ついに世界の平和を勝ち取るときが来ようとしている。
あるいは、世界を絶望に陥れるとき、とも言える。
かいんがゾーマに敗れることがあれば、
人々の平和への願いは潰えてしまうことになるのだから。
最初の難関は大魔神だった。
ある開けた通路を通っていると、
急に前後の扉が封じられ、
かいんたちは部屋の中に閉じ込められた。
しまった!罠か!
扉は開かないか、別の出口はないか、
秘密の通路は見当たらないか、隠しボタンは見つからないか。
かいん一同は広間を探し回った。
そして、気付いた。
あからさまに怪しい石像が6体あることに。
石像の下に階段があるんだ!
いや、石像を回転させるんだ!
違うわ、石像の視点の先にヒントがあるのよ!
3人は思い思いの推理をしたが、
答えは全く別のところにあった。
石像のうち、2体が動き出したのである。
石像たちは、大魔神と名乗り、
大魔王を守る者であると言った。
大魔王を守る大魔神!
大魔王と大魔神。
魔王と魔神。
王と神。
神が王を守るのか。
王のほうが神より上なのか。
かいんはどうでもいいことを考えながら、
2体の魔神に剣を向ける。
こちらの剣は王者の剣。
神より王のほうが上なのだとしたら、
王者の剣のほうが大魔神よりも強いことになる。
この剣で斬り倒してやる!
馬から生まれた王者の剣で!
馬宿の王者で!
剣を向けられた神は、
しかし、かいんには見向きもせず、
いぶばかりに拳を向ける。
それもそのはず。
いぶの装備は魔法のビキニ。
かいんが見ても大魔神が見ても、
光の鎧のかいんよりも攻撃が効きそうだと、
一目瞭然なのである。
大魔神はいぶを集中攻撃し、
ときには痛恨の一撃を繰り出した。
いや、大魔神が繰り出したのは会心の一撃で、
いぶから見たら痛恨。
大魔神が痛恨に思うことなどまったくない。
もちろん、いぶだって、
もらってばかりの性分ではなく、
すぐに大魔神に会心の一撃を返済する。
耐えかねた大魔神は、再返済先をあだむにした。
一撃の返済によってあっという間に倒産してしまうあだむ。
次にあだむが気付いたときには、
大魔神との戦闘が終わった後で、
口に世界樹の葉を突っ込まれている状態であった。
大魔神は2体ずつ次々と襲って来、
結局、6体あった石像はすべて大魔神だった。
なるほど、6体もいたのなら、
唯一無二の大魔王よりも格下であるのは疑いない。
聞くところによると、
マドハンドに手招きされただけでホイホイやってくる、
わりと気軽でいっぱいいる神だという話もある。
かいんはこう思った。
最初から6体で襲ってくればいいのに、
2体ずつ戦わせてくれるなんて、
なんて親切な神様なのだろう、と。
それとも、単に賢さが足りないだけかな、とも。
第2の難関は、隠し階段。
大魔神の大封鎖を突破したかいんは、
ついにゾーマ城の王座に辿り着いたのだが、
そこにゾーマの姿はなく、
もぬけの殻、であった。
しかし、世の中なにが役に立つかわからない。
魔王の神殿の玉座の後ろに秘密の入り口があるという情報を
リムルダールの、ウソつきで人を騙してばかりいた囚人に、
聞いたことを思い出した。
騙されたつもりで玉座の後ろを調べてみたところ、
囚人の言ったとおり、隠し階段を発見することができた。
騙されたつもりだったのに騙されなかった。
なんか騙された感じだ!
さすが本物のウソつきは違う!
などと感心しながら、
誰も囚人に感謝することなく、一行はゾーマ城の奥へと進む。
どのくらい進んだだろうか。
回転床に振り回され、
バルログのメラゾーマに焼かれ、
アークマージのイオナズンに吹き飛ばされ、
マントゴーアのバギクロスに切り裂かれ、
ドラゴンゾンビの吹雪に凍らされ、
ソードイドの六刀流に斬り刻まれたその先で、
かいんは、ある勇者の戦いを見た。
その姿をかいんが見間違えようはずがない。
勇者オルテガだった。
見間違えない、というのは実のところ誤りで、
カンダタをオルテガだと見間違えてばかりだったかいんではある。
しかし、オルテガをカンダタだと間違えたことはない。
オルテガもカンダタも殺人鬼もエリミネーターもデスストーカーも、
すべてオルテガだと思ってたわけだから、
オルテガを見てオルテガだと思うのは当然のことである。
オルテガは、旅立ちの日にかいんが見たときと同じ姿で、
今かいんの前に立っていた。
かいんを背にして戦っていた。
敵はやまたのおろちにも似たキングヒドラ。
5本首の竜である。
オルテガの攻撃はすさまじかった、
かいんよりもずっと。
キングヒドラの炎をものともしなかった、
いぶと同等の軽装であるにもかかわらず。
オルテガは強かった。
オルテガはたくましかった。
オルテガは勇ましかった。
オルテガは気高かった。
オルテガは。オルテガは・・・。
かいんは目の前の光景に涙をこらえきれなかった。
強く、たくましく、勇ましく、気高いオルテガは、
しかし、キングヒドラの5つの頭に、
焼かれ、噛まれ、絞められ、弾かれ、そして倒された。
だが、オルテガは、
それでも戦うことをやめない。
ダメだ、父さん。
それ以上戦っちゃダメだ。
そう叫びたいかいんは、しかし、
身動きがとれない。声が出ない。足が動かない。息ができない。
ずっと探し求めてきたオルテガに、
ずっと追い続けてきたオルテガに、
いま会えたのに、
いま話せるのに、
いま助けられるのに。
頭でそう考えるかいんだが、体がそのとおりに動かない。
動きがスローモーションに見える。
オルテガも。キングヒドラも。
スローモーションになっても、
見えるのは、オルテガが攻撃されるところばかり。
もう、それ以上戦わないでくれ、父さん。
かいんの願いは、叶わなかった。
オルテガは、戦いをやめなかった。
どんなに苦境でも劣勢でも孤独でも困難でも、
決して立ち向かうことをやめず、
かいんの手が届いたときには、
もう動けぬ身になってしまっていた。
父さん!父さん!
オルテガの肩を掴み、強く揺すった。
「私はもうだめだ・・・」
そんなオルテガの言葉など聞きたくなかった。
死なない!父さんは死んだりしない!
火山に落ちても、魔の海に潜っても、
父さんは死んだりしなかった。
やっと巡り合えたんだ!
こんなところで父さんは死んだりしない!
「そこの旅の人、どうか伝えてほしい。私はアリアハンのオルテガ。もしそなたがアリアハンに行くことがあったなら、その国に住むかいんを訪ね、オルテガがこう言っていたと伝えてくれ。」
父さん!僕だ!かいんだ!
僕はここにいる!
目が見えないのか、父さん!
耳が聞こえないのか、父さん!
「平和な世界にできなかったこの父を許してくれ・・・とな。」
かいんはこのときに知った。
やはりオルテガは悔いていたのだ。
バラモスを倒せなかったことを悔いていた。
だから、火山に落ちて記憶をなくしても、
アレフガルドの平和を取り戻すために旅に出たんだ。
許してくれ、なんて言わないでくれ、父さん。
許しを請うべきは僕のほうだ。
そして僕は許されない。
だって。
だって、父さんを助けられなかったんだから。
「ぐふっ!」
という声を最後に、物言わぬ存在となったオルテガに、
かいんはいつまでもいつまでも叫び続けた。
あだむといぶは、
これ以上進むことはできないと判断し、
かいんとオルテガの遺体を連れて、
一旦ゾーマ城を脱出して、ラダトームへと戻った。
あだむたちは、オルテガの遺体を人知れず埋葬した。
いぶは、左手の中指から指輪を外し、かいんに手渡す。
これ、お父さんの指輪だから、と。
一緒に埋葬してはどうか、という意味だった。
いや、とかいんは言う。
それは持っていてくれないか、と。
僕たちは父さんにかわってゾーマを倒さなければならない。
父さんの無念を晴らさなければならない。
父さんの仇を取らなければならない。
それには、父さんの力が必要だ。
その指輪は父さんの形見。
父さんの力。
だから、それは君が持っていてくれ、いぶ。
力を貸してくれ、いぶ。
僕はゾーマを倒さなければならない。
それでしか許されない。
いや、それでも許されない。
そう言い続けるかいんに、
あだむが優しく言った。
かいん、お前は許されるさ。
親父さんを探して会えたんだ。
親父さんの死に目を見れたんだ。
親父さんを埋葬できたんだ。
子として、これ以上の何ができる?
誰もお前を責めるなんてできない。
だから、お前もお前を責めないでいてくれ。
かいんは涙を拭って立ち上がった。
行こう、みんな。
勇者の挑戦が、幕を開けようとしていた。
かいん(勇者・男):レベル42、HP368
いぶ(武闘家・女):レベル40、HP316
あだむ(賢者・男):レベル38、HP251
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