市川市姥山貝塚シンポジウム | 古墳んぽ~古墳と野の草を観察しながら散歩

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千葉市柳沢遺跡現地説明会の後は、シンポジウム「姥山貝塚の5体の人骨の謎に迫る」へ。

 

 

会場は、メディアパーク市川2階グリーンスタジオ。

 

200人以上が集まり、入りきらなかった方々は臨時に出されたロビーの椅子で音だけで参加という盛況ぶりでした。休憩の時にロビーで見た椅子の数は30脚以上ありました。

 

 

私は最後列。

12時40分に受け付け(会場12時・開演13時)して、ギリギリ。柳沢遺跡現地説明会から、お昼ご飯も食べず・買わずに来て正解でした。


 

 

 

 


 

1「市川市の縄文貝塚と姥山貝塚」 

領塚正浩(市立市川考古博物館) 
 

市川市は、日本有数の貝塚密集地域として知られ、縄文時代の⾙塚が頻繁に発掘されてきました。今回の発表では、こうした縄文貝塚の概要に触れながら、姥山貝塚の研究史を簡潔に紹介します。

 

 


2「形質人類学から⾒た姥山 B9 号住居址人骨の身体特徴」  

水嶋崇⼀郎(聖マリアンナ医科⼤学) 
 

形態人類学者がどの部位を見て年齢や性別といった個体情報、寿命などを復元しているのか、その手法を解説します。また、その適用例として、姥山 B9 号住居址の人骨 5 体の身体特徴(残存部位、年齢、性別、身⻑など)を紹介します。


 

 

3「姥山 B9 号住居址人骨の DNA 分析」

水野文月(東邦大学) 
 

古人骨研究で⾏われる古代 DNA 分析について解説し、縄文人日の本列島各地・各時代の多様性について紹介します。さらに、姥⼭ B9 号住居址出土人骨5体の DNA 分析より得られた、(1)各個体の性別、(2)各個体のミトコンドリア DNA タイプ、(3)個体相互の母系関係、の分析結果を紹介します。

 

 


4「姥⼭ B9 号住居址人骨の埋葬状況」

 佐宗亜衣子(新潟医療福祉大学) 
 

埋葬後に骨に生じた変化の痕跡を読み、人骨の埋葬状況を復元する⽅法や、骨に残る生活や病気の痕跡について解説します。また、それらの姥山B9 号住居址出土人骨5体に適用し、5 個体の病歴と埋葬過程を分析した結果を紹介します。

 

 

 

 

 

姥山貝塚

 

東西約130m、南北120mの馬蹄形貝塚

 

縄文中期から後期(約4800年から3000年前)

 

ハマグリを主体としてアサリ、シオフキなど30種以上の貝が出土


 

  1. 日本で初めて竪穴住居跡が完全な形で発掘された
  2. 140体を超える人骨が発掘され、縄文人の平均身長・平均余命の算出に貢献
  3. B地点9号住居跡から出土した5体の人骨を巡って、死因・家族か否かなどの問題を提起した、議論を巻き起こした
  4. 放射性炭素年代測定が日本で初めて行われた
  5. 日本で初めて遺跡の航空写真が撮影された

 

 

”日本で初めて”がたくさん出てきます(笑)

 



 

 

 

 

B地点9号住居跡

 

大正15年東京大学人類学教室が行った調査で発見されたB地点9号住居跡を、10分の1の大きさで復元したもの

 

 

 

B地点9号住居跡の床から、折り重なった形状で子ども1体、成人女性2体、成人男性2体の計5体の人骨が発掘された
 

 

 

 

 

 

性の判別:骨盤や頭蓋骨などから

 

年齢の判別:歯・骨盤の関節表面・骨の癒着具合などから

 

 

 

 

 

 

 

B地点9号住居跡

 

手前から 1 号(女性) ・ 2 号(男性) ・ 3 号(男性)・ 4 号(子供)・ 5 号(女性)

子供を含む4体は折り重なり、1体は少し離れて横向きになっていた

 

 

 

発掘当初、

 

同じ貝塚からフグの骨が見つかったことでフグ中毒、

 

地震で住居が倒壊

 

など死亡原因、お互いの関係などで大きな話題となっていた。

 

 


 

 

1号

熟年女性。中頭 ・低顔。 姥山では全体に平均的だが、少し華奢。

椎体の圧迫骨折(首や上肢の痛みがあった)・肋骨関節面の象牙化(激しく動くことで摩擦が起きて、象牙のように光る)

 

 

2号

青~壮年男性。過低頭(姥山では最も寸詰まり)。身長156.4cm。姥山では全体に平均的だが、少し華奢。

肩・肘・足首(距骨)の関節痛、上顎大臼歯の歯冠損傷

 

 

3号:熟年男性。長頭・高顔(姥山では最も長い)。姥山では全体に平均的。

頭に外相による治癒痕・椎骨の骨棘と炎症・股関節の変形と炎症痕・膝関節症、上顎大臼歯の歯冠損傷

 

 

4号:男児。5歳±6か月

 

 

 

5号:熟~壮年女性。中頭 ・低顔。妊娠痕あり。姥山では全体に平均的だが、少し華奢。

肩・肘・椎骨の関節症、股関節の離脱性。

 



1号は左肩に、5号は右肩と左肘に痛みがあったようですが、もしかしたら痛みと貝輪が関係あるのではないかと佐宗先生は推論されています。

 






 

食性の分析からは、5号女性だけが魚類を多く食べていたなど、食性が似ていないので5人は食事を共にしていない可能性が高い

 

 

母親のものだけが子どもに伝わるミトコンドリアDNAを解析では、5人には母と子の関係がなかったことがわかった

 

このミトコンドリアDNAからは母子関係しかわからないので、父子関係がわかる核DNAの分析も始めているそうです。

 

 

 

 

これまでこの5体は”家族”とみられていましたが、これで”家族”ではない事がわかりました。では、この5体の関係はいったい何なのか?

 

 

同居していた家族が葬られたのではなく、集落で亡くなった人を破棄された住居跡に葬った

 

また、縄文時代には今の家族とは異なる”家族”の形があったのかもしれない

 


 

 

 

 

引き続き研究費がとれたそうなので、解明されることを願います。