内視鏡手術の止血材で3Dマトリックスのピュアスタットよりも優れたものがあるか
3Dマトリックス(PuraStat)より優れた止血材があるかというご質問に対して、医学文献・臨床ガイドライン上で比較できる範囲の情報を整理しました。
まず前提として、ピュアスタット(PuraStat)は
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完全合成ペプチドによる透明ゲルであり、漏出性(oozing)のにじみ出る出血に適する局所止血剤として承認・広く使用されています。術中止血だけでなく後出血予防や創傷治癒促進が期待されていますが、噴出性の激しい出血には効果が乏しい点が指摘されています。J-STAGE
✅ 内視鏡領域で比較される代表的な止血材
以下は欧米消化器内視鏡学会や複数の臨床レビューで比較されている製品です。PubMed+1
| 製品名(機構) | ポイント | ピュアスタットとの相対評価 |
|---|---|---|
| TC-325(Hemospray)(粉末) | 出血部位に広範囲散布し、機械的に止血 | 初期止血率は高く、即時止血に強い傾向あり。再出血率は状況により差あり。PubMed+1 |
| EndoClot PHS(粉末) | 高吸水性多糖類、“tamponade”効果 | 臨床データではTC-325と同等に止血効果あり。PubMed |
| Nexpowder(粉末) | 新世代粉末止血材 | 初期止血成功率が比較的高い報告あり。PubMed |
| Ankaferd Blood Stopper | 植物抽出成分の止血剤 | 臨床経験ありだがデータは限定的。PubMed |
| CG GEL(ゲル) | 粘性ゲル止血 | 初期止血効果示唆。PubMed |
🔍 比較ポイント
⭐ 1. 初期止血(Immediate Hemostasis)
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TC-325(Hemospray) は局所に散布するだけで即時止血が得やすく、急性出血(例:悪性腫瘍出血)でも高率の初期止血を示す臨床データが複数報告されています。PubMed
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一方で PuraStat はゲル形成が中心のため、初期止血速度はやや緩やかながら、再出血抑制や創傷治癒効果に強みがあります。J-STAGE
→ TC-325 は初期止血において PuraStat を上回ることがあるという報告がありますが、その後の再出血予防効果など全体評価では一概に優劣は決まっていません。PubMed
⭐ 2. 再出血率・持続性
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PuraStat は体液と反応してゲルを形成し、塗布後に局所に長く留まる性質があり、再出血予防や創傷治癒の面で有利とされる報告があります。J-STAGE
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粉末系(TC-325 等)は使用後数日で除去されるため、止血は早いものの長期の止血維持はやや不確実という意見もあります。PubMed
⭐ 3. 適応と使い分け
| 状況 | 適合しやすい止血材 |
|---|---|
| 広範囲の激しい出血 / 活動性出血 | 粉末(TC-325 など) |
| にじみ出る漏出性出血 / 細かな毛細血管出血 | ゲル(PuraStat など) |
| 術中・術後の予防・創傷治癒目的 | PuraStat など自己組織化ペプチド材 |
🩺 文献ベースの結論(現段階)
✔ 明確に「ピュアスタットよりも総合的に優れている」と言える止血材は現状のデータでは存在しない
→ ただし、用途によっては PuraStat よりも止血効果が高い・適した製品(例:TC-325)があります。PubMed
特に TC-325 などの粉末止血材は初期止血のスピードや広範囲対応において優位とされるケースがある一方で、持続性や創傷治癒支援を期待する場面では PuraStat の利点があるとされます。Frontiers
📌 まとめ(実臨床での使い分け指針)
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激しい・大面積出血 → 粉末系止血材(TC-325、EndoClot、Nexpowder など)が有効なことが多い。PubMed
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漏出性のにじみ出血・術中止血/術後予防 → PuraStat や同種の自己組織化ペプチド材が有用。J-STAGE
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局所用途に最適化したゲル vs 粉末 は、それぞれ強みと弱みがあり「用途による使い分け」が現在のスタンダード。PubMed
✨ 今後の方向性
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次世代のペプチド系止血剤や高粘性ゲル、粉末とゲルのハイブリッド材など、より高止血性能・持続性を両立する製品が開発中との報告もあります(開発中の次世代止血材TDM-623など)。jp.investing.com
開発中の次世代止血材TDM-623
次世代止血材「TDM-623」について(概要・開発状況)
1. TDM-623とは?
TDM-623は、スリー・ディー・マトリックス(3-D Matrix)社が開発した次世代の局所止血材(hemostatic agent)です。
これは自己組織化(self-assembling)ペプチドを用いた合成ペプチドタイプの止血材で、出血部位に触れると即座にゲル状に変化して止血を促す仕組みです。PubMed+1
TDM-623は、同社の既存製品である**TDM-621(商品名 PuraStat)**の改良版・第2世代に位置づけられ、より高速なゲル形成、優れた組織密着性、止血能力の向上が期待されています。PubMed
2. 特徴・技術的ポイント
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自己組織化ペプチド構造を採用し、pHや塩類との反応でナノファイバー状ゲルを形成。PMC
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高速ゲル化と高い止血効果:TDM-621に比べて、短時間での止血効果が確認されています。PubMed
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組織への高い定着性:ゲルが出血部位に留まりやすく、効率的に止血できます。PMC
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常温での輸送・保管が可能で、従来の製品より扱いやすい点が強調されています。IR Pocket
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消化酵素への安定性も確認され、内視鏡手術等での耐久性が期待されています。PubMed
3. 臨床・用途の想定
開発当初より脳神経外科領域での治験が進められ、出血の厳しい領域でも使用可能とされています。また、以下のような幅広い手術領域での適用が検討されています:
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脳神経外科
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整形外科
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消化管(内視鏡下止血)
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心臓血管領域
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実質臓器手術 など株探+1
TDM-623は、内視鏡下の上部胃腸手術においても高い止血率を示すという前臨床データもあります。PubMed
4. 開発・承認状況(最新情報)
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欧州での製造販売承認を取得:2025年12月、TDM-623が欧州子会社3-D Matrix Europe SASを通じて欧州の第三者認証機関から製造販売承認を取得したとの発表が出ています。これにより、TDM-623は脳神経外科領域での使用が承認された製品として販売可能になりました。Investing.com 日本
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同社はこの承認を基に、日米での開発・承認取得を積極的に進める方針を示しています。Investing.com 日本
5. TDM-621(PuraStat)との比較
| 特徴 | TDM-621(PuraStat) | TDM-623 |
|---|---|---|
| 世代 | 第1世代 | 第2世代(改良版) |
| ゲル形成速度 | やや遅い | 速い |
| 組織密着性 | 標準 | 高い |
| 常温保管 | × | ○ |
| 止血効果 | 標準 | 向上 |
| ※改良点の多くは、前臨床・開発資料から示唆されています。IR Pocket |
要点まとめ(簡潔)
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TDM-623は合成ペプチド系の次世代止血材で、従来品より止血効果・機能性が高い。PubMed
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欧州で製造販売承認取得済みで、脳神経外科領域での使用が可能になった。Investing.com 日本
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日米での承認取得・適応拡大に向けた開発が進行中です。Investing.com 日本