TEDを聞いていたら、この本の話が出てきて気になって、たまたま和田秀樹さん(日本語訳版の監修)のYouTubeを見てたら、またこの本の話が出てきて、英語で読むか日本語で読むか迷ったんですけど、カレッジのクラスを取る前の準備体操的な位置づけで、英語で読んでみることにしました。

イギリス英語の上、専門用語満載なので、見慣れない単語が多くて苦戦(笑)スマホ様様です。

 

著者のサイモン・バロン=コーエン氏は、ケンブリッジ大学の発達精神病理学科の教授で、イギリス自閉症協会の理事も務めるその分野での第一人者です。

 

日本語訳の副題が「自閉症がいかに人類の発明を促したか」となってます。

原書の副題は、”A New Theory of Human Invention"なのでニュアンスがちょっと違うんですよね。

日本語訳の副題に引っ張られると、本の内容とはちょっと違和感を感じると思います。

 

かく言う私も、TEDで聞いた感じと、日本語訳の副題から、「パターンを見つけてそれをいかに発明に生かすのか?」という内容だと勘違いしてました。

しかもTEDを聞いた勝手なイメージから、自然界の中にあるパターンを見つけていく話かと思ってました(笑)

それはあながち間違いではなかったけど、パターンの範囲も発明の範囲も自分の想像の上をいくものでした。

 

タイトルのパターン・シーカーとは、自閉症の人の多くはhyper-systemizerで、観察した物事の事象を体系化していく人のことです。(日本語にするのが難しい)

様々な事象のパターンを分類し検証していくことを積み重ねて、新たな発見(発明)を生み出す的な?(if-and-then)

同時に彼らは共感性が乏しく、社会生活の面では苦労を重ねます。

 

エジソンの話などは想像の範疇でしたが、本作中にエジソンと同列で語られる少年Jonahの話が興味深かったです。

彼は波を観察し続け、波の様子からどこに魚の群れがいるかが分かるので、漁師と友達になり、一緒に船に乗るようになった。でも彼は、船から下りれば無口な青年に戻り、ひっそりと両親と暮らしている、そうです。

特別な才能を持っていても、誰もがエジソンのような有名人になれるわけではないけれども、才能を通して他者との交流が生まれる。同様の事について、数人の事例が出てきます。

 

脳の仕組みやホルモンの話、脳の5つのタイプについて。

人間の進化の過程で、武器の発明、楽器の発明(音楽の発明)、宝飾品の発明はいかにして生まれたか?

というのも大変興味深く、遺伝子の突然変異によってThe cognitive revolution 認知の革命が起こり、他の類人猿とは別の進化を辿ったという進化論。他の動物との違い。

などが、細かい検証とともに丹念に書かれていました。

 

衝撃的だったのは、hyper-systemizer同士のカップルの子供は、自閉症になりやすく、MITの卒業生の子供やシリコンバレーの子供に自閉症が多いという事実。(偏見を生まないように研究は慎重に進められている)

 

そして現代社会での自閉症スペクトグラムの人の位置づけというか、働き方、活躍の場などについて。

hyper-systemizerとして、適材適所で働く例など。

これについては、障害学の第一人者である東大の星加良司教授の話をちょうどYouTubeで聞いたところで、重なる部分がありました。

本書の中にデンマークの自閉症者が語った言葉で

「私たちは海水の中に入れられた真水魚のようで、苦しい。海水に入れられれば元気になるのに」

というのが出てきます。

星加先生がまさに同じようなことをおっしゃっていたんですよ。要約すると

「現代社会で正しいとされてる常識を捨てればdisability(精神障害)の人々には生きやすくなるが、現社会で成功している人々の優位性が失われてしまうため、そうはならないだろう。」

難しい問題ですね。

ですが、社会学と心理学の分野は、ここでつながるのか!とちょっと感動しました。

 

本書には、自閉症者の「こだわり」の成功者の例として、スウェーデンの環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんや、現在旧ツイッター社(X社)を巡って世間を騒がせているイーロン・マスク氏などが挙げられており、全然知らなかったので、なるほど!って思いました。

 

最後に、著者であるサイモン先生の講義を貼っときますね。

本を読む前に見たのですが、とてもわかりやすかったです。

 

 

カレッジのテキストも届いたので、次は、そちらと格闘します!