ピンク色の空と白い雲と愛のない俺

ピンク色の空と白い雲と愛のない俺

もうすぐ就職活動を控える大学3年生の、自由で馬鹿な不思議なブログ

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 「上手くいったな」



議下は車の中で後ろの方で着替えている己倉(おのくら)に言う。



「上手くいったんだ、もうこの街は出るぞ」



「上手くいかなかったら出れねぇよ」



議下は気味悪く笑う。



「おい、その笑い方よせよ。足がつくぞ」



「うるせぇ、好きなように笑わせろっ」



「お前、自分のこと誰かに話してないだろうな?」


「あん?」



「俺たちは悪いことやってんだぞ。自覚あるのか?」



「大丈夫だって。大きな心配は毒だ」



議下はまた気味悪く笑う。



「そういえば、議下。お前はこの警官の制服はどこで手に入れたんだ?」



己倉は脱いだ制服を見ながら、議下に尋ねる。



「ドンキホーテだよ」



「売ってないだろ。これ、本物だろ?」



「俺の母ちゃんの手縫いだよ」



議下はまたも気味悪く笑った。








 「嘘?ズルくない?」



恵理はバスタオルを身体に巻いたまま、顔に化粧水をつけながら言う。



「世の中を知らないやつが悪いんだよ」



「でも、経営コンサルタントを雇う相場なんて恵理にも分からないよ」



今日の昼にやってきた医療器械の部品製造をしている工場の社長の話を丘野はしていた。



「とりあえず、明日部下と工場の視察に行って来るよ」



「私は明日はオフ」



恵理は百貨店で宝石装飾品の販売の仕事をしていた。



そのせいで、休日が平日なのだ。



「何するの?」



「友達とホットヨガの教室。言ったじゃん!」



恵理はそう言うと、丘野のベットの中に身体を入れてきた。



「言ったっけ?」



丘野は恵理の身体に巻きついたバスタオルを剥ぐ。



そして、風呂上りのまだ湿った身体を触る。



「言ったよ…」



丘野はそのあと返事をせずに、恵理の乳房に優しく噛りついた。







≪出演≫



・議下 法和 (23)…尖ったふりをしていた若者


・己倉 令二 (28)…警官のふりをしていた青年



・丘野 智之 (37)…C&Gの社員


・盛田 恵理 (27)…丘野の恋人


「すみません。この辺に魔法使いっていませんか?」



議下(ぎした)は交番で暇そうにしていた警官に尋ねた。



「魔法使い?」



警官は書類を書いていた手を止め、議下の方を見た。



金髪の長髪、細い眉毛、ぎらついた目、細いアゴ。



一回り大きなサイズの白いジャージを着ている10代の男。



「なんだ捕まりにきたのか?」



警官は声に強みを入れて議下に対応した。



なめられたらいけないと思ったらしい。



議下は良い心がけだと思った。



「うるせぇな、俺らの税金で飯食ってる野郎がよっ」



そう言うと、議下はポケットから小さな水鉄砲を取り出し、警官へ向けて水鉄砲を打った。



「ふざけるなっ」



顔に水をかけられた警官は顔の水を払い、怒鳴りつけた。



しかし、そこには議下の姿は無かった。






 「おめぇら、一人2万だぞ」



議下は交番から50メートル離れた路地裏で3人の若者に言った。



3人の若者は、お前頭悪ぃな、と笑いながら言い、2万を議下に渡した。



議下は若者3人と賭けをしていたのだ。



「あんくらい出来ないと、この街で議下法和が名乗れないでしょうが」



議下は6万円をポケットに入れて気味悪く笑う。



「議下?聞いたこと無いけど……」



若者の一人が言う。



「ああ。昨日引っ越してきたんだよ。よろしくな」



議下はそう言うと、気味悪く笑い走って行ってしまった。







 「借金ですか……」



油まみれの作業着を来た50代の男が苦い顔をした。



「ええ。いくらあるんです?正直におっしゃってくれないとこちらとしても…」



丘野は困った顔をして見せる。



「2億8000万ほど…」



「そうですか。約3億ですか。それは…難しいですね。」



丘野はさらに困った顔をして見せる。



「そこをなんとか」



医療機械の細かい部品を作っている小さな町工場。



どこで聞きつけたか知らないが、こんな奴が来るようじゃC&Gも終わりだな。



「ええと…何て名前でしたっけ?」



「真中です」



「真中さん、うちの会社にはどれくらい……」



「ええと、うちの会社が建て直るまでで結構です」



そうじゃないだろ。



期間じゃなくて報酬だよ。



「…我が社の報酬の方ですよ」



「すみません。あの……」



またくだらないこと言うんじゃないだろうな……



「あの相場が分からないんで、なんとも言えないんですが」



「相場ですか?」



「はい。相場ぐらいじゃ駄目ですか?」



「構いませんよ。」



「やってくれるんですか?」



「そうですね。お役に立ちたいんで」



そうだよな。相場が分からないよな。



相場が分かれば、このオフィスにそんな汚い格好で来ないよな。



丘野は笑いを堪える。



相場の2倍の報酬は取れると思ったからだ。






≪出演≫


・議下 法和 (23)…尖った若者


・警官    (28)…困った警官



・丘野 智之 (37)…C&Gの社員


・真中 徹  (56)…町工場の社長


 「私の案がこんなことになるとは思ってもいませんでした」



佐々木課長の発言に思わず木峪(きたに)が苦笑するのを、丘野(おかの)は見逃さなかった。



今回の企画の案を考えたのが木峪だということを丘野は知っていた。






 丘野はC&Gという会社で働いていた。



Celerity〔機敏〕とGive〔与える〕。



つまり、機敏に動いて、貴社に利益を与えますという意味を持った会社名のC&G



主に経営コンサルタント事業を行っている企業だ。



従業員は150名。



2ヶ月前に丘野はこの会社に転職してきた。



その頃同い年だった木峪が色々と世話してくれた。



 「お前の案だったんじゃないのか?」



丘野は会議を終えて廊下へ出たときに、木峪に近づき小声で言った。



「こういうことばっかさ」



木峪は苦笑いをしながら言う。



上司に手柄を横取りされるなんて日常茶飯事である。



そんなことは丘野だって知っていた。



だからこそ、そうされないように上手く釘を打たないといけない。



部下が上司に手柄を横取りされないように釘を打つのも日常茶飯事である。



そんなことも丘野は知っていた。



ただ木峪は知らないらしい。



「このままでいいのか?」



丘野は木峪に言う。



「どうしろっていうんだよ。……良い上司の下で働きたいよなぁ」



木峪は独り言をいうかのようにそう呟き、佐々木課長の方に行ってしまった。



おそらくゴマでも擂るのだろう。



案の定、課長素晴らしかったです、という声が聞こえてきた。






 「ベンチャー企業で経営コンサルタントだよ。みんなもっとギラギラしていると思った」



丘野は恋人である恵理にそう言った。



「良いじゃない。温和で」



「何言ってるんだよ。年功序列型賃金制はとっくに崩壊したんだぞ」



恵理は目の前にあるアサリとほうれん草のスパゲティに手を伸ばした。



「私馬鹿だから難しい話って分からない。いただきます」



丘野は溜め息をつき、渡り蟹のクリームスパゲティにフォークを入れた。



「とにかく今回の会社もハズレってことだよ」



「また転職するの?」



「いずれね。とりあえずここで得られるコネクションを得てからね」



「コネか……。恵理と付き合ったのもコネのため?」



恵理はゴボウとチーズのサラダを食べながら言う。



恵理の父親は、某大手銀行の役員をやっていた。



「何度も言わせるなよ。違うって……」




もちろん、コネのためです。







≪出演≫



・丘野 智之 (37)…C&Gの社員



・木峪 明総 (37)…C&Gの社員


・佐々木 守 (51)…C&Gの課長



・盛田 恵理 (27)…丘野の恋人




 家から歩いて5分のバス停に行き、バスに乗って20分。



そこから歩いて5分のところにある徳田総合病院。



小さな丘の上に建っているだけあって景色がいい。



この街を一望できる。



 菊下は受付で診察券を出し、10分ほど待って、内科のある3階へとエレベーターで上った。



内科の受付に行くと、若い医者が近寄ってきた。



名札を見ると、田山と書いてある。



そうだ、田山だ。



田山だった。



「菊下さん、…少し待っていて下さいね」



田山はそう言うと、行ってしまった。



 名前を呼ばれて、中に入る。

珍しく担当医の奥井が居やがる。



いつもはあの田山なのに…



椅子に座ると、担当医の寺井がレントゲンを封筒から取り出しながら言った。



「体調はどうですか?」



「別に変化は無いよ」



「胸の辺りが痛いと言っていたじゃないですか」



「今は別に痛くないよ」



「そうですか」



 寺井はカルテをボードに貼り、咳を1度して言った。



「大変申しにくいんですが、菊下さんの肺にガン細胞が見つかりました。」



 ちゃんと面倒見ますから、だと?



ふざけやがって。



だったら、治しやがれ。



菊下は愚痴りながら、岐路についていた。


 バスを降りると、歯磨き粉を切らしていたのに気付いた。



菊下はコンビニに向かった。


 人生が終わったと思った。



俺は昨日、潰したタンポポのようだな。



もう終わりだ。



全部、終わったんだ。



弱気になっている自分が情けないと菊下は思ったが、弱気は拭い切れない。



孤独だった。



ずっと1人だった。



懐いていた猫も、餌の為じゃないか。



あんな野良猫に利用されていたんだ。



くそっ…



思わず涙が出た。



 歯磨き粉なんて要らないじゃないか。



俺はガンなんだ。



何も必要ない。



コンビニが見えてきたときにそう思った。



 帰ろう。



そう思ったときに、ふと昨日のタンポポが目に入った。



…咲いてやがる。



何でだ?



昨日、潰したはずだ。



タンポポは咲いていた。



タンポポは咲いていた。






≪出演≫


・菊下 昭  (72)…老人


・田山 篤史 (31)…徳田総合病院の若い医者

・寺井賢太郎 (59)…徳田総合病院の古い医者





 午後17時。


バイトの終わる時間になった。


河々尾は午後5~10時の店員と交代して、コンビニを出た。



コンビニの左に家のある河々尾と、右に家のある副島君はここでお疲れ様でしたと言って別れた。



 河々尾が数歩歩くと、さっきまでしゃんと咲いていたタンポポが潰されているのに気付いた。



無残だな、と思うも、これが弱肉強食ですよ、と心の中で呟いて岐路に着いた。




 翌日の午後12時半。



河々尾は午後1時からのバイトのために、家の近くのラーメン屋でとんこつラーメンを食べていた。



食べ終わると、勘定をしてもらい店を出る。



 少し早いと思ったけれど、河々尾はコンビニに向かった。



桜が散って、道路には桜の花びらが大量に落ちている。



これも弱肉強食ですよ、と心の中で呟く。



 昨日のおばさんは桜が咲いたときも、きっと綺麗だと言ったに違いない。



まぁ、それがおばさんか。



そんなことを歩いていると、道端にタンポポが咲いているのに気付いた。



土の上だからなのか、5,6輪咲いている。



仲良く咲いているじゃないか。


 …あ、そうだ。



河々尾はその中の1厘を根本から引っこ抜いた。



引っこ抜いたといっても、タンポポの根は長いから、途中でちぎれたのだが。



 河々尾は昨日コンクリートに咲いていたタンポポとさっき引っこ抜いたタンポポを植え替えた。



 これなら、植え替えたとは誰も気付かないだろう。



昨日のおばさんも喜ぶだろうと思った。





 いつものように朝5時に起きた。



それから、いつものように猫に餌をやる。



そして、食パンをトースターで焼く。


牛乳で溶かしながら、何もつけてない食パンを食べる。

 パンの耳を猫にやろうとドアを開けたら、そこにはもう猫はいなく、空の缶詰だけが置いてあった。



愛想のない猫め。



もう餌なんかやらん。



 昨日、すっぽかしてしまった病院に今日は行かなくてはならない。



確かこの前、レントゲンを取ったっけ。



あの結果をあの若い医者…



なんて名前だったっけな?



昨日、電話に対応した…


思い出せない。



物忘れがひどくなった。



 時計を見ると、午前7時を指していた。



病院は午前10時からだから、まだ3時間もあるじゃないか。



何をしようか。



菊下はテレビをつけた。


灰汁の強いタレントが司会をやっているニュース番組。



…言いたいこと言いやがって。



こいつ、俺よりも年下じゃねぇか。


テレビに向かって愚痴る菊下。






≪出演≫



・河々尾 仁 (22)…コンビニ店員

・副島 浩輔 (19)…コンビニ店員


・菊下 昭  (72)…老人


・おばさん  (55)…花好きのおばさん


・田山 篤史 (31)…徳田総合病院の若い医者



 朝5時に目が覚めるようになって、10年以上が経っていた。



朝早く起きても、やることなんて無いのによ。



起きて早々愚痴る自分に嫌気がさす。



 重い腰を上げて、布団から出る。



そして、台所の棚からキャットフードを取り出す。



缶詰のプルトップを開けながら、靴を履く。



ドアを開けると、猫が3匹待っていた


また来てやがる。


猫たちに餌をあげるとすぐにまた、家に入る。



6年前からの朝の習慣になっていた。




 築60年のボロアパート。



家賃は3万円。



年金で暮らすには、もってこいだ。



1Kだが、一人で暮らすには十分だ。



そんな何百回と繰り返し言った事をまた反芻する菊下。



 トースターで食パンを焼くために、食パンを探すが無い。



ああ、昨日で切らしていたんじゃないか。



何やってんだか…



代わりに何かあるかなと、辺りを見渡す。



目に止まったのは、台所で油まみれになった袋に入っていた煮干。



煮干をかじれっていうのかよ。



 菊下は冷蔵庫を開ける。



味噌、醤油、塩、氷。



牛乳すら入ってないじゃないか…



仕方無しに煮干をかじる菊下。


 ぼけっとしていたら、もう午後2時になっていた。



俺は何をしていたんだ。



菊下の愚痴りは止まらない。



 ああ、今日は午前中に病院に行く予定だったんだ。



病院に電話して、事情を話す。



「忙しくって、行けなかったんだけど、明日の午前中でいいよな?」



「分かりました。こういうことがこれからは無いようにして下さいね」



そう言って、切れる電話。



あの声は若い医者の声だ。


確か田山って言ったっけな?



絶対あいつは俺のこと馬鹿にしてやがる。



30手前のガキが馬鹿にしやがって。


 明日の飯を買いに行かなくてはと、菊下は家の近くのコンビニに来ていた。



 食パンとキャットフードと冷凍食品のピラフをカゴに入れたところで、牛乳が切れていたことに気付いた。



菊下は牛乳の置いてある棚へ行く。



赤い紙パックの牛乳と、白い紙パックの牛乳で迷ったが、安い白い紙パックの牛乳を手に持つ。



いや、赤いほうにしようかな…



いいや、安いほうで。



 菊下はレジへ向かおうと、レジを見ると店員と目が合った。



何見てやがんだ。



 レジにカゴを置き、財布をズボンのポケットから取り出す。



「合計4点で、809円になります」



財布からお金を取り出す。



この店員、なめてやがる。



「なんで猫の餌と一緒なんだよっ!!」



店員はキャットフードを他の食料品と一緒に入れていたのである。



思わず大きな声が出てしまった。



菊下はそう思ったが、悪いのはこの若い店員なのだ、自分は悪くないと思った。



 コンビニを出ると、タンポポが咲いていたのに気付いた。



タンポポめ。



コンクリートを割って咲いているタンポポが憎らしく思えた。



菊下はタンポポを踏みつけて、潰した。






≪出演≫


・河々尾 仁 (22)…コンビニ店員



・菊下 昭  (72)…老人

・田山 篤史 (31)…徳田総合病院の若い医者



 「ねぇ、とても綺麗よ」



河々尾が駐車場の掃除をしていると、おばさんはそう言い、賛同を求めてきた。


河々尾はおばさんの視線を追う。



そこには、一輪のタンポポがコンクリートの上に咲いていた。


「はぁ~、そうですね」


河々尾はやるせないが賛同する。


 どうしておばさんっていう人種は、花なんかに一喜一憂するのだろう?


ただのタンポポじゃないか。


おばさんはにこやかに笑いながら、行ってしまった。





 コンビニでバイトを始めて、4ヶ月が過ぎようとしていた。


接客が卒なくこなせるようになって、2ヶ月。


道徳の無いお客さんにも、平然と対応できるようになって1ヶ月。


 河々尾はどこか退屈を持て余していた。


「強盗でも入らないかな?」


そんな冗談を言おうとしたが、言おうとした相手はお菓子の検品をしている。


バイト歴4ヶ月の河々尾に対して、バイト歴2ヶ月の副島君。


河々尾が、接客が卒なくこなせるようになってからコンビニにやってきた。


度の厚い眼鏡で、お菓子と格闘している。



 時計を見ると、午後15時37分。


店内を見渡すと、お客さんが3人。


立ち読みをしている若者。


コピーを取っているサラリーマン。


牛乳を手にとって、動かない老人。


 なんで動かないんだよ?


河々尾は心の中でつっこみを入れる。


すると、心の中を見透かれたように、老人がぎろりと河々尾を睨んできた。


河々尾は唖然とする。


睨んできたと思ったら、近寄ってきた。


そして、カゴを置く。


 あっ、お会計って意味の睨みか、とほっとする河々尾。


マニュアル通りのレジ打ちで対応する。


「合計4点で、809円になります」と言い、袋に商品を入れていく。


食パンと冷凍食品と牛乳とキャットフード。


全部を袋に詰め終わる瞬間、老人は怒鳴りつけてきた。


「なんで猫の餌と一緒なんだよっ!!」


副島君が心配そうにこっちを見る。


他のお客さんも何事かとこちらを見る。


「申し訳ございません」


河々尾はそう言って、キャットフードを他の袋に入れ替えた。


そして、1000円を預かり、191円とレシートを返す。


「全くよぉ…」


そう言って、老人は出口へ怒りを露にして出て行った。


 そんな大声出して怒る事じゃないだろうって愚痴る河々尾。


そういうこともありますよ、と副島君に慰められる。









≪出演≫



・河々尾 仁 (22)…コンビニ店員

・副島 浩輔 (19)…コンビニ店員


・菊下 昭  (72)…老人


・おばさん  (55)…花好きのおばさん

・若者    (24)…コンビニでよく立ち読みしている客

・サラリーマン(35)…コンビニでコピーをしていた客