リールシートの拘り 完結編 | Cloud Nine Craft Works

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ノースフォークコンポジットをはじめとするアメリカンブランクを、日本のフィールド向けにカスタマイズしています。

昨日アップしたスクリュー部の溝消し加工。

これに加えて、もう一箇所、フォアグリップに加工を施しました。

 

誰でも分かる説明だと、どえらく長くなるので、ロッドビルダーなら理解できそうな感じでご紹介です。

 

まずは写真を一枚。

 

 

これはルアーを回収する時のフォーム。これで700m巻きます。

リールはオシアジガー4000。大口径な故に重心が高く、左右にブレ易いです。しかしこのサイズでないと充分なラインをストックできません。

更にレベルワインダーが無いので、左手で調整しながら巻きます。

 

なので、しっかりと握れる形状が必須なはずなのですが、世のスロージギングロッドはそうでもないのです。「それはなぜ?」なんて一切考えずに、お客様とあーでもない、こーでもないと模索して形状を決めていきました。

 

そして決まったのが、「ここはEVAにして・・・ここはなんでもいいや、ここはスレッドか何か巻いといて。幅はこのくらいで」というこれまた超ザックリなオーダー。

 

とりあえず狙いは完璧に理解したので、あとは美しく仕上げるのが私の仕事。

 

使用するリールシートはTBS-KN18。

なので、フォアグリップ=KDPS18ということになります。

 

ここに手に合わせて削り込んだEVAと「スレッドか何か」をアッセンブルするワケですが、この「スレッドか何か」が鬼門でした。

とりあえずスレッドを巻いてエポキシでコートしてみたのですが、全く美しくない。リールシート本体のコートがウレタンなので、光り方が全然違うんです。同じ黒でも、色味が全然違う。超カッコ悪い。

 

ということで、本体と同じ塗装を施したカーボンパイプを使用することに。

が、ここで問題発生。KDPS18用のカーボンリングが、仕上がり予定サイズよりかなり太く、削って細くすると肉薄になりすぎる。

そして辿り着いた答えがKSPS18を削って、KDPS17用のカーボンパイプを使うということ。これでサイズ感がドンピシャになりました。

 

そしてまた問題発生。

今度はKDPS18のパイプ部が肉薄になりすぎて、握った時にたわんでしまうんです。なので、KDPS内部にEVAを削って接着。ブランクとKDPSの間の隙間を殺すことでたわみを解消しました。

 

そして塗装。

ここまでやったら、もう徹底的にやります。

カーボンパイプとKDPSそれぞれの接続部には、かならず僅かな溝が生じます。0.1mmくらいでしょうか?具体的な幅は分かりませんが、そこには溝がある。しかもそこは指があたる場所。ならば消してしまえと、パテを盛ってから成型、エアブラシで塗装という工程を取りました。

 

そして生まれる一体感。

たまらんです。いつも以上に手をかけたかいがありました。

そしていつも以上に製作過程を語っちゃうワタクシ。

 

未知の領域のロッドなので、通常よりも手の込んだ作りとなった今回のロッド。

結構な金額になっちゃいましたが、お客様にも喜んでいただき、久々にいいロッドが創れたなぁと思います。

 

そして、そのフォアグリップがコレ。

コレを見たメーカーさんにビルダーさん、どうぞご自由にマネしちゃってください。

 

なんてこと無いヴィジュアルですが、そこにはユーザーとビルダーの並々ならぬ拘りが詰まっています。