ガラス・カーテンウオール禁じた上海、日本との違いは(1)
(ケンプラッツ2012/02/10)
上海市で2月1日、「ガラス・カーテンウオールの使用禁止条例」が施行されたとのニュースが伝えられた。中国の他の都市や香港でも、カーテンウオールに関係する建築実務者は、この一報に驚きを隠せなかった。
しかし、条例を良く読むと、ガラス・カーテンウオールの全面的な使用禁止となる対象は、住宅、病院、学校、養老院などの2階以上の部分とされている。当然ながら、ポツ窓のような単窓の窓などは、この限りではない。
さらに、オフィスビル、商業ビルなどで、ガラス・カーテンウオールを使用する場合は、合わせガラスを使用するか、これと同等の落下防止策を講じることが条件となっている。同時に、検査が義務化されており、SSG(Structural Sealant Glazing)構法や、張弦構造を使用している場合は、さらに厳しい検査が今回、義務付けられた。
禁止条例施行の背景には、上海ではここ数年、高層ビルからのガラスの落下事故が多発していることがある。主な事故例は、SSG構法によって窓枠に接着のみで使用されているガラスの落下と、破損した強化ガラスの破片の落下が顕著だ。さらには、突き出し窓が窓枠ごと落下する事故も多いという。
幸い、このような事故は、日本ではほとんどあり得ない。それは、以下のようなガラス落下対策の歴史があるからだ。
■開閉窓を使用しない日本の高層ビル
日本の高層ビルでは、集合住宅を除くと、開閉できる窓がほとんど使用されていない。台風が多く、漏水を嫌う日本では、高層ビルの外装は、そのほとんどがFIX窓(はめ殺し窓)となっている。非常用進入口など例外はあるが、高さ31mを超える建築物は、非常用エレベーターの設置義務があるため、非常用進入口の設置義務はない。すなわち、業務系の高層ビルでは、開閉窓を設置する例がほとんどない。
集合住宅の場合は、ほぼバルコニーが設置されている。これらは、ガラスの落下のみならず、人や物の落下に対しても有効で、高層ビルの外装設計においては、大切な配慮である。
近年、環境性能の向上を目的として、換気機構を組み込んだカーテンウオールが増えている。これについても、ほとんどの場合、窓の開閉ではなく、専用の換気装置を組み込む方式をとっている。どうしても窓を開閉させたい場合、ダブル・スキン・カーテンウオールなどを利用して、開閉する窓が直接外部に接しないように配慮されている。
一方、中国では、超高層ビルであっても、蝶番(ちょうばん)とフリクションアームだけで留まっている突き出し窓が多い。高層部では、風が強く、室内外の圧力差も大きいため、晴天時でも瞬間的な突風が吹くことがある。このような風で、突き出し窓が、窓枠ごと外れて落下するケースもある。
SSG構法に対する日本と中国の認識の違い
SSG構法の使用状況についても、日本と中国では大きく異なる。
日本でも、法的にはSSG構法の使用は制限されていない。しかし、日本建築学会や旧BCS(現、日本建設業連合会)がまとめたガイドラインによって、かなり厳格な技術基準が示されている。技術的な検証だけでなく、品質管理や事故の際の施工者の責任負担などについても真摯に話し合われた上で、まとめられている。
1980年代の後半に、国内でもSSG構法が普及した。だが、化学的接着(Chemical Bonding)構法に付きものの経年変化や施工者の技量といった不確定要素に対する懸念と、上記のようなガイドラインの遵守により、サッシ業界、ガラス業界および建設業界が、安易な使用を自主的に制限する方向に動いたという経緯がある。以来、法的な制約はなくても、できるだけ安全な使用が一般化している。
一方、中国や東南アジアでのSSG構法の普及は、意匠性によるものだけではなく、アルミ型材の供給体制の制約などにも起因している。ガラスをすべてサッシの枠にのみ込ませるとなると、ガラスの厚みや構成の違いにより、枠の見込み幅を変えて設計しなければならず、プロジェクトごとに新しい型材を製造しなければならない。
ところが、SSG構法のように、アルミ型材の外側にシーリング材でガラスを接着する構法であれば、ガラス厚が変わってもシールの厚みを変えるなどすれば容易に対応できる。そのため、同じ型材を仕入れて、手間を掛けずにカーテンウオールを形成するには、とても便利な構法なのである。もちろん近年は、より安全性の高い構法を採用する傾向にある。それでも低コストで建設したい場合、従来からある簡単なSSG構法を「安上がり」構法として利用する業者は今もいるようだ。
日本では、高い水密・気密性能を保持するため、一般のサッシ以上に、SSG構法の方が複雑なディテールとなることも多く、上記のように簡単で安価な構法というわけにはいかない。
