登場人物
カイン……主人公。口数の少ない優男。元王宮兵士
ヤンガス……元山賊。カインをアニキと呼ぶ
ゼシカ……元アルバート家令嬢。猪突猛進
ククール……元マイエラ聖堂騎士団。キザ男
ゲルダ……女盗賊。宝探しに憧れるがセンスはない
トロデ王……亡国の国王。呪いで魔物の姿にされている
ミーティア姫……トロデ王の娘。呪いで馬の姿にさせられている
トーポ……ネズミ
レティス……神鳥
キャプテン・クロウから『ひかりの海図』を託されたカイン一同。
この海図によって、
カインの持つ世界地図に、
レティスが住むと言われる断崖の島に辿り着くための、
光の航路が記されることとなる。
しかし、
光の航路どおりに船を操舵するカインたちの目の前には、
絶壁が立ち塞がっている。
見た目には、
とてもそこから上陸できそうにないどころか、
そのまま船を進めてしまうと、
崖に衝突して海の藻屑となり果ててしまいそうにさえ見える。
そのときに、
なぜ誰も船を止めろと言わなかったのか、
なぜカイン自身が衝突を避けて舵を切ろうとしなかったのか、
カインにも他の誰にもわからない。
ただただ光の航路が示すとおりに、
カインたちは、断崖絶壁に向かって最大船速で突入したのである。
そこでカインたちが藻屑にならずに済んだのは、
結果論だと言うしかないだろう。
あるいは、
ひかりの海図を無条件に盲信した結果であるとも言える。
断崖に見えていたその壁は、
幻術によるものであり、
こうして幻の絶壁を通過したカインたちは、
無事に断崖の島に上陸することができたのだった。
幻術で入り口が隠された島、
それがこの島の正体であった。
断崖によって外界と隔絶されたこの島には、
レティシアという村がある。
レティシアとは、
神鳥レティスを崇める者、という意味である。
ところが、
今現在のレティシアの村民たちは、
レティシアのことを崇めていないどころか、逆に憎んでいた。
というのも、
神鳥レティスは、魔物たちから狙われているため、
レティスのそばにいるだけで魔物たちに襲われてしまうからだ。
この状況をレティシアの人々は、迷惑に思っていたのである。
実際、
この島における神鳥レティスは、
とても中途半端な状態にある。
もともとレティスは、
異世界と行き来ができる存在であった。
かつて、勇者たちを背に乗せて、
ネクロゴンドのバラモスを討伐する協力をしたこともある。
そのような、おとぎ話とも思える神話の世界を
事実行き来していたのが、この神鳥であったのだが、
しかし、現在のレティスは、
そのようなチカラを二重三重に封じられていたのである。
ひとつ目の原因は、
暗黒神ラプソーンに7賢者の血の封印を施したときに、
チカラを使いすぎたことである。
遥か昔、異世界からやって来たラプソーンは、
この世界と異世界を繋ぐ巨大な門を生み出し、
この世界の征服を狙った。
レティスはその暗黒神の企みを阻止するために、
暗黒神のいた闇の世界へと旅立ち、
開かれた門を閉ざしたのだが、
チカラを使い果たしたこともあって、
闇の世界から戻れなくなってしまったのである。
今のレティスが、この世界に対してできるのは、
自分の影を見せることだけである。
したがって神鳥レティスは、
このレティシアにおいては、
「影はあるが姿がない巨鳥」という存在なのである。
この巨鳥の影を魔物たちは追うが、
実体のない神鳥は魔物を追い払うことができず、
レティシアの住民たちに被害が出ている、という状況なのだった。
ふたつ目の原因は、
レティスが、妖魔ゲモンに、自分の子を人質に取られていることである。
ラプソーンを封印したことで、
レティスは、旧ラプソーンの配下の魔物たちに恨みを買っていた。
そのせいで、どこにいても、影だけになっても、
レティスは魔物たちに狙われているのである。
その上、自分が産んだ卵が、ゲモンに奪われてしまい、
今やゲモンの手先となり下がってしまったのである。
したがって神鳥レティスは、
カインたちのいる従来の世界では影しか存在せず、
闇の世界においてはゲモンの手先として人間を攻撃し、
それでいて魔物たちにも狙い付け回される状況になっているのだった。
そのレティスは、しかし、
黙ってゲモンの言うことばかりを聞いているわけではなかった。
いずれゲモンを倒して、
自分の卵を取り返してくれるであろう勇者の存在を信じていた。
レティスは、
自分の影を使って、レティシアにやってきた旅人たちを誘導し、
2つの世界を繋ぐ小さな破れ目を作って旅人たちを闇の世界に引き入れ、
秘密裏に対ゲモンのクーデターを計画していたのである。
さて、今回クーデターに参加させられたのは、
カイン一行であった。
影しかない巨鳥がいたり、
バウムレンが呼べなかったりと、
上陸以降、奇妙な感覚に囚われているカインたちであったが、
レティシアの村長の助言もあって、
異世界への破れ目へ進もうと、レティスの影を追っていた。
情報によると、
レティスは、岩でできた鳥居を止まり木にするらしかったので、
島の中央の鳥居の下で、カインたちは巨鳥の影を待った。
探索初日、予定どおり巨鳥の影は現れたが、
それを追っている間に日が暮れて、影が見えなくなり、
破れ目探索は失敗に終わった。
翌日、日が暮れる前に探索を終了させることを目的として、
朝から探索を開始しようと、今度は日が昇る前から鳥居の前で待った。
しかし、月が太陽に変わり、そしてまた月に変わっても、
この日はレティシアは現れなかった。
巨鳥が現れるための儀式が必要なのかとカインは考え、
同じ方向から鳥居を7回くぐったりもしてみたが、
それで巨鳥が現れることはなかった。
その日はレティシアで宿を取り、
3日目のチャレンジで、やっと夜になる前に、
異世界の破れ目に到達することができた。
巨鳥の気まぐれに、
ずいぶんと気を揉まされたカインだった。
さて、
ここではじめて異世界に踏み込んだカインたちは、
その情景に目を見開き、驚いた。
異世界とは、色のない世界であり、白と黒だけの世界であったのである。
強いて言うなら、
水が青いことと、宝箱がカラフルなこと、
有彩色があるとすれば、その程度のものだった。
世界が無彩色であるぶん、
宝箱が見つけやすく、むしろ利点に感じることもあった。
もうひとつカインたちが驚いたことは、
地形としては、レティシアがある断崖の島と、
寸分違わぬ構造をしていたこと。
すなわち、この『闇の世界』は、
『白黒のレティシア』だったのである。
事実、この闇の世界では、
カラフル世界のレティシアの村と同じ場所に、
『闇のレティシア』が存在していた。
そして白黒のレティシアには、
白黒の住人が住んでいて、
カラフルなカインたちは『光の世界の住人』だと呼ばれ、
子供たちは、
「目がチカチカする」
と怯えた。
もしかすると、30分も見続ければ、
光過敏性の発作を起こしてしまうかもしれなかった。
ここ闇の世界では、
カラフルな生物は神鳥レティスしか存在せず、
そのレティスは今まで親睦のあった村を突如として襲ってきたのだから、
カラフルであることは裏切りの象徴でもあった。
神鳥が妖魔ゲモンに人質を取られていることなど村人は知らないのだから、
彼らがレティスを恐れ、カインたちを恐れるのは、
当然のことであっただろう。
しかし、そんな中でも、
ここ闇のレティシアの長老だけは、
レティスの思考を推し量ろうとしていた。
掌を返したような神鳥の裏切りを
そのまま受け容れることができず、
理由を探ろうとしていたのである。
そんな折に、
レティスと同じくカラフルな、光の世界の住人がやってきたのだから、
カインたちの来訪に長老が意味を見出したのも、
また当然のことであった。
長老は、カイン一行が来たことを「天の意思」と喜び、
一行は神鳥の真意を問う役割を委ねられたのである。
闇の世界でも、止まり木の鳥居は同じ場所にあった。
カインは、そこではじめて見たにもかかわらず、
その巨鳥がレティスであることがすぐに理解できた。
その理由は、巨鳥がカラフルであったからである。
カラフルなのはレティスとカインたちだけ、という世界であるから、
お互いに、初対面であったとしても、
即座に理解せざるを得ないのである。
レティスは突然、カインたちに襲い掛かって来たのだが、
戦っているうちに、
敵意を持っているわけでも、操られているわけでもないことが、
カインにも理解できた。
ただカインたちの腕前を測っているという様子であった。
とはいえ、
だから手加減をする、というような素振りがあったわけではない。
その攻撃は苛烈だった。
口ではライデインを唱えながら、
足でわしづかみにし、
翼で凍てつく波動を繰り出してくる。
それだけではなく、
目からまばゆい光を発し、
ライデインを唱え終わるや否や、
今度はメダパニーマを唱えてくるのだ。
補助呪文がかき消されて、目をくらまされ、瀕死にさせられた挙句、
混乱した仲間に殴殺されて、
カインたちは、はじめての全滅を経験することになった。
闇のレティシアで目が覚めたカインは、
あまりの一方的敗北に、
早急に対策を練らざるを得なくなった。
レティスの攻撃が苛烈なのは確かだが、
最も厄介なのは、仲間が混乱することである。
そのため、
混乱の治療薬である超万能薬の確保が最優先の課題となった。
超万能薬の錬金レシピは、特薬草3つである。
そして、
1特薬草=2上薬草、
1上薬草=2薬草、
となっている。
つまり、
1超万能薬=12薬草、
ということである。
しかし、問題は、
闇のレティシアの道具屋では薬草の取り扱いがなく、
闇の世界から元の世界にはルーラで移動することができないことである。
なんと、
現状、薬草を調達することができないのだ。
道具袋を漁り、
手持ちの薬草、上薬草、特薬草をかき集めて錬金してはみたが、
超万能薬を5個確保するのがやっとである。
たったの5個で足りるのだろうかというカインの不安は、
すぐに現実として答えが出た。
レティシアに再戦を申し込んだものの、
超万能薬で回復した翌ターンにまた混乱するヤンガスやゼシカを見ていると、
足りるはずがないことが、序盤から明らかになっていた。
とはいえ、それでも戦局を整えるのがカインの役割である。
終盤には、
倒れたらザオリクするという回復作戦が整ったこともあり、
混乱した仲間が積極的にレティシアの餌食となるように、
あえて体力を回復させずに前面に押し出すという、
非人道的な戦術を遂行するようにもなった。
そして、それが功を奏した結果、
レティスを見事打ち破ることができたのである。
カインたちの実力を認めたレティスは、
「試したりして申し訳ありませんでした」
と謝り、その上で、
妖魔ゲモンの退治と、卵の奪還を申し入れてきた。
しかしレティスが、
口では「試した」と言いつつも、
カインたちが全滅した時に、
ちゃっかり持ち金の半分を奪っていることをカインは知っている。
神鳥であっても、
つい魔が差してしまうのだろう。
お金の魔力は、
人も魔物も神鳥さえも、狂わせてしまうものなのだ。
もちろん、
そのことをカインが抗議したり追及したりはしない。
レティスの言うとおりに背に乗り、
レティスの言うとおりに麓で降りて、
安全なところからレティスが見守る中、
そこから先は歩いてゲモン退治に向かうのが、
優男たる所以なのだ。
いいように使われるのは、
トロデーン兵士時代から慣れている。
カイン:レベル35
プレイ時間:59時間58分、闇のレティシア
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