早速、情報が示すとおりにルビスの塔へと赴く。
塔は複雑な構造をしていたが、
かいんたちはやがて、最上階の石像の間へと辿り着いた。
その石像が、
封印されたルビスであることは、
もはや疑いない。
かいんは妖精の笛を吹こうとした。
しかし吹こうとしたところで思いとどまる。
銀の竪琴のときのことを思い出したからである。
何も考えずに掻き鳴らしてしまった竪琴の音は魔物を呼びよせ、
かいんたちは、不意の戦いに痛い目を見てしまったことがある。
何があってもいいように、
準備万端に、体力の回復や装備品のチェックをし、
その上で、本番前に、ちょっと笛の音を確かめようと、
あだむといぶの前で吹奏する。
こんな曲でどうだろう?
と、かいんが音色と音階を確かめながら吹いたところ、
あだむといぶが、笛の音を聴いて眠ってしまった。
しまった!
竪琴と違って、笛は眠ってしまうのか!
ザメハの使えないかいんは大いに悩み、
そして、寝ているいぶの鼻をつまんで起こそうという作戦に出た。
鼻をつままれたいぶは、
息ができなくて苦しくなったところで目を覚まし、
そして、死んだらどうするのか、と、かいんを睨んだ。
大丈夫。眠った人は起こせないけど、死んだ人はザオラルで生き返らせられゴフッ!
いぶの右ストレートがかいんの左頬を捕えていた。
最近、同じ拳を受けたのを思い出しながら、
死んだらどうするのか、と、いぶに詰め寄る。
それを聞いたいぶは、世界樹の葉をぴらぴらとそよがせる。
ああ、そういうことね。
死んでも生き返れるから大丈夫ってことね。
かいんは、あだむを起こすときには、
過去の反省を活かして、
こよりで鼻先を突いて、
くしゃみをさせて起こすことにした。
何も知らないあだむは、
起きるなり、かいんに聞く。
頬を腫らして鼻血を出して、
俺が寝ている間にどんな敵にやられたんだ!?
さて。
気を取り直したかいんは、
今度は、ちゃんと石像に向かって妖精の笛を吹いた。
石像は人の姿に変わり、
最初からそうすればよかった、とかいんは後悔した。
「ああ、まるで夢のよう。」
さっきまで石像だった人が話し出す。
「よくぞ封印を解いてくれました。私は精霊ルビス。このアレフガルドの大地を創ったものです。」
精霊ルビスはアレフガルドを創った創造神だ、
というかいんの仮説は、ここで完全に証明された。
「お礼に、かいんにこの聖なる守りを与えましょう。そして、もし大魔王を倒してくれたなら、いつかその恩返しを致しますわ。」
ルビスの話ぶりは、
まるで大魔王討伐がルビス個人のお使いだと言わんばかりである。
世界のため、とか、平和のため、というニュアンスはそこにはなく、
ルビス個人のお手伝いを頼まれているかのようである。
そして、いつかその恩返しを、という「いつか」は、
いったいいつなのであろうか。
精霊でもあり創造神でもあるルビスの寿命は長そうだから、
もしかしたら、400年後とか500年後のことかもしれない、
と、かいんはなんとなく思った。
「私は精霊ルビス。この国に平和が来ることを祈っています。」
ルビスはもう一度名乗って、そして消えた。
平和を祈るというのも、
なんと他人事であろうか、
と、かいんは思う。
自分が創った世界の平和を他人事のように祈り、
世界の宿敵ゾーマの討伐を個人的な願いのように言うルビス。
自分ごとと他人ごとが逆ではないか?
自分の世界の平和は、祈るのではなくて努力するのではないか?
世界の敵の討伐は、
個人のお手伝いではなくて、勇者の使命なのではないか?
などと、
ルビスの発言の不思議さに、ところどころ首をかしげながら、
かいんは、ルビスの塔を後にした。
とりあえず、創造神は救出した。
ルビスがその後どこに行ったかはわからないけど、
これできっと、世界の創造の続きが行えるのだろう。500年かけて。
さて、
無事ルビスを開放したかいん。
ゾーマの居城を目指して、
竪琴返却のためにガライを探し求めて、
次なる地を目指すのだった。
ところで、
キングマーマンが落としていった魔法のビキニを気に入りすぎて、
もう1着水着が欲しい、と、いぶが言い、
アブナイ水着が買いたいと言い出した。
確か、アッサラームで法外な値段で売られていた水着。
そんなものが買えるはずがない、
と思うかいんだったが、
いぶの拳を恐れて、
なんとなく、
「貯金があればね。」という風なことを言ってしまう。
そんなお金がないとわかれば、
いぶだって諦めるに違いない。
しかし、かいんの言葉を真に受けたいぶは、
アリアハンバンクに飛び、貯金額を確認する。
不幸なことに、
貯金額は、ちょうど水着の値段と同じだった。
いぶは喜んで全額引き下ろし、
勇んでアッサラームに飛んだ。
「お買い上げありがとうございます。78000ゴールドになります。」
防具屋の店主の言葉を聞きながら、
かいんは泡を吹いていた。
結局、アブナイ水着はいぶのお眼鏡にかなわず、
預かり所に眠ることになったという。
かいん(勇者・男):レベル38、HP312
いぶ(武闘家・女):レベル36、HP287
あだむ(賢者・男):レベル34、HP226

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