、
何かと多額の寄付金を要求したりと、
巡礼者からの評判も悪くなってきていた。
カインたちも、
寺院に入るなり、
「薄汚い旅人が聖なる祭壇に軽々しく登るでない!」
と神官に罵倒されたりもした。
とても聖職者とは思えないような口ぶりだった。
マイエラ寺院は、
神官たちだけでなく、
駐在する聖堂騎士団によって守られていた。
しかし、
その聖堂騎士たちもまた、
聖職者とはかけ離れた者ばかり。
海の荒くれよりも乱暴な聖堂騎士たちは、
カイン一行を見るなり、
「なんだお前は!怪しい奴め!」
と怒鳴り、
「命を落としたくなくば立ち去るがいい!」
とカインを突き飛ばした。
それを見合わせた団長のマルチェロも、
「手荒な真似をするな」
と建前上の咎めの言葉を発するものの、
それはあくまで騎士団の評判を落とさないためのもの。
内心は、乱暴な騎士たちと同じような考えだと、
表情から透けて見える。
どうにも釈然としないカインではあったが、
マルチェロとは違って、
内心を表情に出さないのがカイン流だ。
カインは、得意の優男スマイルで、
嫌味顔のマルチェロに別れを告げた。
しかし、
カインの直感はこう告げていた。
また会うことになるだろう、と。
「あれだけ厳重ならドルマゲスに襲われる心配もないでゲスね」
ヤンガスの言葉に納得するカインは、
寺院を出て、再び南へと足を進める。
日が暮れるほどの時間まで歩くと、
ドニという宿場町が見えてきた。
宿と酒場だけの、町とも言えない小さな町である。
カインたちが酒場を覗くと、
2人の男が、1つのテーブルを挟んで、
ギャンブルをしているところだった。
ひとりは喧嘩っ早そうな荒くれであり、
もうひとりは、荒くれより乱暴な聖堂騎士の仲間のようだった。
名前をククールと言うようである。
どうやらククールが勝ってばかりである様子で、
負けた荒くれはイカサマだと言い出している。
一触即発の雰囲気である。
そんな空気を読んだか読み損ねたか、
「まあまあ」
とヤンガスが仲裁に入るが、
荒くれは今度はヤンガスに、
「お前も仲間か!」
と掴みかかった。
そうなってくると売り言葉に買い言葉。
「聞き捨てならねえでガス!」
「金返しやがれ!」
「ふざけるなでガス!」
「おい、お前ら。こいつをやっちまえ!」
ヤンガスを突き飛ばす荒くれ。
荒くれに水をかけるゼシカ。
ゼシカにいきり立つ荒くれ子分。
子分にテーブルを投げつけるヤンガス。
それを見守るカイン。
ヤンガスに荒くれのコークスクリュー。
それを交わしてからの反撃ブレーンバスター。
見守るカイン。
立ち上がる子分。
呪文の詠唱を始めるゼシカ。
見守るカイン。
と、そんな中、
元はと言えば騒動の中心人物であったはずのククールが、
他人の喧嘩は知らぬと言いたげな涼しい顔で、
カインとゼシカの手をスッと引いて、
酒場の裏へと導いた。
「ここなら大丈夫。俺はマイエラ寺院のククール」
ククールはカインに目を向け、
次いでゼシカを下から上から下から上まで、
ペンキの刷毛を往復させるかのごとく見つめ続ける。
「ちょっと!じろじろ見ないでくれる?」
魔物に見とれられるのは満更でもない風だったゼシカも、
意外にも困惑の顔を見せた。
投げキッスのひとつでもするかとカインは思ったが、
相手が人間であると、
スライムベスと同じようにはいかないようだった。
「いや、レディに怪我でもさせてないかと心配だったものでね」
どうやら、ククールが、
キザ男であるということが、
カインにも薄々わかってきた。
僧侶というもの、
酒、賭博、女への欲望を神に捧げることで、
その身を清めると言われる。
ただでさえ聖職者とは思えない聖堂騎士団の中において、
酒場でギャンブルをするキザ男となると、
生臭オブ生臭坊主ということになる。
しかも、ただのギャンブルではなく、
「おかげでイカサマがバレずに済んだ」
という自白が示すとおり、
八百長賭博なのだ。
これ以上質を落とすことができないほど質の低い僧侶。
それが聖堂騎士ククールだということである。
しかし、
当のククール本人は、そんなことを気にする素振りもなく、
「これはお礼だ」
と、自分が嵌めていた指輪を外して目くばせをしながらゼシカに渡した。
指輪を持ってくれば、
マイエラ寺院の中に入る許可が下りる、とククールは説明し、
「俺に会いに来てくれるだろ?」
と言い残して、カインたちの前を去って行った。
「あのケーハク男に叩き返してやるんだから!」
不機嫌顔のゼシカが言うまでもない。
荒くれとの決着をつけて酒場を出てきたヤンガスと共に、
カインとゼシカは、
再びマイエラ寺院を目指す。
カイン:レベル14、ドニ
プレイ時間:12時間14分
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