ドラクエ5冒険日記(7) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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10年の時が流れた。
少年だったカインも立派な青年になっていた。
奴隷ではあったが。

奴隷の仕事は、
光の教団の神殿を作るために石を積み上げること。

こんな話がある。
奴隷に、「今なにをしているのか?」と訪ねたときに、
2パターンの回答がある。
ひとつは「石を積み上げている」と答える者。
もうひとつは「神殿を作っている」と答える者。
同じ作業に対して、視点が違う考えがあり、
後者の視点を持つ者は、
よりモチベーションが高く、
より作業効率が高いことが知られている。
自分の作業が、いったいどう役に立っているのか、
それを理解しているわけなので。

ここ、光の教団の奴隷達には、
神殿を作っている意識はなかった。
ただひたすら石を積み上げている意識だけがあった。
そんな奴隷を監視しているのがムチ男。
この作業の崇高な意味を説くどころか、
作業効率が悪い奴隷をムチで叩き、
さらに作業効率を下げてしまうという、
なんとも役に立たない存在。
しかも、ムチ男自身は石を積み上げることもなく、
水や食物は人並みに消費する、
なんら、生産性とは無縁の存在。

この、教団の、
なんとも効率の悪い建築指針のおかげで、
神殿の建築は、カインが奴隷になってから10年が経っても、
依然完成することがなかった。
奴隷の中には、20年以上働いている者もいた。
この教団の遅行により、
後々厄介な存在になるカインを
取り逃がしてしまうこととなる。


カインは来る日も来る日も石を積み上げ続けたが、
それと同時に、何度も脱出を試みていた。
その度にヘンリーを誘い、
脱出は失敗し、
カインとヘンリーはムチで打たれた。
度重なる失敗に、ヘンリーは心が折れ、
もう脱出する気を失っていた。


兵士ヨシュアは悩んでいた。
それは、妹マリアのこと。
マリアは、教団の信者であったが、
教団が罰しようとする幼子をかばい、
その罪を問われて奴隷とされてしまっていた。
ヨシュアは、マリアを救いたくてしょうがなかった。
しかし、マリアを救うことは、
教団に逆らうことになる。
ヨシュアは悩んでいたが、
それは、マリアと教団、どちらをとるか、
ということではなかった。
ヨシュアは、教団を敵に回しても、
マリアを助けたいという腹積もりができていた。
ただ、その腹積もりも、
確実にマリアを救える保証がないと、
実際に行動に移せるものではなかった。

そんな折り、
マリアを助けようとして、
ムチ男に襲いかかる2人の青年が現れた。
聞くと、ムチ男の靴を汚したということで、
マリアがムチで打たれるところを救ったということだった。
ヨシュアは、千載一遇の好機が来たと思った。
そこで、機転を効かせて、ある行動に出た。
事は隠密に運ばなければならない。
今考えていることは、誰にも悟られてはならない。
ヨシュアは冷静を装い、
まずは、反逆者である2人の青年を牢に閉じ込めるよう、
他の兵士に命じた。
あくまでも、反逆者を罰するという名目で。
2人の青年に、
協力を要請しようとしていることを悟られないように。
さらに、マリアを介抱するように命じた。
あくまでも、労働力を損なわないようにすることだという体で。
実の妹だと悟られないように。


かくして、カインとヘンリーは、牢に閉じ込められたわけだが、
カインはこういう形の反逆を望んではいなかった。
もっと冷静に、知的に脱出することを考えていたからである。
しかし、カインはまた嬉しくも思うのだった。
心が折れていたはずのヘンリーが、
マリアがムチで打たれるのを見て、
再びムチ男に対する怒りの念をぶつけることができたのだから。


しばらくの後、
ヨシュアは牢の鍵を開けて、
カインとヘンリーを導き出す。
事態を飲み込めないカインたちにヨシュアが言う。
「私はマリアの兄ヨシュア。妹を助けてくれたことを感謝する。少し芝居を打たさせてもらったが、これで3人で脱出できるだろう。マリアを頼む。」
ヨシュアは、
自分でマリアを助けるのが難しいことを悟り、
カインとヘンリーにマリアを託すのだった。
肝心の脱出の方法は、死体を入れて海に流すための樽。
この樽に3人と3人分の荷物を入れて、
海路で脱出する算段をヨシュアはしていた。


こうして、樽に入り教団を脱出した3人は、
海を流れ、漂流の末に、
とある修道院に流れ着くのだった。

マリアはこの修道院で神に仕えることを決め、
ヘンリーはそんなマリアに恋心を抱き始めていた。
まだ、カインが目を覚ます前の出来事であった。


カイン:レベル11、プレイ時間:3時間44分




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