父の故郷へ。
運転席は次姉。
助手席は長姉。
長姉は、haruちゃん前のほうがいいなら変わるよ、
そう何度も言ってくれたけれど、
わたしはなんとなくふたりの間に顔を出したくて、
後ろに座らせてもらった。
30年ぶりに父に会うのが、
こんなに遅くなるとは思わなかった。
父の死の知らせが届いてから、10ヶ月。
ようやく。
本当にようやく。
姉たちが、水場へ行っている間
父と話した。
誰もいない。
時折、風が吹くだけ
わかる?
お父さん。
harucoだよ。
墓石に向かってバカみたいだけれど、
次から次へ、言葉が止まらなかった。
お父さん。
この下にいるんだ。
小さくなって。
わたし、いま少し辛くて。
30年ぶりに会って、なんなんだけれど、
お父さん、わたしを守って。
あとでまとめて謝るから。
明後日、癌の検査の結果を聞かなきゃいけない。
そしてどうしてだか同じ日に結婚した人と別れることになった。
わたし、どうなるんだろう?
これから
言葉と一緒に涙も止まらなくて。
お墓に向かってわたしひとりでなに言ってるんだろうなって。
そんなわたしを姉が遠くから撮っていたから載せる(笑)
親のお墓参りに来る日がくるだなんて。
長姉がつぶやいた。
本当だね。
30年という空白が長すぎて、
どうしていまお墓の前にいるのかがよくわからない。
記憶といまがつながらない。
母方の先祖のお墓へも足を伸ばし、お参り。
盆地に日が傾き、
一気に寒さが増した。
夕暮れになりかけた頃、
ある人の訃報を知る。
人生ってどうしてこうもいろいろあるのだろう。
どんなに辛くても明日は来るし、
また日は昇る。
でも、いまわたしはそれが少しわからないでいる。
お父さん。
いつかそちらで再会できたら。
ごめんって言って。
わたし必ず、いいよって言うから。